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ACL敗退で自らに突きつけた“責任”…横浜FM喜田拓也「何度打ちのめされてもチームや仲間のためになりたい」

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MF喜田拓也主将(写真右)

[8.18 ACL決勝T1回戦 神戸3-2横浜FM 埼玉]

 2年前に届かなかった“アジア8強”をかけてこの一戦に臨んだ横浜F・マリノスだったが、またしても壁を越えることはできなかった。前日会見で「2020年のベスト16で敗退したあの日の光景、あの日の景色を忘れたことはない」と並ならぬ決意を語っていたMF喜田拓也主将は試合後、「(この試合に)かけていただけに今の気持ちに相応しい言葉が見当たらない」と悲痛に切り出しつつ、自らに責任の矛先を向けた。

「やはり思うのはチームメートに、チームスタッフに、ファン・サポーターにもうこんな思いをさせたくないということ。自分にもっとチームを導く力があれば結果は変わったと思うし、この結果になった責任は自分にある。逃げたくないし、このチームとこの仲間を誰よりも思っているからこそ、もっと自分が力をつけないといけない。それが自分の果たすべき責任だと思う。どれだけ時間がかかっても、チームを救える男になりたい」

 ACLラウンド16はヴィッセル神戸との日本勢対決となったことで、手の内を知る相手に対策を打たれた横浜FM。攻撃ではビルドアップの出口、守備ではサイドバック裏が執拗に狙われ、持ち味の攻撃的なパスワークやプレッシングは大きく制限されていた。しかし、そうしたチーム全体の課題でさえも、喜田にとっては自らが解決すべき課題だと捉えている。

「サッカーの中身についてはまたゆっくり振り返って、チーム内で成長していくため、より良くなっていくために合わせて行きたいのが大前提としてある。ただ神戸さんがやりたいこと、どういう狙いで入ってきているかはある程度早く掴めて、そことの兼ね合いで少し自分たちのボールを握る時間が上手くコントロールできなかったということ。相手の狙いを凌駕する質、どの手を出すかの共通意識を持つところは、まだまだ上げていけるところではある。そういうところは、もっとこのチームならできると思う。そこも含めて自分がコントロールできれば良かったし、プレーだとか、チームを導くことに関しても、自分は完璧な人間ではないけど、何度打ちのめされてもチームや仲間のためになりたいというのはどんな時も変わらないし、そこから逃げずに責任を果たしたい」

 すでにルヴァン杯と天皇杯も敗退している横浜FMにとって、残されたタイトルはJ1リーグ戦のみ。現在の順位表では1試合消化が少ないながらも2位の鹿島と勝ち点5差をつけており、独走状態に入っているように思われるが、さらに2試合少ない川崎フロンターレとも勝ち点8差にとどまっており、1試合の勝敗で順位が入れ替わる状況でしかない。何より8月に入ってからの公式戦では4連敗中。3年ぶりのリーグ奪還に向けては、まずこの苦境を打破する必要がある。

 横浜FMは前回リーグ優勝した2019年にも、8月にJ1リーグ戦3連敗を経験。そこからの11試合を10勝1分という脅威の戦績で勝ち抜き、頂点に立ったという成功体験を持つ。しかし、いまの現状を受けて喜田がフォーカスするのは、チームが「やるべきこと」。これまで結果にかかわらず、勝利した後にも続けてきた取り組みだという。

「結果が出なければ公式戦何連敗とか、チームスタイルがどうだとか、サッカーの内容がどうだという声が上がるのはいまに始まったことではない。メディアの皆さんの声をリスペクトしていないわけではないけど、そういう声に惑わされず、ちゃんとやるべきことを整理してやるというのをいい時も悪い時もやってきた」

「もちろん苦しいし、悔しいし、それは間違いないけど、やるべきことから逃げないで、マリノスだからできること、マリノスにしかできないことをやっていきたいという思いはどんな結果だろうとある。ここから立ち上がることも、その一つだろうと思う。もちろんサッカーの中身もここから学んで、次の勝利につなげていくのは外せないことだと思うし、この悔しさをどういう形でつなげていくかは自分たちにかかっている」

 そうして決意を示した喜田はやはり「そこも含めて自分がちゃんとチームや仲間を救える男にならないといけない。まだまだ足りないんだぞというところを自分の肝に銘じて、責任を果たさないといけない」と自らに課題を突きつけた。

 J1リーグ戦は残り10試合。現状のスケジュールでは約半月の中断期間を挟み、9月3日から再開されることになる。喜田はFW宮市亮の長期離脱が発表された直後に迎えた7月30日の鹿島戦(○2-0)後、「最後一番上に自分たちが連れて行って、必ず彼にシャーレを渡すという僕らの使命ができた」と宣言。その決意に応えた横浜FMサポーターも次戦にあたる今月7日の川崎F戦(●1-2)でシャーレを模したコレオグラフィーを準備するなど、クラブ全体にタイトル奪還への気運が高まる中、運命のラストスパートが始まろうとしている。

「あそこで言ったことに関しては、あえて自分の中で口にした。そこへの強い決意、覚悟は揺るがない。シーズンが始まった当初からそうやってきたし、(宮市の負傷という)ああいうタイミングもあった。ただ先を見過ぎているかというとそうではないし、自分たちの姿勢はそうではない」

 “シャーレ”への言及についてそう説明した喜田は「そこに辿り着くためには目の前の試合、目の前の練習で出し切って、積み重ねていくことでしか掴み取れないのはわかっている。いまはこういう時期を過ごしているけど、ここから何を得られるかは自分たちの姿勢次第。ただの負けにするつもりはないし、この悔しさに押しつぶされずに、自分が責任を果たさないといけない」と断言。「最初にも言ったけど、チームメートに、チームスタッフに、ファン・サポーターに、もうあんな思いをさせないということで、強い気持ちで立ち向かっていかないといけない。逃げないでしっかり立ち向かってしっかり前に進んでいきたい」とあらためて決意を語り、取材エリアを後にした。

(取材・文 竹内達也)
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