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スポーツライター平野貴也の『千字一景』 by 平野貴也

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「スポーツライター平野貴也の『千字一景』」第64回:雪ニモマケズ(青森山田高)
by 平野貴也

「青森山田が先に来ていなかったら、大会をできなかったよ」

 第17回東北高校新人サッカー選手権大会の初日、タッチラインの外側に除けられた雪が積み上がったピッチの上で、試合会場を提供した仙台育英高の城福敬監督は、笑いながら言った。雪かきの主力部隊になったのは、積雪で地元のグラウンドが使えず、2日前から現地調整に入っていた青森山田高の選手たちだった。会場の許可を得ると、あっという間に雪かきの道具を買いそろえて、開幕2日前に仙台育英高、前日に仙台大で除雪。ピッチを作り出して練習に励んだ。

 城福監督は「うちには、受験の日に学生の通り道を作る程度の道具しかない。踏み固めてから雪かきをした方が良いかな、なんてうちの選手が考えているうちに、山田の選手たちが道具を揃えて、中央から外にどんどん雪をかいていった。スムーズで、すごかったね。ああすればいいのかって真似しながらやったよ」と感心していた。

 大会は、青森山田が3年ぶり5度目の優勝を飾った。当初は27日から3日間で行う予定だったが、降雪の影響で日程を2日間に短縮。試合の時間と場所も変更になった。どうにか開催されたが、中止の可能性もあったという。

 試合会場が仙台大と仙台育英高になったのは、雪かきが許されたからだった。城福監督は「宮城では、雪が積もっても2、3日もすれば解けてなくなる。だから、雪かきはやらないし(人工芝が痛むため)ほとんどの場所で禁止されている」と当地の事情を教えてくれた。許可が下りても、除雪が完了しなければピッチは使えない。普段、雪かきをしないチームには容易でない。作業を手伝った選手の中には「大会までに終わるわけがない」とこぼした選手もいたようだが、青森山田の大活躍で大会は無事に開幕を迎えられた。

 青森山田の指揮を執った正木昌宣コーチは「青森では、雪が解けるのを待っていたら、いつまでも経ってもグラウンドを使えない。帰ってからも使うから、スコップは人数分揃えましたよ。うちは、まず自然と戦うところからスタートですから」と笑顔で話した。積雪や除雪に慣れているだけでなく、日ごろから状況に対して迅速に対応する習慣がなければ、準備は難しかっただろう。会場は、スローインの助走距離こそ短かったが、十分にプレーできる環境が整った。積雪でボールを使用した練習ができない時期でも大会を優勝してしまうチームのすごさは、除雪されたピッチにも垣間見えていた。

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