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W杯予選激闘通信「戦士たちの思い」

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 玉田圭司を頼もしく感じたのは、3月のアウエイでのバーレン戦後のことだった。「ロングボールを蹴ってしまい、相手の思うつぼの試合だった。みんな素直すぎる。もっと自分を出してもいいはず。今日は特に遠慮があったように感じた。外から見ていても歯がゆかった」
 1点を先制されたのちに交代出場も仕事らしい仕事ができなかった。そのこと以上にチームが“戦えていない”ことを悔しがっていた。
 そんな彼の姿は、ジーコジャパン時代の彼とは違った。現在の彼は自分のこと以上にチームのことを考えている。そして、その思いを明確に口にできるようになっていた。玉田の姿はジーコジャパン以降に代表へ招集された選手たちとも違う。
 ワールドカップドイツ大会のアジア予選を、そしてドイツ大会での屈辱を経験しているからこその、意地が感じられた。たくましくなっていた。
 所属する名古屋グランパスでは、06年、07年シーズンともに試合出場機会が減った。負傷もあったし、監督の構想から外れている時期もあった。しかし、08年シーズンは先発メンバーとして、しっかりと自身の力をピッチでアピールしている。そんな自信が彼を変えたのかもしれない。グランパスでは若手選手のリーダー的存在でもある。
「(日本代表合宿のために出場できない)玉田さんからゴールを決めろってメールが来たんで」
 ナビスコカップで2戦連続ゴールを上げている巻佑樹の試合後コメントは、玉田への信頼の高さを表している。
 ワールドカップ3次予選を前に玉田はきっぱりと語る。
「ワールドカップ予選は、簡単な試合じゃない。僕自身もドイツ大会の予選でそれを経験した。大事なのは気持ち。前の代表(ジーコジャパン)では、年齢的にも下のほうだったけれど、今は中堅世代。自分のプレーでチームをひっぱっていきたい」
 6月2日のオマーン戦では、1トップでの先発が濃厚だ。
「1トップというイメージはあまりない。もちろん、クサビを受けるときはしっかりと中央に居ることも大事だろうけれど、僕が動いて生まれたスペースを周囲の選手が使うことも意識している」
 前線からの守備、動き出しのよさ、玉田の運動量、そしてその動きの質が、日本の攻守に渡る起点となるに違いない。
 28歳、日本の新エース誕生となるか? 6月の3次予選で玉田の真価が問われるのかもしれない。

※本企画は不定期更新予定です(W杯3次予選期間中続きます)。感想をこちらまでお寄せください。

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