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“代表GK”負傷の名古屋U-18、2年生GK東ジョンが初V牽引! 目指すのは「異次元のプレー」

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サポーターの声援に応える名古屋U-18のGK東ジョン(2年)

[7.31 日本クラブユース選手権U-18大会決勝 鳥栖U-18 1-3 名古屋U-18 味フィ西]

 世代別代表で日の丸を背負う絶対的守護神が負傷で長期離脱。普通のチームであれば危機的な状況だが、名古屋グランパスU-18にはGK東ジョン(2年)がいた。「自分しかいないので、先頭に立ってやっていかないといけない」。代役の『16』は先輩『1』の思いも背負い、過酷な11日間7試合を戦い抜いていた。

 今季の名古屋U-18で正ゴールキーパーを担っていたGK三井大輝(3年)は今年6月、U-18日本代表の活動中に負傷。いまもなお歩行にも支障をきたす状態が続いており、復帰まではしばらくかかりそうな見込みだ。

 そこでチームは夏の大舞台に向け、ニュージーランドと日本にルーツを持つ東に白羽の矢を立てた。185cm、79kgの体躯は迫力十分。その能力も折り紙付きで、先輩の三井も「日本人離れした反応と止める力、ボールを怖がらない姿勢がすごい。もちろん僕には彼にない強みがあるけど、彼にも僕にない強みがある」と太鼓判を押す。

 今大会ではそんな期待の17歳がブレイクの時を迎えた。グループリーグ開幕節の大宮U-18戦を被シュート10本で無失点に抑えると、その後も複数失点をせずに連戦を消化。サイドバックが攻撃的な名古屋U-18において、優勢でも致命的なシュートを喫する場面は少なくないが、そのたびにビッグセーブで救ってきた。

「グランパスは攻撃的なサッカーなので、カウンターを食らうことは多い。でも攻撃陣がしっかり点を取ってくれるので、こっちは相手の攻撃を遅らせて粘り強く対応することを意識していた。結構きわどいシュートも多いけど、そういうところを止めていかないと上には行けないと思っている」。

 決勝の鳥栖U-18戦でも相手の時間帯となった後半14分、FW兒玉澪王斗(2年)の決定的ヘッドを驚異的な反応速度で阻止。これで流れを完全に引き戻し、「相手のFWもうまくなってくる中で、自分も長所を相手に負けないものにしないといけない。そういう意味でビッグセーブを見せられて良かった」と笑顔を見せた。

 そのの背中を押していたのが三井の存在だ。「先輩が怪我をして自分しかいないという中で、自分がチームの先頭に立ってやっていかないといけない、長所を出してチームを引っ張っていかないといけないと思っていた」。試合前、試合後の記念撮影では『1』のユニフォームを持って微笑む姿があった。

 そんな光景を見た三井も「僕のためにも…という気持ちで臨んでくれて、力になると言ってくれた。良いライバルとしてやれているし、彼のおかげでここまで来れた」と感慨深げ。また「彼の様子を見て燃えてきたし、もっとやらないといけないという思いになった」と刺激を受けたようだ。

 そうした東が参考にしている選手はバイエルンのGKマヌエル・ノイアー。「他の人からは『異次元のプレー』って思われるような、普通は『入った!』って思うようなシュートをすごい反応で止めているのをみて、自分もこうなりたいと思うようになった。他のキーパーではなれないような選手になりたい」と憧れを語る。

 また、名古屋グランパスと言えば日本人GKの歴史で『異次元』というほかないGK楢崎正剛氏が長年所属したクラブ。現役を引退したいまはクラブスペシャルフェローとして在籍しているが、引退後はユースの指導などにも顔を出しているといい、準決勝と決勝が行われた味の素フィールド西が丘にも訪れていた。

「楢崎さんが練習に来てくれることが多くなって、とても刺激を受けている。日本を背負って立った楢崎さんがコーチとして来てくれて、細かいプレーまで教えてくれる。でもやっぱり気持ちの部分。僕が相手のシュートを顔面で受けた時、『そういうプレーが大事なんだ』って言われて、とても刺激を受けました」。

 そんな東の目標も日本代表。ならば、もし一つ上の先輩が復帰してきたとしてもポジションを譲るわけにはいかない。「高いレベルの先輩がいるのはチャンスだし、質の高いレギュラー争いをすれば自分のレベルも上がる。負けるつもりもないし、2人で日本一のレギュラー争いをしたい」。飛躍の大会を終えた17歳に新たな目標ができた。

(取材・文 竹内達也)
●第43回日本クラブユースサッカー選手権(U-18)大会

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