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Jを目指せ! by 木次成夫

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第31回 東北リーグ2部 ビアンコーネ福島
by 木次成夫

 福島県は地理的事情、歴史的経緯ゆえか、中小都市が散在しています。いわき市が最大で、人口約35万人。以下、郡山(コオリヤマ)市=約34万人、福島市(県庁所在地)=約29万人、会津若松市=約13万人と続きます。ちなみにラーメンで有名な喜多方市は約8万人です。

 そんな地域性が大きく関係しているんでしょうが、「Jリーグを目指す」と表明しているクラブも複数あります。郡山市の「ビアンコーネ福島」(東北リーグ2部)、福島市の「ペラーダ福島」(東北リーグ2部)、いわき市の「アビラーション」(福島県リーグ3部)です。

 かつて、福島県にはJリーグを目指して、失敗した歴史があります。95年の福島国体時の「強化チーム」を母体にした福島FCが96年にJFLに昇格したものの、1シーズンで降格。その後、負債を抱えて解散。現在、東北リーグ1部所属の「FCプリメーロ」は同クラブのアマチュア選手が集まって設立されましたが、Jリーグ入りを目指してはいません。また、今季は天皇杯予選準々決勝でペラーダに敗れるなど、苦戦中です。

 栃木SC、FC岐阜のように、いわば「全県区」でJを目指すクラブもあれば、あえて群雄割拠を選ぶクラブもある点に、改めて「サッカーは文化」だと実感します。

 今回は「ビアンコーネ福島」を紹介します。

昨年までは「ノーザンピークス郡山」という名前でした。
98年=郡山北工業高校OBが「ノーザンピークス郡山」設立
03年=福島県リーグ1部優勝
04年=東北リーグ2部南ブロック昇格=2位
05年=東北リーグ2部南ブロック=優勝
06年=東北リーグ2部南ブロック=3位
07年=(株)郡山FCが運営母体となり、「ビアンコーネ福島」に改称。Jリーグを目指して本格的に活動開始。

 クラブ名は江戸時代末期の会津藩「白虎隊」を意識したそうです。つまり、“ビャッコ”から「“ビアンコ”-ネ」。ちなみに、クラブのエンブレムには「白虎」が描かれています。

 (株)郡山FCは06年設立の新しい会社です。代表取締役の佐藤暁氏は日本リーグ時代に富士通でプレーし、引退後は川崎Fなどで育成部門に関わった他、水戸のGM(ゼネラルマネジャー)を務めた経験もあります。つまり、アマチュア“マイナー”スポーツだった時代からJリーグバブルを経て、現在に至る日本サッカー界の“生き字引”の1人。果たして、どんなプロセス、戦略でクラブを運営していくか、興味津々です。

 8月5日(日)、ビアンコーネはホーム「さつき公園」陸上競技場でリーグ最下位(8位)のクレハと対戦して、9-0で圧勝しました(試合写真はこちら)。同公園は人口約7000人の西白河郡泉崎村にあります。最寄り駅は新幹線も停まる新白河から郡山方面に向かって3つ目(郡山からは5つ目)の泉崎(無人駅)。今はまだ地域リーグ2部とはいえ、ホームとして利用するクラブがあるということは、多少なりとも村のPRになります。また、ビアンコーネにとっても、「ホーム」を確保できる点は大きなメリットです。つまり、お互いにとって、良い策だと思いました。

 クレハに勝った時点で、ビアンコーネはリーグ戦通算7勝1分け。最大のライバル、ペラーダは1試合多く消化しており、7勝1敗1分け。すでにペラーダとの直接対決は1勝1分けで終えているため、現状ではビアンコーネが1位最有力候補です。

 また、天皇杯予選ではペラーダ同様に9月1日の準決勝進出を決めています。

ビアンコーネ対バンディッツいわき(福島県リーグ1部)
ペラーダ対古河電池(東北リーグ1部)

 決勝は9月2日。“Jを目指す”ダービーになるか否か、注目です。

 ところで、ビアンコーネには8月上旬、北信越リーグのフェルヴォローザ石川・白山FCから選手が加入しました。このコラムでもすでに紹介しましたが、フェルヴォは急進的かつ積極的強化が裏目に出て、経営難に陥ったクラブです。7月4日付けで監督、コーチ、選手全員との契約解除。天皇杯石川県予選出場を辞退。選手たちに残された道は、1試合(北信越リーグ最終節=9月9日)だけのために無給でチームに残るか、移籍先を探すか。結果として、多くの選手がチームを離れました。エースストライカーとして期待された阿部祐大朗(前・横浜M)は徳島ヴォルティス(J2)、MF松下晋也は松本山雅FC(北信越リーグ1部)、FW河田友輔はガンジュ岩手(岩手県リーグ1部)。そして、ビアンコーネには以下の3人。

DF橋爪拓磨(22歳)富士常葉大学卒
MF小倉大昌(24歳)元・長野エルザ(現・長野パルセイロ)
MF渡邉憲司(23歳)中京大学卒

 プロ(あるいはセミ・プロ)を夢見て、石川県に移り住んでから、わずか半年。給料支払い遅延などの末に無職に陥った3人は、それぞれにとって初めての地、福島で仕事を探して、サッカーを続ける道を選んだわけです。「Jを目指している」とはいえ、ビアンコーネの選手は全員がアマチュア。フェルヴォは平日昼間練習でしたが、ビアンコーネは夜。サッカー環境という点では落ちますが、是非、負の経験を今後に生かしてほしいです。

 少なくとも「夢を追い続けられる」環境には落ち着けたわけですし……。

<写真説明>会場で売っていた「公式Tシャツ」


今まで紹介した「Jリーグを目指す」クラブの動向

●JFL
後期6節(8月3、4、5日)
FC岐阜 1-1 横河武蔵野FC
ロッソ熊本 1-0 栃木SC
Honda FC 1-1アルテ高崎 

首位=佐川急便(勝ち点57)、2位=ロッソ熊本(同50)、3位=YKK AP(同41)、4位=アローズ北陸(同40)、5位=FC岐阜(同39)、6位=横河武蔵野(同38)、9位=栃木(同32)、18位=アルテ高崎(最下位、同6)
*アルテ高崎は6試合ぶりの勝ち点。次節の注目カードは横河武蔵野対ロッソ熊本(8月11日)

●北信越リーグ所属クラブ 
天皇杯長野県予選5回戦=ベスト8(8月5日)
松本山雅FC 3-0 上田西高校
AC長野パルセイロ 2-3 大原学園(北信越リーグ2部)
FCアンテロープ塩尻 2-3日精樹脂工業(長野県リーグ1部)
順調に行けば決勝戦で松本山雅との“4度目のダービー”になるはずだった長野パルセイロが、まさかの敗退。「Jを目指すクラブ」として存在を全国にアピールするチャンスを逃したことは、クラブのPR戦略という点でも痛い。準決勝は松本山雅対日精樹脂工業(11日)、上田ジェンシャン対大原学園(12日)

●関西リーグ所属クラブ 
全国社会人選手権関西予選2回戦(8月5日)
FC Mi-OびわこKusatsu 3-1    セントラルSC
バンディオンセ神戸 5-1 BIWAKO SC ROSAGE
*関西地域の全社出場枠は5チーム。Mi-O、バンディともに全社・出場決定

●中国リーグ 5節(未消化試合)
セントラル中国 3-4 佐川急便中国
*セントラルは1位ファジアーノ岡山と勝ち点差15の2位

●九州リーグ(18週 8月5日)
ヴォルカ鹿児島 1-4 V・ファーレン長崎 
ニューウェーブ北九州  3-2 新日鐵大分

首位=ホンダロック(勝ち点=45=16試合消化)、2位=V・ファーレン(同44=17試合消化)、3位=ニューウェーブ北九州(同43=16試合消化)
*V・ファーレンはNW北九州よりも1試合多く消化しているため、2位は暫定。次週、V・ファーレン対NW北九州(8月12日)は日本全国「Jを目指すクラブ」随一の注目カード



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