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決勝に集結した『8+5』 名古屋U-18、3年生全員で迎えたクラセン初制覇

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GK三井大輝(上列左)、DF武井隆之介(同中央)、MF松山竜也(同右)、MF村上千歩(下列左)、DF舌古圭佑(同右)

[7.31 日本クラブユース選手権U-18大会決勝 鳥栖U-18 1-3 名古屋U-18 味フィ西]

 準決勝の京都U-18戦に勝利した後、名古屋グランパスU-18のDF牛澤健(3年)はチームの一体感を勝因に挙げた。「この大会に来られていない3年生が多いので、残っている人たちのぶんまで意識を高く持ってやってきた。思いが強いから勝てた」。そうして迎えた決勝戦では、3年生13人全員で歓喜の瞬間を迎えた。

 多くの名選手を輩出してきた名古屋U-18だが、日本クラブユース選手権での決勝進出は史上初の偉業。もっとも最高学年の選手たちにとっては、クラブの歴史と同等かそれ以上に重要な意味合いがあった。決勝ではこれまで苦楽を共にしてきた3年生全員がようやく会場に揃うことになっていたからだ。

 GK三井大輝、DF舌古圭佑、MF村上千歩、DF武井隆之介、MF松山竜也——。5人はいずれも3年生。それぞれ負傷によって今大会の登録メンバーに入ることができず、チームが夏の大舞台で快進撃を続ける最中、地元でリハビリやトレーニングを続けていた選手たちだ。

 U-18日本代表の三井を筆頭に、最上級生の離脱による戦力ダウンは計り知れない。一方、彼らは11日間7試合の過酷なカップ戦をくぐり抜ける結束の象徴となっていた。クラブが過去3度も屈していた準決勝、先発選手たちは集合写真で5人のユニフォームを着用。鬼門に向けて士気を高め、決勝進出の機運をたぐり寄せていた。

 そんな思いは5人にも届いていた。「名古屋にいるメンバーも速報で結果を気にしていて、みんなも『ここにいるメンバーだけじゃない』と思って戦ってくれていた」(武井)。「シンプルにうれしい。出ている選手がやってくれて、リハビリ頑張ろうと思えたし、ピッチに立ちたいとあらためて思えた」(松山)。

 また代役出場の選手たちがことごとく結果を出した。準決勝で得点王争いに食い込む大会4ゴール目を挙げたFW武内翠寿(2年)は村上とレギュラー争いを繰り広げていたストライカー。“先輩”は「この大会の前から活躍していて、実は開幕の時から危機感を感じていた。彼は僕にないものを持っている」と太鼓判を押す。

 さらに度重なるビッグセーブで躍進に貢献したGK東ジョン(2年)も三井の負傷により台頭してきた選手だった。「怪我の状況的にはすぐに復帰できそうにないけど、彼の様子を見て燃えてきているし、もっとやらないといけないという思い」と、こちらも“先輩”の刺激となっているようだ。

 そんな5人は決勝戦で初めてチームに合流。自身のユニフォームを着て西が丘のゴール裏で応援し、ピッチに立った8人と同じ空間で歓喜の瞬間を迎えた。また表彰式の後には主催者の厚意でフィールドにも降り立ち、全員で優勝カップを掲げて喜びを爆発させていた。

「こういう形でしか携われなかったけど、みんなに感謝したい。負ける気はしなかったし、勝ってくれると信じていた。このチームはみんな元気よくて、ハードワークができるチーム。やってくれると思っていた」(舌古)。ピッチで戦った8人と外から見守った5人、3年生全員でたどり着いたクラブユースの頂点だった。

(取材・文 竹内達也)
●第43回日本クラブユースサッカー選手権(U-18)大会

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