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ハンパない論理的思考力のキャプテン。町田ユースMF樋口堅が醸し出すリーダーの資質

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FC町田ゼルビアユースを束ねるキャプテン、MF樋口堅

[7.18 高円宮杯東京1部リーグ第7節 町田ユース 2-0 駒澤大高 小野路G]

「ウチがボールを握る時間が多くて、先に良い形で先制できて、2点目を獲ったら優位に進められるという状態で2点目が獲れたので、こっちにも全体として余裕があったからこそ、最後は相手も焦ってきていたのかなと。2点差だと相手は点を獲らないといけない状況になるので、そうなったら絶対感じるプレッシャーは厳しくなってくるだろうし、最後は前でウチのビルドアップを奪って、カウンターで決めるという相手の意思が見えた状態で、自分たちがしっかりと相手を見て動かし続けられたことで、勝ちに持っていけたのかなと思います」。

 試合の感想を問われた一言目から、この完成度の高いコメントには驚くしかない。ただ、そういう言葉を発しそうな雰囲気は、ピッチ上の佇まいから既に漂っていた。FC町田ゼルビアユースのキャプテン。MF樋口堅(3年=FC町田ゼルビアジュニアユース出身)の論理的思考力、ハンパなし。

 今シーズンから、町田のアカデミーは新たな試みに着手している。その1つが明確なコンセプトの統一。竹中穣監督曰く「基本的にはこちらがボールを持って、相手が守備をしている中で何ができるか。攻守において、意図を持って、偶発的ではなくて、必然的に物事を完結させていく」こと。樋口にとっても、このトライは大いに刺激になっているという。

「チームのコンセプトとして、しっかりボールを持つこと、持って相手と勝負すること、前に、前に、だけではなくて、バックパスもあるけど、相手を順繰りに押し込んでいって、最後の局面で点を決めるという、サッカーの戦い方を学んでいる感じが僕の中では結構あって、去年とはアカデミーの陣容も変わって、僕自身も新しいものとか意見とか、違うサッカー観みたいなものを教えていただけているので、そういう新しいことを学べているのは良いことだと思います」。とにかくしっかりしている。

 ポジションは4-1-4-1の中盤アンカー。真ん中の“1”を託された理由も、自身で明確にその意図を汲んでいる。「自分は“縁の下の力持ち”だと思っているので、(栗原)元康、(義澤)将太郎とか上野(巧)、斎藤(真之介)、高橋(希歩)と、前の選手が自分のストロングを出せるように、僕はバックラインとそこを繋いで行く意識をずっと持っていて、正直自分がそういうことをやっていかないと、このチームの良さが出ないと思うので、そこに対しての責任は感じていますし、良くコーチにも言われますけど、ボランチの質によってゲームが変わるのはサッカーの鉄則だと思うので、『ミス1つできないな』と自分を奮い立たせてゲームに入っています」。

 トップチームの活動にも参加する中で、“先輩”たちの一挙手一投足からも自身の糧を得ようと、アンテナを張った。「奈良坂巧くんが今はボランチをやっているんですけど、ボランチをやっている時の声掛けがどういう意図なのかというのを、ベンチで聞いていましたね。衝撃だったのは、ヴィッセルから入ってきた安井拓也くんを練習試合で見る機会があって、外から見ていても首を振る“質”が凄くて、1回の首振りでいろいろなものが見えているなというのがプレーを見てわかるので、そういうところにプロとの差があるなとは感じます」。そこで手にした経験を、感じた基準を、ユースへと還元するつもりであることは、あえて言うまでもないだろう。

 プロになるために必要な課題を尋ねると、こう答えが返ってきた。「いま取り組んでいるのは2つあって、メンタルと”質”を向上させることです。“質”の部分は、走り込むこと、パススピードとパスの滞空時間、落とす場所、あとは認知で、やっぱり凄い選手は1回の首振りで僕が見ているものよりも多くの情報を集めていると思うので、そういうところの全体の質ですね」。

「あとは、トップチームに行って緊張したり、色々な状況がありますけど、やっぱりメンタルの部分で、どんな時でもブレない所や、戦う気持ちも必要で、少なからず自信を持ってやらないと、このピッチの中は戦えない場所だと思うので、自分にどう自信を付けてやっていくかを、ずっと意識してやっています」。

 サッカーのことも、自分のことも言語化できる、恐るべき18歳。樋口の論理的思考力、やはりハンパなし。

(取材・文 土屋雅史)

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