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昨年度のファイナルと同一カードは、チームの一体感に自信を持つ鳥栖U-18がウノゼロ勝利!

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サガン鳥栖U-18はFW大里皇馬(16番)のゴールにチームメイトも笑顔

[7.25 日本クラブユース選手権U-18大会A組第1節 鳥栖U-18 1-0 FC東京U-18 前橋フットボールセンターA]

 いきなり実現した昨年度のファイナルと同一カード。意識しない方が難しい試合を制した鳥栖U-18の田中智宗監督は、「去年のファイナルのカードとは言われますけど、FC東京さんは毎年強いチームなので、やっぱりそれほど意識しないようにしても、FC東京さんとやるというだけで僕らとしては気持ちが引き締まりますし、この8時45分という早いキックオフ時間の試合もやったことがないので、どうなるのかなと思っていましたけど、この35分ハーフという中で本当に力を出し切ってくれた選手たちを、称えてあげたいゲームだなと思います」と評価を口にする。第45回日本クラブユース選手権(U-18)大会は25日、グループステージが開幕。サガン鳥栖U-18(九州1)とFC東京U-18(関東9)が対戦したビッグマッチは、前半20分にFW大里皇馬(2年)が決勝ゴールを叩き出し、鳥栖U-18が1-0で勝ち切っている。

 立ち上がりから勢いを打ち出したのはディフェンディングチャンピオン。5分にはGK大石崇太(3年)のロングキックに、FW小西春輝(3年)が抜け出すと、左足でフィニッシュ。ここはヒットせずにFC東京U-18のGK小林将天(1年)にキャッチされるも、14分にはルーキーのMF林奏太朗(1年)とドイスボランチを組むMF坂井駿也(2年)が、粘り強いキープからゴール右へ外れるミドル。18分には右サイドで得たCKを、既に今シーズンのJ1で20試合に出場しているDF中野伸哉(3年)が蹴り込み、シュートには至らなかったものの、鳥栖U-18が攻勢を強める。

 すると、スコアが動いたのは20分。左サイドのスローインから、MF増崎康清(1年)のリターンを受けたキャプテンの左SB安藤寿岐(3年)は、「目の前にディフェンダーがいたんですけど、右側から上げたら良い所に行くなというイメージがあったので、狙い通りかなと思います」というクロスをニアサイドへ。飛び込んだ大里のヘディングが、鮮やかにゴールネットを揺らす。「狙っていたような形ができたので、良かったとは思います」(田中監督)「試合前からクロスをどんどん入れていこうという話はしていたので、早いタイミングで入れて、良い形で得点に繋がって良かったです」(安藤)。鳥栖U-18が1点をリードして、最初の35分間は終了した。

 なかなか良い形のアタックを繰り出せず、ビハインドを追い掛ける展開となったFC東京U-18も、後半2分に決定機。FW野澤零温(3年)が果敢なプレスでボールを奪い、MF宮下菖悟(3年)、MF俵積田晃太(2年)を経由して、野澤が丁寧に右クロス。3列目から走り込んだMF加藤大地(3年)はシュートを打ち切れず、同点とはいかなかったが、ようやく“らしい”形を創出する。

 5分もFC東京。中央右寄り、ゴールまで約25mの距離から左SB大迫蒼人(3年)が直接狙ったFKは、クロスバーの上へ。そして、8分には鳥栖にアクシデント。右サイドで躍動していたMF楢原慶輝(2年)が相手との接触で転倒すると、肩を負傷してプレー続行が不可能に。MF鬼木健太(2年)との交代を余儀なくされてしまう。

 続く青赤のラッシュ。10分にも決定的なチャンス。加藤のスルーパスに野澤が抜け出し独走。GKとの1対1を迎えるも、「ずっと自分はシュートストップの前に止まるということができていなくて、ちょっとそこを意識して飛び出したので、上手く反応できて止められて、自分としては良かったかなと思います」と振り返る大石がビッグセーブ。守護神の意地を見せ付ける。

 後半のFC東京U-18は、セカンドの回収率が向上。ボランチのMF梶浦勇輝(3年)と加藤がボールを拾い、配球したことで、両サイドからのアタックに推進力が出て、チャンスの数も増加。12分にもMF谷村峻(3年)のパスから、大迫が丁寧なクロス。ファーで宮下が折り返すも、安定感の高いDF岡英輝(3年)の交代から、後半はCBにスライドした安藤がクリア。「もう1人のセンターバックの(戸田)峻平も身体を張ってやってくれていたので、2人のセンターバックがチームを支えられるようなプレーをしていこうという話をしていました」(安藤)。鳥栖U-18も最後の局面はやらせない。

 終盤はFC東京U-18も何とか前へとボールを運ぶが、DF堺屋佳介(1年)、MF増永龍平(3年)、FW木戸晴之輔(2年)と相次いで交代カードを切り、全体の強度を維持し続けた鳥栖U-18のディフェンス網は最後まで破れず。「練習から強度高く走っていますし、それをウチは誰一人欠けることなく、全員ができるので、こういうゲームをモノにできるかなと思います」と安藤も胸を張った鳥栖U-18が、半年前のファイナルと同様に1点差ゲームをモノにして、貴重な初戦の勝ち点3を手にしてみせた。

 なお、試合後には鳥栖U-18のベンチに、FC東京U-18の中村忠監督と楢原と接触してしまった選手が謝罪に訪れていた。不可抗力ではあったが、選手は真摯に謝罪の言葉を口にし、鳥栖U-18のスタッフも温かくそれを受け入れていた。痛がり方やその後の処置から軽傷ではないことも予想されるが、楢原の無事と1日も早い復帰を祈りたい。

「ウチはそんなに強いチームではないですから」と田中監督が話せば、「去年は決勝でFC東京さんとやらせてもらって、勝って優勝したんですけど、去年優勝しているからというのは一切なくて、自分たちは常にチャレンジャーという気持ちを持って試合に臨んでいます」と安藤も口にしたように、鳥栖U-18はいつでもチャレンジャーの姿勢を崩さない。

加えて、ベンチメンバーも含めたチームの一体感は抜群。この日もゴールを決めた大里はベンチへ駆け寄ると、そこには満面の笑みで待ち構えるチームメイトの姿が。「鳥栖はみんな選手同士の仲が良くて、去年も良かったですけど、今年はもっと仲が良いと思うので、そこはたぶんチームの特徴かなと思います」という大石の言葉にもうなずける。

「今日の試合の中で相手との違いを出せていたかと言えばそうでもないですし、これが今の自分たちの力だと思いますけど、何よりも勝っていろいろなことを反省できるのが一番いいと思うので、そういう意味では1戦目より2戦目、2戦目より3戦目と良くなっていって、できればその後にももっとゲームがたくさんできるようにして、その中で成長していければなとは感じています」(田中監督)。謙虚な姿勢と、チームの一体感と、圧倒的なプレー強度と。連覇に向けて鳥栖U-18、好発進。

(取材・文 土屋雅史)
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