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POINT OF SOCCER by 長谷川望

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シンガポールが進める育成プロジェクト
by 長谷川望

 現在のイングランド・プレミアリーグの放映権料は20年で30倍以上に値上がりをしました。1シーズンで約2600億から約3000億円。うち4割が海外から支払われ、特筆すべきはマレーシア、香港、シンガポール、タイから得られる放映権料が約70億から約102億円だということ(2013年7月20日「日本経済新聞電子版」より)。東南アジアのサッカー市場が注目されるのも納得の数字です。

 シンガポールでも、やはり一番人気があるのはイングランド・プレミアリーグ。そのサッカー人気は確かなものですが、一方国内のサッカーリーグには課題が残ります。シンガポールは東南アジアのなかでも物価が高い国です。シンガポールでサッカー事業の会社を経営されている斉藤泰一郎氏は「生活にお金がかかるので、家庭では生活に困らない職に就きましょうという方針になってしまう。勉強に集中するために早くからサッカーをやめてしまう子供が多い。Sリーグのプロ選手になっても、銀行に勤めたほうがお金をもらえるという現実がある」と、子供たちのサッカー離れを懸念しています。このような問題を払しょくするために、国内サッカーの需要を拡大する必要があります。

様々な取り組みがあるなかで、国内サッカーを盛り上げるためには、育成から力をいれなければいけないという認識が広がっています。それでは、シンガポールサッカー協会はどのような取り組みをしているのでしょうか。

全クラブがアカデミーをもつJリーグとは違い、Sリーグの参加クラブでアカデミーを所有しているのは半分以下。そこでシンガポールサッカー協会は、若手選手の育成を目的とした「ナショナルフットボールアカデミー(NFA)」というプロジェクトを2000年に立ち上げました。「NFA」はU-15からU-18のチームが構成されおり、U-17、U-18は23歳以下の「プライムリーグ」への参加や国際試合に参加するなど育成年代の強化を進めています。

これから若手選手の成長は代表戦、国内リーグが盛り上がる追い風になるでしょう。斉藤氏は東南アジア諸国が協力し合う事で、より選手育成にプラスになると分析しています。「シンガポール代表対マレーシア代表というのはダービー戦のような賑わいがあり、昔はナショナルスタジアムが埋まるというのがあったが、長い間交流戦はなくなった。ここ数年でそれが復活し、お互いのサッカーの刺激になっている。育成やサッカーを盛り上げていくために東南アジア全体で考え、お互いの国が協力し合ったら面白いアイディアが生まれるのではないかと思う」。

シンガポールをはじめとした東南アジア諸国では、国内サッカーを本格化させると同時に、育成年代の強化にも取り組み始めています。このような働きはアジアの活性化にもつながるのではないでしょうか。

◆著者プロフィール◆長谷川望(はせがわ・のぞみ)
1987年生まれ。福島県出身。ロンドン五輪で女子レスリング金メダリスト伊調馨を取材。2020年東京五輪を見据え、サッカーを中心にスポーツの育成年代を精力的に取材している。フジテレビ『とくダネ!』、TBS元旦スポーツ祭り『2013年にかけるアスリートたち』、WOWOW『金曜カーソル』などテレビ番組でも活躍中。
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