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Jを目指せ! by 木次成夫

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第95回「天皇杯1回戦 福島ユナイテッド対国士舘大学」
by 木次成夫

試合会場はJヴィレッジ・スタジアム。最寄りのJR広野駅は、いわき駅から仙台方面に向かって約25分。つまり、“いわき文化圏”なのですが、ハーフタイムに“サプライズ”がありました。いわき市を舞台にした映画『フラガール』で有名になった、フラダンス・ショーです。

今後、日本サッカー協会が「天皇杯開催会場では、ハーフタイムショーあるいは販売物など、なんらかの形で“ご当地”らしさを出すこと」と義務づければ、より楽しい大会になるだろう、と思いました。

9月14日
福島ユナイテッド 1-4 国士舘大学

国士舘大学は関東大学リーグ1部2位(順位は9月14日現在、以下同)。天皇杯東京都予選では、準決勝で町田ゼルビア(関東1部優勝)、決勝で横河武蔵野FC(JFL4位)に、それぞれ1-0で勝利しました。

対する福島ユナイテッドは、東北リーグ2部南ブロックで首位独走中。8月の全国社会人選手権・東北大会準々決勝でNECトーキン(東北1部2位)に0-1で惜敗した後、斎藤誠監督との契約を解除し、天皇杯予選準決勝以降は、「守備の中心」時崎悠(29歳、前・水戸)が監督を兼任しています。ちなみに時崎は昨季、選手兼任監督でした。

ユナイテッドのスタメンは以下の通り。
GK 清野雄大(23歳=今季加入、前ガンジュ岩手)
右SB小田切 啓(23歳=今季加入、前・古河電工千葉、甲府ユース出身)
CB時崎 悠(29歳、前・水戸)
CB時崎 塁(25歳、前ラスティング郡山=福島県リーグ)
左SB柳原 裕(24歳=今季加入、前ガンジュ)
右MF桑原剛(23歳=今季加入、前・草津=札幌からレンタル)、
ボランチ金基洙(26歳=今季加入、前・水戸)
ボランチ小倉大昌(25歳=今季加入、前ビアンコーネ福島)
左MF藤本雄基(22歳=今季加入、前・草津)
FW笹野天史(25歳=今季加入、前・徳島)
FW岡本勇輝(25歳=今季加入、前ガンジュ、元・水戸)

スタメン平均年齢24.5歳で、6人が元Jリーガー。CB青柳雅信(23歳=今季加入、前・ガイナーレ鳥取←湘南←筑陽学園)は怪我で欠場しました。

試合前に注目していたのは、元Jリーガーらの意地。つまり、どこまで国士舘相手に粘れるか。東北2部としては破格の強化をしたユナイテッドの「現在地」にも興味がありました。

前半は0-0。国士舘が優勢に試合を進めたものの、ユナイテッドは大健闘。カウンターから得点のチャンスもありました。しかし、後半は国士舘が圧倒。戦術理解度、チーム完成度など多くの点で差を感じさせる試合になってしまいました。

国士舘の特徴はピッチ際ギリギリまで広く使うサッカーでした。相手守備選手間の距離(いわゆる、門)を広げ、そこを狙うわけです。典型的パターンは、サイドバックの効果的攻撃参加などで組織的にサイドを崩してから、逆サイドへクロス(守る側からすれば、複数の選手でプレスに入ると、“薄い”逆サイドを狙われるということ)。パスが出る前に中盤で“つぶす”のが順当策ですが、国士舘は守備陣から“つなぐ”能力でも上でした。

ユナイテッドは守備ラインを上げれば裏をつかれ、ラインを下げればサイドを深くえぐられ――。数少ないカウンター攻撃のチャンスは、スピードに乗った(あるいは、乗りやすい)状況でパスを受けられないゆえに、生かせず。

<得点経過>
後半12分 0-1(国士舘=柏 好文=MF=21歳、韮崎高校卒)
*スローイン→武岡優斗(FW=主将=22歳、大谷高校卒)→柏。CB時崎悠がカットに入ったものの、間に合わず。

後半19分 0-2(国士舘=武岡)
*右サイドから柏が逆サイドにクロス。MF半田武嗣(23歳、前・ジェフY)が左サイドからゴール前に折り返し、武岡がフリーでダイレクト・シュート。

後半26分 0-3(国士舘=武岡)
*MF伊東俊(20歳、青森山田高校卒)がフリーでパスを受けて、右サイドからクロス。ユナイテッド右SB小田切啓の外側=ファーサイドから武岡がフリーでボレー。

後半32分 1-3(ユナイテッド=時崎 悠)
*直接FK→こぼれ球→時崎塁のクロス→時崎悠、意地のダイビングヘッド。

後半39分 1-4(国士舘=武岡)
* 左サイド、ユナイテッド守備陣の裏で出たボールを武岡がフリーでダイレクト。

試合後、国士舘の伊藤卓コーチ(33歳)と話をしました。95年Wユースでベスト8に進出した際の「日本ユース代表」メンバーです。中田英寿の「1学年下」、田中誠、奥大介らと「同学年」。国士舘を中退後、名古屋、京都、仙台、湘南でプレーしました。

社会人は「仕事とサッカー」の両立で、大学生は「教育としての体育=サッカーと、他の勉強」の両立。大学(学生)によって、サッカーの位置づけは様々ですが、“スポーツに力を入れている大学”の学生の方が、サッカーに集中できます。とはいえ、若き元Jリーガーらが翻弄されるほどの要因は何なのか?   

「(天皇杯予選福島県大会)決勝しか見ていないのですが、(今日の福島ユナイテッドは)予想以上に守備的でした。そういうサッカーに慣れていなかったのではないでしょうか。9番の選手(桑原)はじめ、もっと攻めてくるかとも思っていたのですが、あれだけ“引いた”後では、難しい」(伊藤コーチ)

確かに――。ユナイテッドは現在、リーグ戦10連勝、48得点、7失点。いわゆる「格上」との試合機会は稀です。

国士舘は10日に関東リーグの試合があったため、中3日。対するユナイテッドは7日のリーグ戦から中6日。「仕事との両立」とはいえ、今季から平日昼間練習になったので、練習スケジュールという点では、プロ並み。走り負けしたのは、リーグで圧勝の連続ゆえ、日々の練習で甘さが出たのかもしれません。つまり、見方をかえれば、来季以降に“つながる”良い経験だったとも言えます。

「同世代に負けたのが悔しいです。まずは怪我を直してから、頑張ります」(青柳)

もし、青柳が出ていれば、展開は変わっていたかもしれません。ただ、青柳の代役として出場した時崎塁も、県リーグ・クラブ出身とは思えないほど健闘しました。闘将タイプの兄、悠が前に出てチェックし、弟がカバーする様は、まさに“あうんの呼吸”。後半、地元出身の“英雄”時崎兄弟が翻弄される様を見て、悔しいと思ったクラブ下部組織の子供たちが、やがて、クラブの成長に貢献できれば……、それこそ「Jリーグ100年構想」の見本だと思います。

ちなみに、伊藤コーチと時崎悠は01年シーズン、湘南でチームメイト。お互いが立場を代えて対戦し、元ファンタジスタ系「先輩」ならではの“魅せるサッカー”を披露するとは……、サッカーの楽しさを改めて実感しました。

▼Jを目指すクラブの動向
天皇杯1回戦結果

2回戦の注目カードは
カマタマーレ讃岐(四国1位)対ヴォルティス2nd(四国2位)
*1回戦ではガイナーレ鳥取(JFL7位)に1-0で勝利という、チーム史上最大の快挙を達成したカマタマーレ。2回戦はリーグ優勝争いの前哨戦です。

ツエーゲン金沢(北信越3位)対カターレ富山(JFL5位)
*昨年度は3回戦に進出したツエーゲンの勝負強さは健在。2回戦は1回戦でカターレに敗れたバンディオンセのホーム、加古川開催なのが残念ですが……。

<写真説明>ハーフタイムには、フラダンス。さすがは、映画「フラガール」で有名になった地域ならでは。


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