「さすがヨーロッパといわんばかりの電光石火の移籍劇」
by 鄭大世
by 鄭大世
『テセ通信-次なる夢に向かって-』(11-12編vol.6=1月31日)
1月30日にケルンへの移籍が決定し、ブンデス1部への挑戦が決まった北朝鮮代表FW鄭大世選手のコラム『テセ通信-次なる夢に向かって-』。川崎からドイツ、そして世界へ。リーグ戦の奮戦記を中心に、鄭大世選手の“想い”をお伝えします。
ふ～、今日超慌ただしい移籍の準備を終えて今、ボーフムの家に帰ってきました。
決まりました。ケルンへの移籍。さすがヨーロッパといわんばかりの電光石火の移籍劇でした。日本代表みたいに移籍をほのめかす事はなかったので、急すぎて驚いた人は少なくないと思います。何より自分が一番驚いているので。。。
移籍の可能性があるというのが一昨日の話で今日もうサインを済ませました。本当に一寸先は闇ですね。移籍ウィンドウは1月末で閉まるので、もう諦めてボーフムだけに集中してたらこんな事になるとは……。本当に嬉しいです。ドイツに渡って、はや1年半。予定ではすぐに1部にあがってステップアップしていくイメージでしたが、現実はそううまくいく事も無く、2部なのに試合に出れなかったりと海外の挑戦が正解だったのかを自問自答していました。
ドイツに来て半年は順調に、前期で8得点とドイツでの印象を残せましたが、それ以降は散々。後期はスタメン出場はわずか5試合。契約メーカーとの契約も終わり、スパイクもままならない時期を過ごし、ついには頸椎を損傷して離脱。
入れ替え戦も2戦目はメンバー外。全てを投げ出したかった瞬間でした。それでもレスターへの超好条件での移籍の話も、チームが放出を断固として容認せず。結局は半年ボーフムでプレーしました。夏には1年間患っていた半月板の手術をして出遅れ、チームもスタートダッシュに失敗して5連敗。それでも新しい監督になり、常にスタメンとして起用してくれたので、サッカー選手としての幸せである試合を出来た事は幸せでした。しかし、8試合ノーゴールという今まで味わった事の無いプレッシャーという苦痛との戦い。同時期にW杯3次予選敗退という事実を受け入れざるを得ない状況となってしまいました。
代表に関しても、もし日本代表、もしくは韓国代表を目指していたら、もっと早かったんじゃないか。もっとお金を稼げて、セカンドキャリアの足しになったんじゃないか。華やかでもっと楽しい人生じゃなかったのかと、何度も自分の人生を振り返りましたが、結局今回の移籍の中で代表でのキャリアが最後の一押しとなったという内容がありました。
自分が不満に思っていて、マイナスにしか考えてなかった代表というものにも、今回助けられることになりました。他にも『ドイツ語が話せること』も理由のひとつで、本当に自分のひとつの努力がこうやって華を咲かせてくれた。自分の轍に後悔は落ちていませんでした。
そして雲が覆っていた俺の日陰の日々に、今日ようやく一筋の光が降り注ぎました。まるで栄光への道しるべとでも言わんばかりのその光は、まだまだか細いけどタイヨウへと続く道に間違いはありません。
さっきは嬉しいと言いました。でも実は胸を撫で下ろしたけど心の底からは喜んでいません。なぜなら俺の夢はCL優勝とW杯優勝だからです。たった1段の階段を上っただけです。その1段を登るのがもの凄く負荷がきついものでしたけど、ここで試合にでなければなんの意味もありません。
ボーフムのときの様にゴールを出来なくても試合に出れる事はありません。さらに競争が厳しく、残酷なまでにポジション争いが熾烈になり、結果だけが自分の立場を左右します。結果が出せなかったらメディアからの批判も一層強いものとなります。ファンからのプレッシャーも分厚いです。
階段を登りたくさんの方から注目されるってことはそういう事だと思います。上を目指すってのは楽じゃないですが、これからも自分のスタンスを変えずやっていきたいと思います。
ただ、超エゴイストのFWポドルスキがいるのにシュートを打って怒鳴られ続けてスタイルを貫けるか心配です……。
最後に、ワールドカップでも晒したように僕は超がつく泣き虫です。週に軽く5回は泣きます。情に訴えかけられるものに滅法弱いです。動物と死にも本当に弱いです。だから志村動物園で動物の死を扱ったら、涙なく60分見れません。でも3次予選敗退が決まってから、まだ一度も泣いてません。感情がなくなった感覚です。だから今回の移籍も爆発的な喜びはありません。きっと次の大きな喜びのために心が溜め込んでるんだと思います。
気合いを入れて夢を叶えて、大粒の涙をまた再び流したいと思います。ワールドカップのときの様に。。。
Hard core ship!!!!!!
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