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セルジオ越後の越後録 by セルジオ越後

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変わらない高校サッカー、スタンドの中に“隠れた本田圭佑”がいる
by セルジオ越後

 今年の高校サッカー選手権の決勝は劇的だった。最後の国立を見に集まった満員の観客が息を飲むような面白い決勝だった。高校サッカーだから起こるまさにドラマチックな終わり方だった。負けてしまった星稜もいい試合をしていたし、富山一のあきらめない心、正月に相応しい新鮮な感覚だったね。

 大会の締めくくる試合としては盛り上がる終わり方だったね。ただ全体的にPK決着が多かったし、残念ながら今年も即戦力としてJリーグで活躍しそうなスーパーな選手は見られなかった。ディフェンシブなチームが多いのはまさに日本の文化になってしまっていると思う。攻撃的なワクワクするような試合がない。もちろん大事なポイントを抑えながら戦っているのは分かるけれど、個性がないまさに学校スポーツらしい“教科書通り”のサッカーばかりのように感じてしまった。

 高校サッカーはかわらない問題点がある。以前から指摘しているけれど、大量の補欠の存在やJリーグと学校が別々でクラブユースの選手は選手権に出られないのはやはりナンセンスだと思う。よく4166校の頂点と言う表現を使っているが、選手たちは同じ条件では戦っていない。一部の私立校などは試合に出られない100人以上の補欠がいて全国各地から選手を集めている。市民マラソンで言えば、招待選手が10チームの枠に入って、残りは市民ランナーが走っているような感じ。進学校のサッカー部と全国から優秀な選手を入れて強化しているサッカー部とでは戦うステージが違うんじゃないかな。強豪校の、他県から入学してきた選手たちを“外国人部隊”と呼んでいることほど悲しいこともない。日本人同士の試合で相手が“外国人部隊”というのは異常だよ。

 いくつか問題点がある中で、ボクはまずは登録制度をすぐにでも変えるべきだと思う。選手権のサイドストーリーでテレビは涙のスタンドを映すけれど、何で彼らにも選手権に出る機会がないんだろう。強いチームは数チーム分の戦力を保持してライバルに選手が行かないようにしている。「自分らのBチームはあそこのAチームよりも強い」なんて自慢も耳にするけど、それが何になるんだ。“拘束”されているだけになってしまっている彼らがピッチに立たなければ、競争も増えないし、より良い選手だって出てこないんじゃないかな。登録制度を変えて、彼らもプレーできるようにしなければいけない。あのスタンドの中に“隠れた本田圭佑”がいるんだよ。

 出場の可能性のあるリザーブはあっても可能性が無い補欠はなくさなければいけない。例えば、大会ごとにエントリーを変えて、数チームつくって、スタンドの選手たち全員に予選を戦う権利を与える。ボクは北陸勢同士の決勝よりも同じ高校の選手たちが決勝で戦うほうがよっぽどドラマチックだと思うな。あんなに補欠がいる国は日本くらい。補欠が試合に出られないのは、ゴルフに行ってプレイフィーを払ってるのにプレイが出来ないようなものだよ。メディアも長友の母校だとか、本田の母校だとか、過去をただ結びつけるよりも、そういう面に目を向けて報じて欲しいよ。

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