beacon

蹴活生ガイド2020(関西) by 森田将義

このエントリーをはてなブックマークに追加

[蹴活生ガイド2020(関西)]東福岡、同志社大で主将。DF児玉慎太郎はプロで活躍するために「違いを出せる選手」へ
by 森田将義

 高校時代は名門・東福岡高でCBとして活躍。2年時にはインターハイと全国高校選手権の2冠達成に貢献し、最終学年では主将も務めた。華々しいキャリアを持って同志社大へ進学したDF児玉慎太郎(4年)が、大学生活最後の1年をスタートさせている。

 2年ぶりの関西学生1部リーグに挑む今季は、新型コロナウイルスの感染拡大による影響で前期リーグと総理大臣杯が中止となった。「主将として、全国大会に出て日本一を目指すチーム作りを進めてきた。プロも目指しているのでアピールの場が減り、中止を知った直後はかなり落ち込んだ」が、すでに気持ちを切り替えている。

「後期リーグだけの一発勝負を経験するのは、全チームが初めて。年間を通じた戦いを知っている上位勢との差がなくなったのは僕たちにとって追い風だと思う」。活動中止期間中はZoomを使った全体でのトレーニングに加え、チームメイトのモチベーションを高めるため話を重ねてきた。チームとしての手応えも十分で、試合が出来る日を待ちわびている。

 大学生活最後の一年に、気持ちを昂らせるのには理由がある。自身の高校3年時、同志社大が開幕戦で前年度インカレ準優勝の阪南大に勝利したことを知り、「このチームなら、もう一度全国を目指して戦えると思った」と早々と入学を決意した。しかし、開幕以降は同志社の勝ち点が伸び悩み、児玉が入学した年には2部リーグに降格。以降は、1部と2部の行き来を繰り返し、目標としていていた全国大会への出場は一度も果たせていない。個人としても、「1部で戦うと、自分の実力不足も痛感させられた」と振り返る。

 スポットライトを浴び続けた高校時代とのギャップにもどかしさを感じているが、自ら選んだ大学生活は決して遠回りではない。より選手の自主性が求められる大学サッカーでの活動を通し、組織の重要性について気付けたのは大きかったという。学生スポーツでは最後のカテゴリーとなるため、セカンドキャリアについて考える機会も増えた。「プロで活躍する選手は、人としてもしっかりしている。同志社には様々な物事をよく考えている人が多く、人間として成長するためのきっかけをたくさん与えてもらった」。

 大学に入ってからの一番の成長は、自身のプレースタイルについて考え直すことができた点だろう。高校時代は常に勝利や、個人のアピールを追い求めていた。周囲が羨むような結果を残したものの、「ヒガシでレギュラーならプロになれると思っていたけれど、そうではない。ただ試合に出るだけでなく、個人として違いを出せる選手でなければプロにはなれない。高校時代は、プロで活躍する姿が自分自身で浮かばなかった」。

 他との違いを見せつけるため、これまでの3年間は強みであるキック精度の高さと対人の強さを磨き、チームの勝利のために発揮できるよう意識した。今季の持ち場となるサイドバックに加え、ボランチとセンターバックもソツなくこなせるユーティリティーさも、他の選手とはとは違う大きな武器だ。

 高校時代のチームメイトだったMF藤川虎太朗(現磐田)、DF小田逸稀、MF高江麗央(ともに現町田)が一足早くプロの世界に進んでいる。昨年までG大阪に所属した高江とは関西ステップアップリーグで対戦し、刺激も受けた。「あの3選手がJリーグで頑張ってくれれば、ある程度自分が目指す基準が分かる」と話すように、身近な存在をプロで活躍するための物差しに置き換え、自らもプロで活躍するための準備を進めていく。

※この連載は、各チーム承諾の上、「蹴活生」たちに電話取材しています。

執筆者紹介:森田将義(もりた・まさよし)
1985年、京都府生まれ。路頭に迷っていたころに放送作家事務所の社長に拾われ、10代の頃から在阪テレビ局で構成作家、リサーチとして活動を始める。その後、2年間のサラリーマン生活を経て、2012年から本格的にサッカーライターへと転向。主にジュニアから大学までの育成年代を取材する。ゲキサカの他、エル・ゴラッソ、サッカーダイジェストなどに寄稿している。

▼関連リンク
蹴活生ガイド2020(関西) by 森田将義

TOP