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POINT OF SOCCER by 長谷川望

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元日本代表・遠藤彰弘氏のプロを見据えた指導
by 長谷川望

 マイアミの奇跡。1996年アトランタ五輪のグループリーグ、日本はブラジルと対戦し勝利しました。その歴史的一戦で10番を背負い先発出場した遠藤彰弘氏は、Jリーグが発足した翌年に横浜マリノス(現、横浜F・マリノス)に入団、2005年にヴィッセル神戸に移籍後、2008年に14年にわたる現役生活に幕を閉じました。現在、自身のサッカー経験を活かして、国内外でサッカーの指導をされています。

 今回は遠藤氏の指導者としての顔に迫りました。そこにはプロの世界を理解しているからこそ、目の前のことだけではなく、プロになった後のことを考えた育成が成されていました。

 弟である日本代表の遠藤保仁選手(G大阪)が監修し、遠藤彰氏がメインコーチを務めているジュニアからジュニアユースを対象にした「遠藤塾」ではプロ選手を目指している生徒も多いそうです。「プロになりたいと思っている子しか来てないと思って指導している。彼らがプロになっても1年目や2年目で壊れないような指導をしていかないといけない。育成は原点となるところなので、デリケートにやっていかなければいけないこと。指導者の一言で子供がどう化けるか分からないし、逆にその一言でモチベーションが下がることもある」。

 遠藤保選手と同じやわらかい口調は、やはり兄弟なのだと感じさせられながら、その口調とは反対に力強いメンタリティを感じました。そのメンタルが培われた背景には小学生時代が大きく影響していました。「くじけそうな時も、ヤットもそうだが、僕らは『くやしい』と思いながら一つのことを出来るまでやってきた。だから苦しいプレッシャーがきても、周りの環境が変わっても、スタイルが変わらないで同じことができる。なにがあっても続けることの重要性を小学生のときに、言葉ではなく、日々の練習で勝手に身に付いた。小学生のときの教えが14年間プロとしてやってきたベースになっている」。

 小学校のときのサッカーに対する姿勢がプロになってからの基盤になったという遠藤彰氏。指導者として今伝えたいことは、目的のために自分で行動できるようになることだと言います。

 幼少期の育成は子供たちに大きな影響を与え、それは大人になっても活きてくるものです。自分で考えて行動できる環境が、遠藤兄弟のような日本を背負って立つ選手を育てるのではないでしょうか。

◆著者プロフィール◆長谷川望(はせがわ・のぞみ)
1987年生まれ。福島県出身。ロンドン五輪で女子レスリング金メダリスト伊調馨を取材。2020年東京五輪を見据え、サッカーを中心にスポーツの育成年代を精力的に取材している。フジテレビ『とくダネ!』、TBS元旦スポーツ祭り『2013年にかけるアスリートたち』、WOWOW『金曜カーソル』などテレビ番組でも活躍中。
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