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W杯予選激闘通信「戦士たちの思い」

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 6月28日、各地でJリーグ(1部)が再開し、代表選手たちの新たな戦いがスタートした。同じ日、中村俊輔は横浜市内の体育館で、自身がプロデュースするサッカースクール『SHUNSUKE PARK』の子どもたちへ直接指導を行うイベントへ参加している。
 午前午後、合計400人あまりの子どもたちと1時間あまり共にすごし、トレーニング後は、ひとりずつへサイン色紙を手渡しし、写真撮影を行った。長時間の撮影だったが、本人が希望して実現したという。
 そんなイベント後、取材に応じて、27日に決定したワールドカップアジア最終予選の組み合わせについて語った。
「どんな相手と当たっても楽な相手なんてない」と話し始めた中村は、「最後は気持ちの戦いになる」とメンタルの強さが予選突破の鍵になると言った。
「キリンカップのころは、相手との競り合いでも身体を張っていない選手もいた。でも、それじゃあダメだということを選手は3次予選の中で学んでいけたと思う。そういう強い気持ちがもっと必要になってくる」
 長丁場となる予選。
「コンディション不良や出場停止など、いつも同じ選手で戦えるわけじゃない。日本中の選手が代表候補になってくる」といろんな選手の力が必要になると言い、「1試合が終わったあとで、なんとなく解散して、1カ月後になんとなく集まるというのではダメだ。もしも悪いところがあれば、試合後朝まででも話し合うくらいのことをしなくちゃいけない」とも話した。
「岡田さんはミーティングで相手のビデオを見るときでも、かなり具体的な話をしてくれる。そういう作業は6月の1カ月間にも何度もあった。だから、選手自身もどう戦うのかというイメージはつかめていると思う。今の代表はサッカーを知っていて、チームとしてどう戦うかということが出来る選手が多い」と彼が考える日本の利点である連動性を表現する能力のある選手の存在が、今代表の武器だと話している。そして、「ただいいプレーが出来るだけではダメ。チームの一員としてどうプレーするのかという意識が必要なんだ」と付け加えた。


 午後7時から国立競技場での柏レイソル戦を終えた浦和レッズの鈴木啓太にも最終予選について聞いた。6月の3次予選での出場試合はない。最終予選に向けてレギュラー奪取の思いはあるのだろうか?
「大事なのは、日本がワールドカップへ出場すること。そのために必要な選手は監督が選ぶ。もちろん自分が試合に出てという思いもあるけれど、チームのために何ができるか? 日本がワールドカップへ出場するために自分が今何ができるのかという気持ちも大事だ。もちろんポジション争いというのは、チーム力を上げることにもつながるけれど、自分が試合に出ることだけを考えるのは、どうかという気持ちもある。自分のことを考えること、チームのことを考えること、ふたつの思いは表裏一体ではあるけれど、この気持ちをどう抱くのかというのが、長丁場の予選を戦う上で重要になってくるんじゃないかな。3次予選を経験して、アジア予選の厳しさは学べた。でもね、今日の試合もそうだけど、どんな試合でも楽な試合はないからね」
 1-2で敗れた柏レイソル戦を振り返りつつ、鈴木はそう結んだ。もちろん気持ちの強さの重要性についても語っている。

 中村と鈴木の話での共通点で、印象的だったのは「チームのために」ということだ。中村は献身的なプレーについて言及し、鈴木はピッチ外での献身的な姿勢について語っているように思えた。
 海外組偏重のなかでスタートした前大会のアジア予選。しかし、北朝鮮戦で決勝ゴールを上げたのは途中出場の大黒将志だったし、アウエイのバーレーン戦でゴールを決めた小笠原満男はサブメンバーの立場から急遽先発出場した選手だ。
 1ヵ月に1試合、数ヵ月の中断期間を含む今回の予選。選手がいつも万全な状態で戦えるわけではない。だからこそ、誰もが代表を意識し、代表のために自身を捧げられるのか? 最終予選を突破するメンタルの強さ、その源はそういう献身的な思いにあるのかもしれない。

※本読み物は今回で終了です。ご愛読ありがとうございました。ご意見、ご感想はこちらまでお寄せください。

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