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Jを目指せ! by 木次成夫

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280回 2011JFL総括
by 木次成夫

93年に10チームでスタートしたJリーグは、拡大路線を推進してきました。目標は40チーム(J1=18、J2=22)編成。今季JFL3位の町田ゼルビアと同4位の松本山雅の『入会』が決まり、ようやくJ2の定数(22チーム)が揃いました。この結果、来季以降、Jリーグ参入競争は新たな局面を迎えます。

一度入会すれば、Jリーグ・クラブであり続けられる『第1段階』から、JFLへの降格もありえる『第2段階』へ。つまり、『Jリーグは到達点』という時代は終焉。既得権益を持った人たちが保身的あるいは排他的になりがちな世の中にあって、Jリーグの方向性は夢があると思います。

[2011JFL最終順位]
1位:SAGAWA SHIGA(勝ち点70)
*2年ぶり3度目の優勝

2位:長野パルセイロ(63)
3位:町田ゼルビア(61)
4位:松本山雅(59)

5位:V・ファーレン長崎(56)
*J準加盟。昇格3年目。14位→5位→5位

6位:Honda(52)
*世代交代の狭間

7位:ツエーゲン金沢(47)
*昇格2年目。昨季は9位

8位:ホンダロック(47)
*昨季まで2シーズン連続13位。今季はクラブ史上最高位

9位:琉球(46)
*昇格6年目。昨季の10位を上回るクラブ史上最高位。

10位:栃木ウーヴァ(45)
*昇格2年目。昨季は15位のアマチュア・チーム。震災後の計画停電により練習ができない時期があったことも考慮すると大健闘。

11位:カマタマーレ讃岐(40)
*J準加盟。昇格1年目。前期16節終了時点で1位になるなど健闘したものの、終盤戦に失速

12位:佐川印刷(38)

13位:MIOびわこ草津(38)
*昇格4年目。14位→8位→11位→13位

14位:ブラウブリッツ秋田(37 )
*昨季8位。前身のTDK時代を含めて、今季はJFL昇格後最低の成績

15位:横河武蔵野(36)
16位:アルテ高崎(34)

17位:ジェフリザーブズ(19)
*JFL退会

18位:ソニー仙台(16)
*JFL残留

震災の影響で開幕が延期され、夏場は猛暑、終盤戦は過密日程という厳しいシーズンでした。例年以上に、コンディション維持が難しかったと思います。優勝したのは企業サッカー部のSAGAWA。選手の質に加えて、恵まれた練習環境、移動手段の優遇など、クラブとしての総合力の差が出たと言えるでしょう。

[パルセイロの歴史的快挙]
Jリーグ参入チームよりも、翌シーズン以降にJ参入を目指すチームが上位になったのは、99年の第1回JFL(1位=横浜FC、3位=水戸)以来のこと。そして、昇格1年目の2位はJFL史上最高位です。

今季のパルセイロは地域リーグ時代のメンバーが主流で、今季のJFLベストイレブンに選出された3人、つまり、FW宇野沢祐次(28歳、元・柏など)、MF向慎一(26歳=今季加入、前・東京V)、MF大橋良隆(28歳、前・NECトーキン)を含めて、ほとんどの選手が平日午前中は協賛企業などに勤務。待遇面での選手間格差が相対的に少ないことも、まとまりの良いチームができた要因でしょう。

[町田の潜在能力]
企業サッカー部や教員チームが前身のJクラブが多い中、ゼルビアは地元の子供チームからボトムアップのムーブメントで発展してきたという点で異質です。今季はJFL史上随一の質が高いサッカーを実践。地域リーグあるいは東京都リーグ時代から所属している選手が主軸として健闘しました。

DF津田和樹(29歳、前・甲府。町田市出身。都リーグ所属時に加入。大学→大学院とサッカーの両立)

MF酒井良(31歳、前・草津。神奈川県出身。関東2部所属時からゼルビア所属。子供の頃プレーした町田で、Jクラブを作る夢を達成)

MF柳崎祥兵(27歳、駒澤大学卒5年目。4年時に駒大はインカレを制覇したものの、柳崎はベンチ外。ゼルビア加入後は新聞販売店勤務を経て、昨季からプロ)

FW勝又慶典(25歳、関東2部に所属していた桐蔭横浜大学卒。加入1年目の08年からプロ。今季はJFLベストイレブン)

振り返ると、ヴェルディ川崎(現・東京V。本拠は町田の近隣、稲城市)がJ初代王者になった93年は東京都4部所属。それから20年。東京Vと同じカテゴリーで戦うまでになるとは……。夢が広がる『夢の途中』だと思います。


[山雅劇場]
序盤出遅れ→後半盛り返し→ジャイキリ→結末は予測不能。今季も山雅は、『山雅劇場』にふさわしいドラマチックなシーズンでした。後期14節で秋田に敗れた時点では、4位と勝ち点差1位の6位(2~5位チームよりも1試合多く消化)。ところが、その後、前期2節(12月3日)のホンダロック戦まで5連勝して、4位以内を確定。平均観客数は7460人。昨季の平均5080人を大幅に上回るJFL新記録を達成しました。

加藤善之GM(今季途中から監督)の就任後、3シーズン連続でシーズン途中に補強するなど、良く言えば、臨機応変な強化策が功を奏したということになります。ただ、パルセイロよりも下位という『屈辱的成績でのJ参入』の責任を問われないのは不可解です。

[夢見るワーキングプア]
JFL終了後、各クラブが続々と契約満了選手を発表しています。「より強いチームを作るためには情けは無用」という考え方は、ある程度理解できます。しかし、地域リーグあるいはJFLで、いわば『夢見るワーキングプア』の選手たちが頑張ってこそ、Jリーグに近づけるのですから、功労者としての評価があって然るべきではないでしょうか?

例えば、相対的に能力のある選手が『プロ』で、劣る選手は『アルバイトとの両立』では、当然、後者が不利。ところが、戦力外にはならなくても「バイトとの両立で頑張ったら、翌シーズンにプロが加入したが、自分の待遇は大して変わらない」という例はザラです。

クラブが発展すれば、選手は『使い捨て』で良いのでしょうか?

相対的に数が少ない若者に夢の価値をアピールして、安く叩いた末に――。まるで日本の一般企業社会のようです。こんな時代に夢を抱いて頑張る選手の思いを最も理解できるのは同世代のサポーター(ファン)だと思いますが、いかがでしょう。

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