beacon

香港キッチーに「キッチリ勝ちました」。タイ代表率いて史上初のアジア8強!! 手倉森監督が語った野望「多くのBGサポーターを作って帰りたい」

このエントリーをはてなブックマークに追加

パトゥム・ユナイテッドの手倉森誠監督

[8.19 ACL決勝T1回戦 パトゥム・U 4-0 傑志 浦和駒場]

 手倉森誠監督が率いるパトゥム・ユナイテッドが史上初となるAFCチャンピオンズリーグ8強入りを果たした。昨季敗れたラウンド16に挑み、香港の傑志(キッチー)と激突すると、チームは次々にゴールを重ねて4-0で圧勝。タイから来日した報道陣に盛大な拍手で迎えられながら記者会見場に姿を現した指揮官は、対戦相手のチーム名になぞらえた日本語のダジャレで「キッチリ勝ちました」と喜びを語った。

 2016年のリオ五輪でU-23日本代表を率いた実績を持つ手倉森監督は、昨季限りでベガルタ仙台の監督を退任した後、今季から「自分の目標、夢でもあった」という海外挑戦を決断した。その舞台はタイのBGパトゥム・ユナイテッド。秋春制シーズン途中だった今年2月、中位に沈んでいた前年度王者の指揮官を引き継ぐと、そこからチームを見事に浮上させ、リーグ戦2位、タイ国内杯優勝に導いた。

 また今年4月に行われたACLグループステージは3勝3分の無敗で突破し、日本でのセントラル開催となったノックアウトステージに進出。海外チームを率いての凱旋帰国に指揮官は「アジアの舞台、Jリーグチームも参加する大会に出られていることにやりがいを感じているのと、日本人指導者の刺激になればという気持ちはいつも持っている」と感慨をのぞかせた。

 そうして迎えたラウンド16、タイの歴史に挑んだパトゥム・Uは守備を固めてきた傑志に対し、次々にゴールをこじ開けた。「守りに重点を置いてくるのは予測していた通りだが、勝ち急がないことを話していた」。そう指示を出していたという手倉森監督がなかでも手応えを感じたのは前半34分の先制点。GKからのロングアシストからMFウォラチット・カニスリバムフンのゴールがもたらされたが、「組み立てて点を取らないといけない気持ちになりがちなところで、GKからのダイレクトパスで点を取れた。得点のバリエーションを持てた試合だった」と前向きに振り返った。

 また先制点直前にはシステマチックなセットプレーからあわやゴールという決定機(シュートの際にファウルがあったとしてノーゴール判定)を作り、前半39分にはFWイフサン・ファンディ・アハマドの強烈なミドルシュートで追加点を奪取。後半立ち上がりには相手の猛攻を受けながらも凌ぎ切り、そこから2点を加えて試合を締めた。終わってみればスコアは4-0。だが、シュート数13対9という僅差を勝負強さで上回った。

 試合後、記者会見に出席した手倉森監督は「まず昨年、ここのラウンドで負けていて、悔しい思いをしてきたクラブが一つの壁を破ろうとしてきて、壁を破れたことにホッとしている」と安堵の表情を浮かべた。その上で「こういう勝ち方をしたら『傑志だったから』という失礼なヤツもいるかもしれないが、グループリーグではわれわれの仲間のチェンライをしっかり倒して、ヴィッセル神戸にも一進一退のゲームをしたチーム。もっと激闘、死闘を選手にイメージさせていたが、グループリーグが終わってからここまでの姿勢、意志、意欲、そして準備の違いでこういう勝利がもたらせたと思う」と対戦相手へのリスペクトを表しながら、選手たちを称えた。

 さらには「まだまだ自分たちはBGパトゥムの可能性を示したいと思うし、タイのサッカーの発展を牽引しているチームだというのを日本に知らしめて、多くのBGサポーターを作って帰りたい」と高らかに宣言。アジア8強、東地区4強という舞台に進んだことで、ここからは日本のサポーターからの注目も集まるであろう中、自らが作り上げてきたチームをアピールしていく構えを見せた。

 準々決勝は22日に埼玉スタジアム2002で開催。東地区からはすでにヴィッセル神戸がと全北現代(韓国)が進出を決めており、もう一つは浦和レッズかジョホール・ダルル・タクジム(マレーシア)のいずれかとなる。指揮官は「どこと対戦したいか?」という報道陣からの問いに次のように答えた。

「昨年のベスト16で全北に負けているので、借りを返すチャンスになるし、神戸は長崎で一緒に仕事した孝行(吉田孝行監督)が頑張っていて縁を感じる。大迫らワールドカップに一緒に行ったメンバーもいるので対戦してみたい。浦和のリカルドはタイでも仕事をしたことがある監督だし、そことも縁があって、浦和のホームで満員の中でPGの選手と戦ってみたい気持ちもある。ジョホールになるのか浦和になるのかだが、巡り合わせは神様が導くだろうなと思う」

 それぞれのクラブに挑む想像を巡らせていた指揮官は、ともに記者会見に出席した主将のMFサラー・ユーイェンに「逆にキャプテンにどことやるのか聞いてみたい」とその場で異例の質問。するとサラーは「正直に言うと対戦したいのは日本のチーム。日本チームが相手だと観客も入ってくれて、さらに雰囲気を感じると思うし、アジアのトップレベルの日本にBGのチームがどれだけ通用するかチャレンジしたい」と述べ、指揮官の母国のクラブを挙げた。

 もし日本のクラブとの対戦が実現すれば、手倉森監督の「BGパトゥムの可能性を示したいと思うし、タイのサッカーの発展を牽引しているチームだというのを日本に知らしめて、多くのBGサポーターを作って帰りたい」という野望にも一歩近づくであろう。指揮官は次の一戦への思いを熱を込めて語った。

「タイは親日国だということで、多くの日本人がタイで仕事をしている。自分も会ったことがあるが、タイに来てからサッカーを見るようになった人もたくさんいる。そういう方がこの大会で“BG FANCLUB JAPAN”という横断幕を掲げてくれていて嬉しかった。また日本がこれからもっと世界で戦っていこうとした時にはアジアの底上げが非常に大事で、タイはその可能性がものすごくある。今度Jリーグアジアチャレンジもタイで開催されるように、タイは日本に学ぼうとしているし、日本も東南アジアに向けて戦略を持っていて、お互いは近い国だと思う。来ようと思えば来られる距離だし、石井さん(石井正忠監督)もブリーラムで働いているし、近くに感じてもらって、JリーグもTリーグもどちらのサッカーも好きになってもらえる日本人を増やしたい」

 運命の組み合わせ抽選会は20日午前11時、AFC公式Youtubeチャンネルでライブ配信される。

(取材・文 竹内達也)
●ACL2022特設ページ

TOP