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“歴史的8強”パトゥム・Uに降り注いだ埼スタの拍手…手倉森監督「スッキリ負けたことで気持ちよく前に進める」

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拍手を浴びたパトゥム・ユナイテッドの選手たち

[8.22 ACL準々決勝 浦和 4-0 パトゥム・U 埼玉]

 史上初のAFCチャンピオンズリーグ(ACL)準々決勝に辿り着いたパトゥム・ユナイテッドだったが、最後は浦和レッズに0-4の完敗に終わった。試合後、記者会見に出席した手倉森誠監督は「これまでのクラブ史上一番のビッグマッチだった。そのビッグマッチで惜しかったという負け方ではなく、スッキリ負けたことで気持ちよく前に進めるんじゃないかと思う」とすがすがしい表情で語った。

 パトゥム・Uにとって、埼玉スタジアム2002でのJクラブの対戦は目標としていた舞台。組み合わせ決定後には手倉森監督が「ホームスタジアムの浦和とあのサポーターの前でやっていたいと話をしていたので、思いが伝わった結果になってよかった」と喜び、前日会見ではMFピティワット・スクチタマクンも「憧れの埼スタでプレーできることが嬉しい。存分に自分のプレーを見せたい」と話していた。

 そして指揮官の想定どおり、この日のホームゴール裏は浦和サポーターが埋め尽くし、一部試合で解禁された大声援がスタジアムを包んだ。指揮官によると、過去に埼スタでプレーした経験があるのはタイ代表としてロシアW杯予選を経験したユーイェンと、元JリーガーのFWティーラシン・デーンダーの2選手のみ。チームは「他の選手はほとんどやっていない中、これだけのサポーターが集まり、W杯スタジアムでプレーできるということで到着した時から興奮していた」という。

 試合は前半開始直後、ロングボールからFW松尾佑介に抜け出され、そのままゴールを破られる苦しい立ち上がり。だが、VARの介入によって得点が取り消されると、同24分にもMF関根貴大にシュートを決められたが、他の選手のオフサイドによってまたもゴールが認められず、命拾いした。「VARに2度助けられ、何か起こせそうだなという雰囲気を感じた」。そうした雰囲気は果敢にパスをつなぎ、積極的にクロスを入れる選手たちの姿勢からも表れていた。

 ところが前半32分、FWダヴィド・モーベルグに強烈な左足シュートを突き刺されると、同42分にはセットプレーからDF岩波拓也に決められて2点差。ハーフタイムには「2点は浦和にとってセーフティーなリードと考えて、もう少しボールを大事に後ろで持つんじゃないかと思った」という想定で3-4-3のカウンタースタイルに舵を切り、一時は優勢に転じたが、ゴールを奪えないまま時間が過ぎ、さらに2点を奪われて万事休すとなった。

 手倉森監督は「国際レベルの戦いだと思い知らされたのは切り替えの部分。取られた瞬間にすかさず奪いにくるところ、取った瞬間にダイレクトプレーで相手を脅かすような速さがJリーグにはある」と浦和を称え、「タイリーグは暑さがあって、奪われた瞬間に相手がゆっくりしてくれるところもある。切り替えで目まぐるしくやられると、弱点が出てしまうのが今のチームの力」と現状を見つめた。

 それでも試合後、パトゥム・Uの選手たちが浦和サポーターのほうに向かうと、健闘を称える大きな拍手が降り注いだ。「BGの選手たちが浦和のサポーターに行って挨拶したのは、いい環境の中で試合をさせてもらったことへの感謝」。そう明かした指揮官は「浦和のゴールのようなゴールをわれわれも取れるようにならないといけない。いろんなことを教えてもらった。これを財産にして、インターナショナルなところを意識しながら高めていこうという話をした」とさらなるレベルアップを誓い、「あとは浦和にACLのタイトルを取ってもらえるように頑張ってほしい」とスタジアムを後にした。

(取材・文 竹内達也)
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