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東京五輪への推薦状 by 川端暁彦

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「東京五輪への推薦状」第1回:“火の国から来た火の玉の男”広島ユースFW満田誠
by 川端暁彦

 2020年の東京五輪まであと5年。2020年に23歳を迎える1997年生まれ(現在の大学1年生の早生まれと高校3年生)以降のサッカープレーヤーは皆、東京五輪男子サッカー競技への出場資格を持っています。今後、間違いなく注目度高まる東京五輪世代。これからスタートする新コラム、「東京五輪への推薦状」では元エルゴラッソ編集長で、現『J論』編集長の川端暁彦氏にいまだ年代別日本代表への招集経験がない選手、「まだまだ、いるぞ」という才能たちを連続で取り上げてもらいます。第1回はサンフレッチェ広島ユースの1年生FW満田誠選手です。

 3月、広島県吉田公園サッカー場。新入生が加わったばかりのサンフレッチェ広島ユースが、人工芝グラウンドを焦がすような熱い練習を展開していた。トレーニングの上にゲームを実施し、しかも「新3年vs 新1年」「新2年vs 新3年」のような学年対抗形式。熱くならないはずもない。「練習からバチバチです」と笑う沢田謙太郎新監督の狙いは、戦うチームを練り上げることにある。一目で分かる、明瞭な目的だった。

 1年生たちはチームに加わったばかりという段階だが、彼らはジュニアユース時代から沢田監督の薫陶を受けてきている。気後れせずに戦う姿勢を見せる様は、確かに〝沢田イズム〟を体現するものだった。この学年は昨年の日本クラブユース選手権(U-15)、高円宮杯全日本ユース(U-15)選手権でも目にしており、名前と顔が完全一致とはいかなくとも、プレーを見れば思い出すもの。たとえば、闘志充溢で目を惹くプレーを見せるMFが、U-16日本代表の仙波大志であることはすぐに分かった。「やっぱり、こいつは1年から試合に絡んできそうだな」と思った一方で、特別な個性がもう一人いることにも気付かされた。

 プレッシャーをいなして前を向くスキル、ボールタッチの精度の高さ、何よりも先輩相手に物怖じせずに戦いに行く姿勢が目覚ましい。同時にこうも思わされる。「いやでも、絶対にこんなやつ、去年のジュニアユースにはいなかったぞ」と。となれば外部から獲得してきた選手ということになるが、そうなるとより一層、怖がらずに戦う姿勢の価値は際立つ。並のメンタルではなさそうだ。練習後、沢田監督に聞いてみた。

「ああ、満田(誠)ですか。プレミアリーグの(ポジション)争いにも絡んでくると思いますよ」

 指揮官の言葉に偽りはなく、その1か月後に開幕した高円宮杯プレミアリーグWESTにおいて、満田はコンスタントに出場を重ねている。5月10日に行われた第6節、セレッソ大阪U-18戦にも先発出場。0-5の大敗に終わってしまったゲームだけに見せ場は少なかったが、それでも要所で〝らしさ〟は見せていた。そんな様子を見ながらC大阪の大熊裕司監督は「満田はウチに欲しかったんだよ」と広島との争奪戦に敗れたのだと教えてくれた。「一目見て、すぐに〝イイ〟と思ったけれど、そのときはもう広島から声が掛かったあとで遅かった」と笑う。

 満田が中学時代に所属していたのは街クラブのソレッソ熊本。より強い刺激と競争を求めて「県外に出たかったし、広島の練習場は田舎にあるのでサッカーに集中できる環境だと思った」と広島ユースを選択した。「厳しい試合でも活躍できるように、もっとスキルを付けていかないと厳しい」と話しつつ、「将来はまずサンフレッチェのトップチームに上がって、そのあとで日本を背負う選手になってみたい」と言い切った。

 国内トップを争うチームを率いる二人の指導者に〝イイ〟と感じさせた選手なのだが、年代別日本代表とはここまで無縁だ。本人も「入ってみたい」と意欲的なのだが、国際舞台でも満田らしい物怖じしない姿勢と類まれなセンスを示せるかは見てみたい。

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