beacon

Jを目指せ! by 木次成夫

このエントリーをはてなブックマークに追加

第71回「地域リーグ」シーズン到来!
by 木次成夫

「地域リーグ」シーズン到来です。今週末に九州(5日)、四国(6日)、関東(5、6日)、来週末には関西(12、13日)、北信越(13日)が開幕します。夢の(はずの)「J参入」後に人気面で低迷する(つまり、経営難)クラブが多い昨今、多くのファンが「Jへのプロセス」を楽しむリーグになってほしいです。言い方をかえれば、「地域」とはいっても、上昇気流に乗っている時期に、着実にファンが増えないようでは、たとえ短期的に「J参入」を果たしても、“弱小J2クラブ”時代を乗り越えることは至難だと思います。大健闘しているFC岐阜すら、観客数は伸び悩んでいるのですから。

長野パルセイロ「PART2」

昨季、「地域」随一の盛り上がりを見せた長野県(信州)は、今季も楽しそうです。山雅に比べると補強が遅れていたパルセイロ(第65回参照)が、プレースタイルという点でも魅力的なチームになりつつあります。昨季と比べると、“7人減9人増”の合計21人。課題の左サイドにも期待できる人材が加入しました。

松裏英明(写真)、81年6月生まれ(26歳)。

ジュビロ磐田ユースが全日本ユース(U18)選手権を制した際のメンバーで、ウルグアイ留学後、ヴァンフォーレ甲府(J2)→ジャトコ(JFL=03年シーズン終了後にリーグ撤退)→デンソー(JFL=05年シーズン終了後リーグ撤退)→静岡FC(東海リーグ)→佐川印刷(JFL)。

甲府時代はリーグ13試合出場。昨季は佐川印刷でJFL3試合出場(チームは12位)。去る2月に行われた立正大学との練習試合に“練習生”として参加していました。一見して“待望の選手”だとはいえ、本人がアマチュア契約でも“良し”とするか、気になっていました。クラブが仕事を斡旋するとはいえ、「社員」の佐川印刷とは環境が“かなり”違いますから。

最終的には、「パルセイロが熱心に誘ってくれたので」(松裏)加入を決断したとか。甲府時代の“先輩”土橋宏由樹の影響もあったかもしれません。

「パルセイロからオファーが来たという連絡があった時には、再チャレンジする価値のあるチームだと伝えました」(土橋)。

3月29日
長野パルセイロ対ヴァンフォーレ甲府

会場はパルセイロ・ホームの南長野運動公園総合球技場。“長野市サッカーフェスティバル”と題し、長野市北部U12選抜VS同南部選抜、長野市中学生選抜VS同ジュニアユース選抜の試合も開催されました。入場料無料で、観衆は1126人(主催者発表)。「そもそも長野は寒いですが、(今日は)特に寒い」(FC岐阜から加入したGK海野剛)上に、選抜高校野球「長野日大vs.北大津」と試合時間が“カブった”割には、多くの人が集まったという印象です。

結果は1-2でパルセイロの敗戦。J2試合日ゆえ、甲府は「2軍」。“身体のキレ”の差に両チームの「現在地」を感じたものの、パルセイロへの期待も高まった試合でした。

パルセイロのスタメンは以下の通り。
GK海野剛(24歳、前・FC岐阜=新加入)
右SB小田竜也(24歳、浜松大学出身=3年目)
右CB籾谷真弘(26歳、前・草津=2年目)
左CB丸山良明(33歳、前・仙台=新加入)
左SB松裏英明(26歳、前・佐川印刷=新加入)
右MF土橋宏由樹(30歳、前・松本山雅=新加入)
ボランチ塚本翔平(24歳、中京大学出身=3年目)
ボランチ飯田 諒(24歳、前・草津=2年目)
左MF貞富信宏(28歳、前・アルテ高崎=2年目)
FW要田勇一(30歳、前・千葉=2年目)
FW佐藤大典(25歳、前・草津=3年目)

昨季は3-4-3でしたが、この試合は4-4-2。3月15日の松本山雅戦との練習試合で、なんとなく「今季構想」は感じていたのですが……。土橋と貞富、つまり“二大重鎮”ボランチをサイドに配置する布陣は、ボランチを基点にサイドに散らす“常識”からすると、いわば“逆転の発想”です。

土橋に「要はサイドでボールを落ち着かせようという意味?」と問うと、「そうです。でも、パスが来ない時に、引かざるを得なくなるのが課題ですが……」。

土橋も貞富もサイドアタックで相手を振り切るスピードはありませんが、パスセンスとゲームを見る目は相対的に優れています。当たり前ですが、サイドは、片側だけケアすればよいわけですから、中央でプレーするよりも、相手のプレッシャーが少ないわけです。例えば、チャンスを待って、ラスト・クロス1本狙い。成長中の飯田(愛称メッシ)と塚本の“活きの良さ”生かす意味でも、良い策かもしれません。

甲府戦の後、パルセイロ選手はファンに「リーグスケジュール表つき」ティッシュペーパーを配りました。昨季はファンとの交流が“ぎこちなかった”選手に、“慣れ”を感じました。この点では山雅に比べると“徐々に”かもしれませんが、進化中です。

また、パルセイロは北信越BC(ベースボールチャレンジ)リーグの信濃グランセローズと提携して、桑田真澄氏監修の子供向け「スポーツアカデミー」を今季から始めます。同リーグは、富山、新潟、信濃、石川の4チームで昨季スタートし、今季から群馬と福井が加わります。

長野五輪から10年、運営維持費が問題になっている五輪施設もある一方、“新たなスポーツ文化”が根付こうとしているわけです。ちなみに、五輪閉会式会場がグランセローズも使用する野球場に改装され、その隣の球技場が“パルセイロ・ホーム”です。

せっかくなら、4月26日予定の北京五輪聖火リレー走者にパルセイロとグランセローズ選手も加われば、絶好のPRになると思ったのですが……残念ながら、リストに名前はありませんでした。チームのスケジュール調整を含めて、なんとかならなかったのか……。“もったいない”という感じです。

●JFL前期第4節
(3月29、30日)
佐川印刷SC(昨季12位)0-2 流通経済大学(同10位) 
アルテ高崎(同18位=最下位)1-1 SAGAWA SHIGA FC(同優勝)
ソニー仙台FC(同11位) 1-3 MIOびわこ草津(今季昇格) 
TDK SC(昨季13位)1-2 ジェフリザーブズ(同9位)
ガイナーレ鳥取(同14位) 0-1 栃木SC(同8位)  
三菱水島FC(同15位) 0-2 横河武蔵野FC(昨季7位)
FC刈谷(同16位)1-2 Honda FC(昨季5位)
ファジアーノ岡山(今季昇格)4-2 ニューウェーブ北九州(今季昇格)
FC琉球(同17位)2-1 カターレ富山

●順位
1位=栃木(勝ち点=以下同=12)
2位=ファジアーノ(12)
3位=横河武蔵野(10)
4位=MIO(10)
5位=Honda(9)
6位=ジェフ(7)
7位=ソニー仙台(6)
8位=ガイナーレ(6)
9位=流経大(5)
10位=刈谷(4)
11位=カターレ(4)
12位=琉球(3)
13位=SAGAWA SHIGA(2)
14位=NW(同2)
15位=TDK(同2)
16位=佐川印刷(2)
17位=三菱水島(2)
18位=アルテ(1)

※本コラムは毎週火曜日更新予定です。ぜひ感想をこちらまでお寄せください。

TOP