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ACLと共に成長遂げた浦和MF大久保智明、最後はフル出場でアジア制覇「泣きそうになったけど、やっと終わったと…」

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浦和レッズMF大久保智明

[5.6 ACL決勝 浦和 1-0 アルヒラル 埼玉]

 アジアの戦いとともに成長を遂げてきた24歳が、最後の最後に90分間フル出場を果たし、栄光を掴み取った。AFCチャンピオンズリーグ(ACL)決勝第2戦アルヒラル戦の試合後、浦和レッズMF大久保智明は「決勝の舞台に立てたというのは日々成長できたからかなと思います」としみじみ語った。

 昨年4月にセントラル開催されたグループリーグでは6試合中4試合に出場するも、「納得いくものではなかったし、苦しい1か月が続いていた」という大久保。浦和との2強と目された大邱FC戦では2戦とも出番がなく、3番手のライオン・シティ・セーラーズ戦は2戦とも途中出場。先発は4番手の山東泰山戦のみと、チーム内での序列は明らかだった。

 その上、チームメートが着実に結果を残していた中、ゴールとアシストはいずれもゼロ。その流れは昨年8月の決勝トーナメントに入っても変わらず、ラウンド16ジョホール・ダルル・タクジム戦では先発入りするも前半限りで交代し、準々決勝のパトゥム・ユナイテッド戦ではベンチ外の屈辱も経験。また奮起して臨んだ準決勝の全北現代戦でも同点ゴールに絡むキックを見せるも、失点に絡んだという事実が残った。

 ところが、そうした挫折も成長への糧となった。ACL後のJ1リーグ終盤戦で出番を増やした大久保は9月以降の8試合で3アシストを記録すると、今季はマチェイ・スコルジャ監督のもとで押しも押されぬ主力に定着。左右のサイドハーフとトップ下でJ1リーグ戦に9試合連続先発し、安定したパフォーマンスで地位を築いている。

 そうして迎えた4月29日のACL決勝第1戦、大久保は決勝トーナメントで2度目の先発出場を果たすと、果敢なスルーパスで相手のミスを誘い、FW興梠慎三の同点ゴールを演出。終盤はMF早川隼平に後を託す形にはなったが、高強度下での重圧がかかる試合展開に順応する姿を見せた。

 さらに第2戦ではACLで自身初のフル出場を達成。前半36分にMFアンドレ・カリージョへのプロフェッショナルファウルでイエローカードを受けていたにもかかわらず、指揮官の信頼を受けて最後までピッチに立ち続けた。「泣きそうになったけど、やっと終わったという感じ。1週間くらいACLから頭が離れなかったので、やっと一つ区切りができたとホッとした」。試合後の言葉からはアジアの大舞台を戦う重圧の大きさを感じさせた。

 もっとも大久保にとって、国際大会での経験は達成感よりも、今後への課題を残したようだ。「ACL決勝の舞台で2試合プレーできたことは自信につながる」と充実感をのぞかせつつも、「技術的にどうこうというよりメンタル的に成長していくのがこれから(のテーマ)なので、この舞台を経験できたのは大きなきっかけになる」と先を見据えた。

 その姿勢は一つひとつのプレーに関しても同じだ。

 この日の後半25分すぎ、右からのカットインシュートを外した場面と向き合った大久保は「カウンターのチャンスを決め切りたかった。ああいうところが自分の伸びしろ」と指摘。チーム全体の劣勢についても「枠内シュートが0本だったり、ボール支配率が28%だったりというところはチームとしてというより、個人として目の前の相手に負けなければもっと支配率が高められたと思う。僕自身アタッカーとしてもっともっとチャンスを作らないといけない。勝ったけどもっともっとやらないといけない」と自らに矢印を向けた。

 そんな大久保にとって何より大きいのは、この日の勝利で来季のACLプレーオフとクラブW杯の出場権を獲得し、さらに成長するための舞台が広がったことだ。

「浦和はACLを獲り続けないといけないと思っている」。力強く先を見据えた24歳はクラブW杯に向けても「(クラブW杯は)世界と戦えるというのもなかなか貴重な経験。代表に選ばれれば別だけど、世界と戦うにはそれか海外移籍くらいしかない。クラブW杯は自分がどこまでできるかを試せる良い機会になる」と意欲。自らの手で勝ち取った舞台を通して、さらなる成長を遂げていく構えだ。

(取材・文 竹内達也)
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