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ヤング魂 by 長谷川望

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[第82回]FW鈴木陽(長野パルセイロ)「17歳女子選手の単身ブラジル留学」
by 長谷川望

 前回のコラムに引き続き、AC長野パルセイロ(なでしこリーグ1部2016 3位)の2017年新加入内定選手として発表された17歳の女子選手をピックアップ!

 小学生のときにジョガーレFC、中学時代は浦和レッズレディースJrユースと順調なサッカー街道を歩み、高校は開志学園ジャパンサッカーカレッジへと進んだ才能あふれるサッカー女子。しかし彼女が選んだのは、周りとは少し違う『自分の道』だった。

PICK UP選手
 鈴木陽(17)。ポジションはフォワード。17歳という若さで、AC長野パルセイロトップチーム入りが決まった注目の若手選手だ。
 
 彼女には人一倍サッカーへの強い想いがある。それを如実に物語っているのは、高校を辞めて1ヶ月間単身ブラジル留学に渡ったことだろう。男性でブラジルへサッカー留学に行くのは少なくないかもしれない。しかし世の中から治安の問題が囁かれるなか、16歳の少女は「サッカーがしたい」という気持ちだけを抱き、空港から一人でブラジルに飛び立った。
 
「最初は不安もありましたが、行ったらすごく楽しかったです! 空港でも行き先を見せれば身振り手振りで教えてくれました。空港や現地でも接した人が親切な人だったので順調に行けたのだと思います」と、携わった人たちへの感謝の気持ちを話す。

ブラジル留学について
 鈴木選手が留学した先は、ブラジル南部のパラナ州。パラグアイとアルゼンチンとの国境があり、世界遺産イグアスの滝の所在地として知られている。

 留学先のFOZ CATARATAS FC(カタラータスFC)を前もって下見し、コーディネーターを務めた林英雄氏は、現地についてこう話す。「カタラータスという世界で2番目に大きい発電所があり、そこの広い敷地のなかに国が女子のトレーニング施設を作ろうとしているところです。その一部を使っているのがカタラータスFC。アルゼンチンと試合をしたり、女子サッカーに力を入れているクラブです。寮や街を見てきて、安全性に問題なかったのでここに決めました」。

 念願のブラジルに到着した彼女は、自分よりも年齢が高いカテゴリーに参加することになった。「とにかくボールに対しての『絶対負けない』という気持ちが強いです。当たりが強く、みんな技術も高かったです。ドリブルというよりは、2タッチなどタッチ数が限られるサッカーをしていました。相手が強くても自分がミスしない技術、相手が変わっても自分は変わらないプレーをしていきたいと思いました」と、ブラジルで体感したサッカーについて力強く口にする。そんな彼女の生き生きとした表情を見ると、勇気を出して決断したブラジル留学は、他には変えようもない価値あるものだと感じる。

 もう一つ彼女を成長させた要因として母親の存在は欠かせないだろう。留学先で人気のアジアやヨーロッパ、アメリカではなく、どのような生活なのか想像も難しい南米ブラジルへの留学。娘を一人で行かせる不安は計り知れない。「ストイックで毎日自主練している娘を見てきて、気持ちを叶えたいと思いました。心配で悩んだときに、私の母(鈴木選手の祖母)に相談したら『そんなこといっていたら世界に行けない』と言われ、背中を押してもらいました。連絡のない夜は眠れませんでした。助けてくれた人たちに感謝しています。これからもずっと変わらず好きなことを楽しんでほしいです」と、母親としての当初の想いを口にする。落ち込んだ時は母親に相談するほど、仲が良い鈴木親子。母親の決断なしに鈴木選手の成長はなかったのではないだろうか。

気になる質問‼
――留学を意識するようになったのはいつ頃ですか?
「中三くらいからです。コーチたちが世界の話を結構していたので、その影響で世界を意識するようになりました」

――休みの日は何をするのが好きですか?
「何をすれば良いのか分からないので、あんまりオフの日が好きじゃないんですよね(笑)周りもサッカーをやってる子が多いので予定が合わないことが多いです。今は長野でプレーしたいという気持ちが強いです!」

――今後の目標を教えてください!
「試合に出て結果を残して、4年後の東京オリンピックに出たいです!!」

 4年後鈴木選手は21歳、どのような進化を遂げるのか心待ちにしたい!

◆著者プロフィール◆長谷川望(はせがわ・のぞみ)
1987年生まれ。福島県出身。ロンドン五輪で女子レスリング金メダリスト伊調馨を取材。2020年東京五輪を見据え、サッカーを中心にスポーツの育成年代を精力的に取材している。フジテレビ『とくダネ!』、TBS元旦スポーツ祭り『2013年にかけるアスリートたち』、WOWOW『金曜カーソル』などテレビ番組でも活躍中。
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