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「ユース教授」安藤隆人の「高校サッカー新名将列伝」 by 安藤隆人

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“ユース教授”安藤隆人の「高校サッカー新名将列伝」第5回:守屋保監督(西武台高)
by 安藤隆人

名将列伝。第5回目は、激戦区・埼玉県をリードする、黄色と青の軍団・西武台高サッカー部の守屋保監督。かつて東京の名門・帝京高でプレーし、国士館大を経て、1983年に大学卒業と同時に西武台に赴任。1987年に監督に就任し、今年で29年目を迎える。母校・帝京と同じ、黄色のユニフォームを全国の強豪に仕立てると、95年の鳥取インターハイで準優勝、10年の沖縄インターハイでもベスト4。これまで片岡洋介清水慎太郎福田俊介(以上大宮)、河合竜二(札幌)など多くのJリーガーを輩出してきた。

 守屋監督が今、たどり着いている境地は、『より密なコミュニケーション』。“帝京魂”を持つ熱い男が、根気強く選手達に訴えかけることで、チームに団結力をもたらし、今夏も2年連続で埼玉県を制し、インターハイに出場する。7月11日、埼玉県の駒場スタジアムサブグラウンドで行われた埼玉県リーグ1部(S1)の取材に行き、守屋監督にその境地にたどり着いた所以を聞いてみた。


―炎天下の中のゲーム、お疲れさまです。結果は市立浦和に1-5でリーグ初黒星を喫してしまいました。試合後、ミーティングをされていましたが、何を話されていたのですか?
「この負けで目が覚めたと思うんです。やっぱりここまで結果が出ているし、リーグ戦の悪い面が出て、こうしていつでもどこでもいい環境でサッカーが出来るのが当たり前になっていて、試合中もリーグ戦とかでただこなしている状況が増えて来た兆候が全体としてありますね。そうなると、気付かない間にモチベーションの低下を招いていて、今日のように自分たちと同じくらいのレベルの相手と競り合っていく中で、うちが大量点で勝つことや、今回のように逆にウチが全然だめで、大量失点をしてしまうパターンに陥るんです。なので、そうなったときにこそ、何が足りないのか、自分の質を上げるためにどうしたらいいのか。変に説教をするのではなく、考えさせる方向に持っていくようにしています」

―敢えて怒らない。感情をストレートにぶつけず、選手達に問いかける。そういうアプローチになったのは、何が転機だったのでしょうか?
「やっぱり質を上げていかないと、日本のサッカーが良くなっていかないのかなと。それはプレーもそうだけど、メンタル、人間性の部分でも。ウチは部員数が180人近くいれば、競争も激しい一方で、仲間への想いとかを大事にしたいんです。プレーの質や人間の人格を引き上げること、礼儀作法を引き上げるために、思いやりとか恩返しをすることを日常の中から常に考えて行動をして欲しいなと思う」

―そのために問いかけをする。では、今日はどのような問いかけをしたのでしょうか?
「この敗戦をチーム全体として考えていかないといけません。本当は今日の試合出場メンバーは、明日を休みにするつもりだったんです。でも、今日の試合を見ていると、いつも応援してくれているBチームの仲間達がいなくて、選手達のモチベーションや雰囲気が下がっていた。彼らがいないと、ウォーミングアップで士気を高めていくことができなかった。それが分かったからこそ、明日は休みではなくて、『Bチームの試合を応援しにいきなさい』と話した。自分たちは今日の試合で、こういう雰囲気にしてしまって、こういう結果になってしまったということを、直接BチームのS2リーグの試合で伝えに行ってこいと。その代わりに月曜日にオフを与えるから、明日は応援に行って、火曜にミーティングをして、またみんなでやっていこうということを話していました。こういう負け方をして、リフレッシュするだけなのは、言っていることとやっていることが違ってくるので、あくまで『みんなで戦っている』意識を持ってもらいたいんです」

―昔はこのようなアプローチではなかったと思います。僕も守屋監督と長い付き合いをさせてもらっていますが、沖縄インターハイ前の2009年あたりから、守屋監督の選手へのアプローチがソフトになったというか、良い意味で凄く選手目線で話をしているイメージがあります。
「昔は自分の中で勝ちたい気持ちが先行して、怒るだけになって、逆にムキになってしまっていました。練習中も怒るだけになってしまった。もちろん勝ちたい気持ちを減らすこと無く、どうやって選手達にしっかりと届くようなアプローチが出来るか。いろいろ考えましたが、ちゃんと明確な意図を選手達にしっかりと伝えよう。どんなときも感情に先走らずにやろうと思ったんです。サッカーの前に一人の人間として礼儀などを教える一方で、しっかりとコミュニケーションをとることですね」

―実際にチームに変化はありましたか?
「子供達が話をしっかりと聞くようになりましたよね。子供達がこっちに目を向けるようになってくれた。50歳を過ぎて、歳を取ってくると、徐々に選手達との年齢差も広がっていって、感情だけで言っても口ばっかりになってしまう。むしろこっちが言うより、聞くほうがこの年代には必要になってきて、言うのは若いコーチ陣だけでいいんです。自分も40歳くらいまでは、コーチと一緒になって言って、熱くなってやっていました。でも、それじゃあ良くならないんですよね。なので、まずは選手達の話を聞いてからという形で見ていく指導をやっているところです」

―そのようなアプローチをしたことで、インターハイベスト4など結果もより出てくるようになりましたね。
「そうですね。ただ3年前は県内で無冠だったんです。個々の技術的には非常に高かったのに、結果が出なかった。そこで改めて思ったのは、サッカーというのは1人の技術ではなくて、周りの質を高めた時にどれだけチームとしてやれるかが大事なスポーツ。周りの人の心を察したり、周りから文句を言われても『大丈夫』と言う選手がいると、チームとしてグッとまとまりが増すんですよね。でも、今の選手達は自分からバリケードを張ってしまう子が多いんです。「何で俺に言うんだよ」とか、自分が言われそうになると、言わせない雰囲気を作ったりするので、ただ技術を上げるだけではなくて、周りからきちんと言わせる、聞く雰囲気も作っていく必要があると思った。その中で技術とか人格を高めて、損得なしにやれるような心の選手をゆっくり育てていこうと。『サッカーで人を育てる』というところに、指導者はより向いていかないといけないと感じています」

―守屋監督の穏やかな一面の秘訣が分かった気がします!1-5という試合の後に時間を取っていただき、ありがとうございます!
「凄いタイミングだったね(笑)。でも逆にこういう試合のときで良かったかもね。インターハイではこうならないように頑張りますね!(笑)」

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