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スペインで戦うフットサル選手・荒牧太郎の挑戦 by 荒牧太郎

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開幕前のドタバタ Part2
by 荒牧太郎

 前回のコラムで書いたように、8月25日の夜にスペインのマドリーに到着するチケットを確保していたのですが、僕のチケットは、成田発、モスクワを経由して、マドリーへ行くものでした。マドリーで1泊し、翌26日の朝に高速電車レンフェで5時間かけて、所属クラブのホームタウンであるカルタヘナに行く予定でした。

 しかし、成田空港に到着した時点で、トラブルが発生します。予定していた便が出発前にすでに1時間半の遅れが生じていたのです。モスクワでのトランジット(飛行機の乗り継ぎ)は2時間。最悪の事態が、頭をよぎりました…。

 ドキドキしながらチェックインカウンターに行くと…。予想通り、最悪の事態に。成田出発が1時間半遅れることで、モスクワからマドリーへの便には間に合わないと通告されました。そして、その日に出るモスクワからマドリーへの最終便が、僕の乗る予定の便だったため、翌日の早朝の便へ変更するように言われました。

 やっぱり! 思った通りだ! 最悪だー!ということで、チェックインカウンターの方にいろいろと聞いてみました。「モスクワで泊まるホテルは用意してもらえますか?」「マドリーのホテルを予約しているんですが、キャンセル料は払ってもらえますか?」「マドリーからカルタヘナへのレンフェのチケットも押さえてあるので、それも払ってもらえますか?」と。

 航空会社の答えはこうでした。「ホテルを用意することは、できません」「ビザもないので、空港から出ることも、できません」「ホテルやレンフェのキャンセル代も払うことは、できません」「できることは、『遅延証明書』を発行することです」。

 つまり、モスクワの空港で一泊して下さい。ホテルやレンフェのお金は自分で払って下さい、ということでした。………。遅延証明書って、学校や会社に遅刻しちゃいました!って話じゃないんだから! と思いながらも、払ってもらえないものは払ってもらえない。それに従うしかありません。

 不安を抱えたまま1時間半遅れで成田を発ちました。9時間程度のフライトを終えて、ようやくモスクワへ到着。多くの人が次の便の搭乗口に走って行ったり、いろいろ交渉したりと、かなり大騒ぎの状態でしたが、僕は腹をくくっていたんで、あえてゆっく~りと、行動しました。念のため、モスクワの空港で「ホテルありますか?」と聞いたところ、「予約がないなら泊まれるホテルはない」と告げられました。

 モスクワに到着したのが19時。マドリーへの便は、翌朝7時。約12時間、手荷物と共に空港で一夜を過ごすことが確定しました。空港では、もちろん1人で晩ご飯を食べ、Wi-Fiスポットで少しネットをし、本を読んだりしながら過ごしたのですが、なかなか時計の針は進まず、本当に長い夜でした。寝るにしても、横になれる場所もないため、ベンチに座りながら、手荷物を抱えて眠りました。随分寝たなと思って時計を見ると、30分しか時間が経っていなくて愕然としたりもしましたし、夏とはいえモスクワの夜は寒く、それも負けられない戦いの1つでした。

 ようやく朝になり、マドリー行きの飛行機に乗って、更に5~6時間、ようやくスペインに到着し、預けた荷物とも感動の再会を果たし、今度は更にカルタヘナへ5時間かけて移動します。

 結局、成田を発ってから、カルタヘナ到着まで寝た場所といえば、飛行機の座席と空港のベンチ、そして電車の座席でした。ようやくカルタヘナに着き、ピソに入ってベッドに横になった時は、かなりの幸せを感じました。

 翌日から早速、チームの練習に合流し、午前と午後の2部練習をこなしました。プレシーズンのフィジカル・トレーニングの時期だったのですが、最初の1週間は時差ボケ・移動疲れ・トレーニングの疲れの影響で、相当体が重かったです。

 今は徐々にコンディションも上がって来て、来週の開幕に向けて良い準備ができています。

 今回の話はスペインに限った話ではありませんが、スペインで鍛えられた能力の1つに『鈍感力』があります。気にしても仕方がないこと、自分でもどうしようもないことはどうしてもあるので、そういうことでストレスを溜めないようになりました。それに、さすがにここまで苦労してスペインに来たことはなかったので、悪運をすべて使い果たしたと信じ、新シーズンは良いものになるはずだと期待しています。

 このコラムを書いているのは、9月14日。スペインリーグ1部が開幕します。当初の予定では15日だったのですが、何試合かは今日行われることになったそうです。僕らも9月22日に開幕戦を戦う予定が、9月21日なりました(笑)。土曜日から金曜日への変更は日常茶飯事。理由は分からないのですが、とにかく変更になりました。僕ら選手は与えられた環境で力を発揮するのみ! ということで、鈍感力を発揮しながら、新シーズンも頑張ります!

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