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POINT OF SOCCER by 長谷川望

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「楽しまないと成長できない」リバプールのメソッド
by 長谷川望

 イギリスのブックメーカー、ウィリアムヒルズでおこなわれた投票結果によると、イングランド・プレミアリーグのなかで「2番目に好きなクラブ」で最も人気があったのが「リバプールFC」だったとリバプール・エコー紙が先月8日に報じました。

 そんな世界最高峰のリーグのサッカーファンをうならせるリバプールが日本でジュニア向けスクールを開校しました。今回は人工芝のフットサルコートが4面広がる「コロナフットボール相模原」でおこなわれた無料体験レッスンを取材させていただきました。指導者のフィリップ・オリバー氏は、7か国以上でリバプールアカデミーの指導をしてきた国際経験豊かなコーチです。

 レッスン前、参加したU-8の子供たちにフィリップコーチは「プレーヤーのみなさんのテクニック、戦術、社会性、メンタルの4つを成長させたい。リバプールでは楽しまないと成長できないと言われている」と話しました。

 コートに入ると一人ひとつのボールを持ち、マーカーで区切られた狭い範囲でドリブルを自由にします。掛け声によって様々なモーションを繰り返します。例えば、3(スリー)は膝でボールを止める。4(フォー)は地面に横たわり頭で止める。8(エイト)ではフェイントのシザーズをおこないます。

 このように数字をランダムに指示し、子供たちは決められた動作をしていきます。印象的だったのは、頭を使わせること。数字ごとに決められた動作を覚えて、とっさに行動にうつさなければいけないことで子供たちは「何だっけ?」と考えている様子が見られました。それ以外にも「スペースをみつけて」と、狭い空間の中でなるべく周りに人がいないところに行くようにと声をかけていました。

 その後はDF3人を直線上におき、限られたプレーエリアでDFをかわしシュートするという練習。1人DFをかわせたら1点、2人、3人とかわせたら2点、3点と上がり、ゴールできたら5点を獲得できます。クリアするたび点数がもらえるというモチベーションを下げさせない工夫がされていました。DFはローテーションされ、プレーエリアも徐々に広くなっていきます。そしてここでも同じく「スペース!」や「早く!」という言葉が響いていました。

 リバプールのスクールではU-8の体験レッスンから、ゲーム感覚で出来る練習、そのなかにも考えさせる要素を加え、楽しみながら習得できる工夫がされていました。早いプレーはジュニア世代からも周りと差をつけるカギとなります。世界で指導してきたコーチの言葉からも、U-8からのスピードやスペースをみつける技術は現代サッカーにおいて重要なポイントになるのだと改めて感じました。

◆著者プロフィール◆長谷川望(はせがわ・のぞみ)
1987年生まれ。福島県出身。ロンドン五輪で女子レスリング金メダリスト伊調馨を取材。2020年東京五輪を見据え、サッカーを中心にスポーツの育成年代を精力的に取材している。フジテレビ『とくダネ!』、TBS元旦スポーツ祭り『2013年にかけるアスリートたち』、WOWOW『金曜カーソル』などテレビ番組でも活躍中。
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