beacon

【クラセンの思い出 vol.1 兒玉澪王斗(SC相模原)】「あの時の喜びは今でも忘れられなくて、みんなの笑顔は頭の中に深く刻まれています」

このエントリーをはてなブックマークに追加

 ゲキサカでは7月25日に開幕する、第45回日本クラブユースサッカー選手権(U-18)大会に向けて、過去の大会で日本一を経験した選手たちにインタビューを敢行!『クラセンの思い出』と題し、当時の大会にまつわるさまざまな思い出を語っていただきます。第1回はSC相模原のFW兒玉澪王斗選手。2020年大会でサガン鳥栖U-18のキャプテンとして優勝カップを掲げた兒玉選手に、お話を伺いました。

――まず、“クラセン”というとどういうイメージを持っていますか?

「自分たちのようなクラブチームの選手にとっては、高校の部活の人たちにとっての高校選手権と同じくらい大きな大会ですし、見せ場である大会だと思います」

――去年はイレギュラーな年末開催でしたが、例年は夏休みにあるということも含めて、特別な大会ではありますか?

「そうですね。暑い中の試合で、キツい中でもどれだけ戦えるかというところが、それぞれのチームで見られる大会でもありますし、そこで日本一を獲ることができたら、その後も自信を持って戦えるようになっていく大会でしたね」

――去年はいろいろな大会がなくなって、昇格した高円宮杯プレミアリーグも開催されず、その中で最後にあったのがクラセンでした。そういう意味で去年の大会に懸ける想いはいかがでしたか?

「去年もそうですし、今もそうですけど、こういうコロナ禍という状況の中で、サッカーができている喜びを感じましたし、去年だったら自分たちは最終学年の3年生になった時に、今までやってきた高校生活の集大成として、『これまでこんなことをやってきたんだよ』ということを披露する舞台でした。こういうコロナ禍の状況で、一致団結して戦わないと絶対に勝ち抜くことは厳しい中で、3年生は力を出し切ることしか頭になかったので、自分たちにとっては思い出づくりというよりは、本当に後輩に『オレたち3年生はこんなことをやってきたんだよ』『これだけやれば自分たちでも日本一が獲れたんやから』みたいなことを残したいと思っていました」

――やっぱり大会が開催されたこと自体が凄く良かったですよね。

「そうですね。個人的にも嬉しかったですし、その前の年に準優勝という悔しい想いをしていたので、どうしても優勝したい想いも強かったですし、そういう部分では開催されて良かったです」

――改めて去年のクラブユース選手権自体の印象はいかがでしたか?

「やっぱりいつもと違うクラブユース選手権で、今までは夏の暑い中で戦ってきましたけど、冬の寒い中で戦ったので、体力的には全然問題なかったです。ただ、そこで問われたのが技術の質だったり、チームの総力というか、全員の力が必要な大会でしたし、一発トーナメントなのでヒヤヒヤしながら楽しめた大会でした」

――一番印象に残っているのはどの試合でしたか?

「自分の中では2回戦のジェフユナイテッド千葉U-18戦です。一緒にトップに上がった相良(竜之介)がケガをして、『アイツのためにも勝たないといけない』と思いましたし、あそこでチームみんなの力を合わせることができたからこそ勝てたので、あの試合が一番印象的でした」

――ご自身でゴールも決めた試合ですね。

「ゴールも覚えていますけど、勝った時の喜びの方が大きかったですね」

――その次の準々決勝、横浜FCユース戦ではPK戦の1人目で失敗するということもありましたね。

「前半に自分でゴールも決めて、『ああ、これは勝ったかな』という想いがあって、甘さが出た試合でした。PKを外した時に、なぜか自分は泣くことができなかったんですよね。『まあ大丈夫でしょ』という想いもあって、涙は出なかったですけど、あの試合も思い出に残っています。準決勝や決勝よりも千葉戦と横浜FC戦がキツかったですし、チームが一丸となって戦えた試合かなと思います」

――1人目での失敗で良かったですよね(笑)

「そうですね(笑)。いつも僕は1人目で蹴っていて、外すことはなかったので、試合が終わった後に聞いたら誰もが外さないと思っていたらしくて、『オマエ、わざとやろ』って監督に言われて、一緒に笑いました(笑)。本当に去年のチームも今のチームも、サガン鳥栖U-18は監督も含めてみんな本当に仲が良いですし、やる時はやるというメリハリがあって、オフの時はみんなで笑えて楽しかったですし、あの時は本当に最高の雰囲気でしたね」

――決勝ではケガの影響からスイムキャップを頭にかぶってプレーしていました。

「あれしか印象にないです(笑)。トップチームに上がってからも『アレ、何で付けてないの?』ってイジられましたし、なかなかあれはインパクトを残しましたよね。あれで優勝カップを上げてしまったので、『外せば良かったな』と今になって後悔しています(笑)」

――鹿児島からプロになるために、日本一になるために鳥栖に行ったのだと思いますが、日本一になれたこと自体は今から振り返るといかがですか?

「自分たちが2年生の時に準優勝して、あそこまで行けたということは、少し勇気にもなりましたし、『決勝までは勝ち進むことができるだろう』という自信もありました。そこでみんな“よそ行き”にならずに、一戦一戦戦えたので、日本一になれたのかなと思いますし。監督からも『これは優勝できるぞ』と言われていたので、しっかり練習して、気を引き締めて挑んだ大会でしたね」

――U-15から昇格してきた選手たちは、中学3年生の時もFC東京U-15深川と日本一を懸けて戦っていたので、決勝は因縁の試合でしたね。

「自分は外部から入ってきたんですけど、僕らの代のメンバーは二冠を獲ったメンバーだったので、アイツらなりにプレッシャーはあったと思います。僕は別にそんなにプレッシャーもなかったので(笑)。自分は中学時代の鹿児島のチームでプレーしていた時に、クラセンでFC東京U-15深川と対戦したことがあって、1-2で負けていたので、自分としても負けたくない相手だったんですよね。だから、チームメイトにとっても絶対に負けられない試合で、僕も絶対にリベンジしたい想いがあったので、優勝できて良かったなと思います」

――スイムキャップはかぶっていたとはいえ(笑)、人生で日本一の優勝カップを掲げるってなかなかできないことですけど、そのことに関してはいかがでしたか?

「僕も初めて優勝カップを掲げましたし、あの時の喜びは今でも忘れられなくて、みんなの笑顔は頭の中に深く刻まれています。本当にあのカップを掲げるまでも、それまでにいろいろなことをしてきて、チームとしても個人としても挫折もありましたし、そういう部分ではいろいろな意味で重い優勝カップでしたね」

――コロナ禍だったのでなかなかないとは思いますが、ピッチ外で覚えていることはありますか?

「中日も少なかったですし、連戦が続く中で、毎日自分たちは夜の食後に自主的に選手たちでミーティングをしていました。食事会場でしっかりマスクをして、感染対策を取った中で、『今日は勝ったけど、次も勝つためにもっとやらなくてはいけないことはあるか?』ということだったり、良かった点も含めてみんなで話し合えたので、それは次の試合で改善できる部分もありました。それぞれ自分たちが話すだけではなくて、みんなに話してもらったりもしましたし、そういう部分ではいろいろな選手の声が聞けて、良いミーティングができたのは印象的でしたね」

――改めてサガン鳥栖U-18での3年間はどういう時間だったでしょうか?

「自分は高校に入ってすぐに挫折したこともありましたけど、親元を離れてきていたので、そういう情けない姿を親に見せるのは嫌でしたし、頑張っている姿を家族も含めて今までお世話になった方々に見せたいという気持ちが強くあったからこそ、高校3年間で充実した時間を過ごせたかなと思います」

――6月からSC相模原へ移籍してきましたが、ご自身の現状をどう捉えていますか?

「やっぱりプロになっても、試合に出ないと自分の価値を上げることはできないと思いますし、そういう中で自分は若い時から挑戦したいと思っていたので、知らないところに行くのは不安だなという気持ちもちょっとはあったんですけど、それは前向きに捉えて、経験としてそういうところに飛び込んでいきたいという想いもありました。でも、もっと成長しないと、J1に戻っても通用するかと言われたら絶対に通用しないと思いますし、日々の試合や練習で努力を積み重ねていって、もっと成長できるように頑張っていきたいと思っています。

――相模原のデビュー戦になった秋田戦のゴールは良いゴールでしたね!

「ありがとうございます!自分的にも決められるとは思っていなかったですし、あの前から足は攣っていたんですよ。だから、『そろそろ倒れ込んで交代させてもらおうかな』と思っていて(笑)。『飲水タイムになるし、ここまで走って頑張ろう』と思っていたら、良いボールが来て、ゴールに入れたという感じでしたけど、本当に決められて良かったです」

――今シーズンのここからはどういう時間にしたいですか?

「やっぱりチームがあっての自分なので、まずはチームの目標であるJ2残留を絶対にすることと、個人としては仕掛けることであったり、ハードワークで見ている人を魅了することだったり、得点にもこだわっていきたいなという想いは強くあります」

FW兒玉澪王斗【SC相模原】 
2002年4月24日生まれ(19歳)
鹿児島県のF.Cuore U-15から、サガン鳥栖U-18へ入団。2年時のクラブユース選手権では全国準優勝を経験。3年時はキャプテンとして同大会でチームを日本一へ導く。今シーズンより鳥栖のトップチームへ昇格し、6月にSC相模原へ育成型期限付き移籍で加入。J2第20節の秋田戦ではJリーグ初ゴールを記録した。

(取材・文 土屋雅史)
▼関連リンク
第45回日本クラブユースサッカー選手権(U-18)大会特集

TOP