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上手くて、戦う選手へ変わった「今年の品田」が先制FK。FC東京U-18がビッグカード制して8強入り

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前半21分、FC東京U-18はMF品田愛斗が先制FK

[7.27 日本クラブユース選手権(U-18)ラウンド16 FC東京U-18 2-1 C大阪U-18 富士見総合グラウンド]

 第41回日本クラブユースサッカー選手権(U-18)大会は27日、決勝トーナメントの初戦に当たるラウンド16の対戦を迎えた。富士見総合グラウンドでは前回王者のFC東京U-18(関東1)と過去2度優勝のセレッソ大阪U-18(関西4)が対戦するビッグカードが実現。U-17W杯を目指す選手も多数出場した熱戦は前半にFC東京が2点を先行する流れから後半にC大阪が猛追するというデッドヒートの末、FC東京に軍配が上がることとなった。

 フットボールの原初的な魅力が詰まった情熱的な試合だった。ピッチ状態は大雨と連戦の影響で公式戦が行われるとは思えないほどの劣悪なコンディション。あちこちに水たまりができている上に起伏も生まれている。U-17日本代表MF平川怜が「インドでもここまでじゃなかった」と苦笑いを浮かべるほどの環境が試合内容を下げるのではないか。そんな懸念の中でのキックオフとなった。

 予想どおり、双方がいつも以上に「蹴る」判断を下す回数が増える流れにはなった。ただ、前半はFC東京がそんな中でもDFが少しボールを持ち出す、ボランチが意図のあるパスを散らすといったディテールの部分で違いを出し、並のチームならば「蹴る」以外の選択肢がなさそうな環境下で、ボールを動かす時間帯をわずかでも作っていくことで試合の流れを引き寄せる。そして、前半21分にゴール正面で得たFKがそんな試合の流れを強く加速させることとなった。

 ボール脇に立った品田愛斗が狙ったのは壁の横。「いい状況でのFKだったので、あらかじめ蹴るコースは決めて蹴った」と、針の穴を通すようなコントロールから、壁に当たらず、GKの手も届かないコースへと蹴り込んで、ゴールネットを揺らしてみせた。元よりキックの精度には定評のある選手だが、最初のビッグチャンスを見事に沈める勝負強さを見せ付けてゴールネットを揺らした。

 ただ、この日の品田が際立ったのはこうした「元々得意なプレー」だけではない。“上手いだけ”の選手ならば絶対に通用しないピッチ状態の中で体を張って戦い、無理に技術を発揮してつなごうとはせず、時には割り切ってボールを捨てるようなプレーも選んだ。フォア・ザ・チームのスピリットはFC東京にとって欠かせないモノだが、まさにその点を疑問視されて1、2年生の間はなかなか起用されなかった選手とは思えぬパフォーマンスである。「そこがずっと課題だった」と本人が過去形で語ったとおり、もう彼を戦えない選手とは言わないだろう。

「今年になってからの彼は、ずっとこんな感じになってきている。センスにプラスアルファして泥臭さを出せるようになってきた」と佐藤監督も、その成長に目を細めるほど。実は、あるFC東京の関係者はピッチコンディションを考えて佐藤監督は品田を先発から外し、泥臭く戦える小林真鷹を起用するのではないかと予想していた。だが、その起用は行われなかった。指揮官の「今年の品田」に対する信頼がいかに濃いものかを示す一事だろう。

 この1点で勢いを得たFC東京は、35分にもピッチ状態を思うと信じられないような電撃的なパスワークからC大阪守備陣を攻略。最後は「この1か月でさらに良くなっている」(佐藤監督)FW原大智が粘り強く押し込んで、2-0とリードを広げてみせた。

 ハーフタイムを挟んだ後半からはC大阪の猛攻が始まることとなったが、ここはDF篠原新汰長谷川光基らが体を張った防衛戦を展開。25分にC大阪のU-18日本代表MF中島元彦にこじ開けるようなゴールを決められて1点差に迫られ、その後も連続的なクロスボールとロングボールを蹴り、そのセカンドボールを回収し続けるC大阪のタフなサッカーに追い詰められていったが、何とか水際で耐え切った。

「手に汗握る、いいゲームができた」(佐藤監督)

 強さ、上手さ、泥臭さを兼ね備えた若き青赤軍団は、粘り強く戦うC大阪の猛追を振り切って準々決勝進出。連覇に向かう大きな関門の一つをくぐり抜けた。

(取材・文 川端暁彦)
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