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ゲキつよっ!! by 北澤豪

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ゲキつよっ!!vol.3「コロンビア戦でできたこと、スウェーデン戦に望むこと」
by 北澤豪

 解説者の元サッカー日本代表北澤豪氏による新コラム「ゲキつよっ!!」。日本代表からJリーグ、海外サッカー、育成年代、フットサル、障がい者サッカー……、幅広くフットボールに精通する北澤氏が、テレビでは語り切れない魅力を綴っていきます。

 リオデジャネイロ五輪はグループリーグ2試合を終え、日本はコロンビア戦を2-2で引き分けて決勝トーナメント進出に望みをつなぐことができた。こういった大会で大事なのは結果だ。「勝とう」という意識を強く持たないと結果はついてこない(とはいえ、勝利至上主義になることは違うと思う。そのあたりは難しいところだが……)。コロンビア戦の日本からは勝利への意欲が伝わってきた。

 内容に目を移すと、4-5で競り負けたナイジェリア戦に比べて「前向きなプレー」が多かった。南米の国であるコロンビア相手に互角以上に渡り合えたのは、「前向きなプレー」がいい距離感を生み、いいプレーを選択できていたからだと思う。室屋成選手(FC東京)がいい例だ。ボールを持ったときに、パスをする相手だけを探していたナイジェリア戦とは異なり、縦に仕掛けることを強く意識していたのがコロンビア戦だった。

 A代表での試合に比べて、五輪ではミスから失点につながってしまう場面が多い。どういうミスをしたら危険か、何をしたらピンチになるのか、そういった危機管理をわかっている選手が少ないからだ。特に自陣ゴール前では、プレーを切るところなのか、しっかりとつなぐところなのか、一瞬での判断が必要になってくる。

 藤春廣輝選手(G大阪)がオウンゴールを献上してしまったことは残念だが、メンタルの回復が急務となる。手倉森誠監督が途中交代させたことは、ひとつの驚きだった。藤春選手には「オーバーエイジの選手だから」と必要以上に気落ちしないことだ。中2日で行われるような大会では、次の試合までに大きく修正できることはメンタル面くらいになる。実際、ナイジェリア戦から中2日で行われたコロンビア戦では、メンタル面が修正されていることが見て取れた。それが前述した「前向きなプレー」につながったのだと思う。

 個人的に評価をしたいのは、中島翔哉選手(FC東京)だ。同点に追いついたミドルシュートは、日本に不足していると言われる「個の力」によるもの。彼からは「何かを起こそう」という「前向きなプレー」が随所に見られる。「ボールを持ちすぎる」と言われる向きもあるかもしれないが、中島選手の積極的なプレーは、五輪代表チームに欠かせないものだ。

 積極的なプレーは、浅野拓磨選手(アーセナル)からも見られた。1点を挙げたことはもちろん、単身でもシュートまで持ち込み、コロンビアの脅威となっていた。その姿勢の背景には、A代表での悔しい想いがあるはずだ。今年6月のキリン杯ボスニア・ヘルツェゴビナ戦、浅野選手は決定機でシュートではなくパスを選択。ゴールにつなげられず、試合後に涙を流した。「後悔を二度としない」。その強い想いが、浅野選手のプレーから感じられた。

 11日に対戦するスウェーデンの印象としては、組織的なサッカーを展開する、穴ができにくいチーム。しかし、日本とは相性がいいと私は見ている。U-21欧州選手権の戦いから見るに、スウェーデンは最終ラインからパスをつないで攻撃を組み立てていた。日本の武器のひとつであるハイプレスがハマれば、高い位置でボールを奪えるシーンが多くなるだろう。また、0-1で敗れた8日のナイジェリア戦では、ナイジェリアのスピーディな攻撃に対応できていなかった。日本がこれまで見せているような、少ないタッチ数でのパスワークや、浅野選手の裏への飛び出しは、確実にスウェーデン守備陣を苦しめるはずだ。

 決勝トーナメントに進出し、リオ五輪でひとつでも多く試合を――。それは、A代表の強化にもつながる。

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