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POINT OF SOCCER by 長谷川望

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試合で力を発揮するためのメンタルトレーニング
by 長谷川望

 パフォーマンスに影響しているメンタル。練習では出来る事が、試合で思うように発揮できない、緊張してしまうなどという悩みを抱えている人は多いと思います。「練習が足りない」と受け取ってしまうかもしれません。しかしメンタルもパフォーマンスに大きく関わっているのです。プロ選手でもメンタルの弱さに気付き、トレーニングを行っている人は少なくありません。

 今回はJリーグクラブや日本自転車競技ナショナルチームにも介入されている、水戸協同病院の金井貴夫先生にメンタルトレーニングについてお聞きしました。金井先生はスポーツコンディショニング外来にて内科的疾患、メンタルケアを含めたコンディショニングに関する治療を行っています。

「ゾーン」という言葉があります。「ゾーン」状態とは、精神的にも身体的にも研ぎ澄まされている無の境地。自分の力を発揮できる最高の状態と言えます。このような状態に入るためには、まず試合での余計な緊張や不安を感じない事が重要です。とは言ってもなかなか自分で意識して直せるものでもありません。しかしメンタルトレーニングによって、改善することが出来るのです。その一つは、「呼吸法」でした。

「緊張すると筋肉が硬くなり、反射神経や思考も鈍る。一方でリラックスしすぎると、アドレナリンが出ずにやる気がなくなる。緊張とリラックスは自律神経が司っていて、これらをバランス良く保つのは、自律神経のなかで唯一コントロールできる呼吸しかない」。緊張していると、交感神経が有意に働くので、呼吸をゆっくりと整えリラックス効果のある副交感神経を働かせましょう。ポイントは毎日続ける事。試合前だけではなく、寝る前、練習の何分前にやるのかなど、習慣づける事です。

「ゾーンの状態は自律神経がほどよくバランスのとれた状態。脳波を測るとアルファ波が非常に出ている。例えば、アルファ波が出ていると視野が広がるが、緊張してアルファ波が少ないとインターセプトを狙っている相手が見えなくなってしまう」。メンタルトレーニングの一つである「呼吸法」によって、自律神経のバランスを保つことは、サッカーのパフォーマンス向上に繋がる事が分かります。実際に金井先生がメンタルケアに携わったプロサッカー選手たちは、「視野が広がった」「判断が早くなった」「ミスが減った」「本番で実力が発揮できるようになった」など結果を出しています。

 日々の努力が本番で発揮できるようになる価値あるメンタルトレーニング。日本は欧州や欧米に比べてまだ需要が少ないかもしれませんが、今後スポーツにおけるメンタルトレーニングの普及が広がればより成長していくと感じました。

◆著者プロフィール◆
長谷川望(はせがわ・のぞみ)
1987年生まれ。福島県出身。ロンドン五輪でなでしこジャパンや女子レスリング金メダリストの伊調馨らを取材。フジテレビ「とくダネ!」に出演するなど現在スポーツライターとして活躍中。
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