beacon

「身震いするぐらいの雰囲気」浦和MF汰木、初出場初アシストの鮮烈デビュー

このエントリーをはてなブックマークに追加

浦和でのデビュー戦でアシストを記録したMF汰木康也

[3.6 ACLグループG第1節 浦和3-0ブリーラム・U 埼玉]

 鮮烈デビューとなった。今季、山形から完全移籍で浦和レッズに加入したMF汰木康也が2-0の後半39分からFW興梠慎三に代わって途中出場。与えられた時間は10分余りだったが、出場からわずか4分後の後半43分、左サイドに開いた位置でボールを受けると、得意のドリブルで仕掛けた。

 緩急をつけながら相手をはがして縦に抜けると、ゴールまで左45度の“汰木ゾーン”へ進入。鋭い切り返してDFをかわし、右足でファーサイドへ狙い澄ましたクロスを送った。ここに飛び込んだのがMF橋岡大樹。体を投げ出す右足ボレーでダメ押しの3点目を奪い、試合を決定づけた。

 移籍後初出場でアシストを記録した23歳は「得意なコース、得意のドリブルから理想どおりのアシストが決まって良かった。後ろにドリブルすると見せかけて前にスピードアップすれば、たぶんあれは取られない。ゴールにつながって良かった」と胸を張った。

 富士ゼロックススーパーカップ、J1開幕戦の仙台戦(△0-0)とベンチに入れず、今月2日のJ1第2節・札幌戦(●0-2)で初めてベンチ入りしたが、出番はなかった。この日が公式戦2試合連続のベンチ入り。「先制していたので、相手も集中が切れてくるかなと思っていたし、スペースも空いてきていた。自分が出たらそこで受けて、1人2人かわしてゴールシーンをつくれるなとイメージしながら見ていた」。ゴール裏でアップを続けていた汰木にベンチから声がかかると、ゴール裏のサポーターが沸いた。

「アップしているときから『チャンスあるぞ』とすごい声をかけてもらっていた。身震いするぐらいの雰囲気を感じながらアップできていた」。後半39分に待望の瞬間が訪れると、思いの丈をプレーで表現した。「もちろん結果が一番大事だけど、自分のプレーでちょっとでもサポーターを楽しませることができたらと思っている。沸かせるプレーをしたいし、プラス結果を出せるようにとずっと考えながらやっていた。100点ではないけど、結果を出せてホッとしている」。浦和のサポーターに対しても挨拶代わりのアシストとなったのは間違いない。

 とはいえ、現状は謙虚に受け止めている。「武藤くんの状況もあってベンチ入りしている。もっと監督に認めさせないといけないし、そういう意識で練習している。出たら監督を見返すぐらいのプレーをしようと思っていた」。FW武藤雄樹が負傷離脱中という状況もあってつかんだチャンスであり、「今日結果を出せなかったら次はない。10分で自分の攻撃の強みを全部出さないと、次のチャンスはないと思ってアップしていた」という危機感さえ持っていた。

 相手に自分の情報がなかったからこそのパフォーマンスだったことも理解している。「浦和で試合に出ていないから相手も自分のことをスカウティングしてなかったと思う。緩急を付けながら中に入るのは、スカウティングしていないと相手は分からない。研究されていない限りは1人で行ける自信があった」。今後のJリーグでは同じようにいかないことも覚悟の上だ。

「カットインが読まれているときにどうプレーするかが自分の課題だった。もっとキレと精度を上げないといけない」。それでも、自身の課題を克服していけば、必ずチームの武器になれるという自負もある。「(浦和には)ドリブルで崩せる選手が他にあまりいない。途中からでもいいから浦和のオプションの一つにしてくれればと思いながらやっている。一つ結果を出せてホッとしているけど、満足はしていない」。新天地で踏み出した第一歩。チームにとっても価値ある新たな発見となった。

(取材・文 西山紘平)

●ACL2019特設ページ

TOP