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0-3からの逆襲。浦和ユースは加速度的な成長を披露し、G大阪ユースも2-0で撃破!

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先制弾のMF早川隼平(39番)と池田伸康監督が歓喜の抱擁!

[7.29 日本クラブユースサッカー選手権U-18大会ラウンド16 G大阪ユース 0-2 浦和ユース アースケア敷島サッカー・ラグビー場]

 高校生の成長するタイミングは、まさにそれぞれだ。時間を掛ければいいわけでもない。何かを働き掛ければいいわけでもない。ただ、来たるべき時が来たら、加速度的に成長していってしまう光景は、今までに幾度となく目にしてきた。

「ガンバさんのサッカーの質をどう受け入れてやるかということで、選手たちも苦しいところはあると思うので、その中で『我慢強くサッカーができれば、結果が付いてくる』という話はしました。基本的にはもう練習から主体的に取り組むことで、こうだからこうと選手たちが感じたものが大事で、今日は苦しい時間帯にも選手たちからいろいろな発信が聞こえたので、成長を感じましたね」(浦和レッズユース・池田伸康監督)。

 29日、第45回日本クラブユース選手権(U-18)大会のラウンド16で、ガンバ大阪ユース(関西3)と浦和レッズユース(関東4)が激突。後半16分にMF早川隼平(1年)、32分にFW伊澤壮平(3年)がゴールを奪った浦和ユースが、2-0で勝利。3年ぶりとなるベスト8へと勝ち上がった。

 試合の構図は立ち上がりから明確になる。「ガンバは10番の中村選手を中心に、やっぱり個で剥がす能力や後ろで回す技術が高くて、自分たちが引く時間の方が長かったですね」と浦和ユースのキャプテンを務めるDF大野海翔(3年)が話したように、基本的にはG大阪ユースがボールを動かしながら、前進するポイントを探っていく。

 とりわけ、キャプテンマークを巻くMF中村仁郎(3年)が右寄りに位置しながら、ボールを引き出すとチャンス到来。前半9分にはその中村が右からクロス。走り込んだFW南野遥海(2年)のシュートは枠を越えるも、きっちりフィニッシュまで。24分にもMF三木仁太(3年)がFKをクイックで始めると、中村が右からカットインしながら枠へ収めたシュートは、浦和ユースの守護神・GK川崎淳(3年)がかき出したが、10番のレフティが惜しいシーンを作り出す。

 ただ、「抜かれても最後のシュートの所では身体で行くというのは、全員で意識できていたのかなと思います」と大野が口にした“意識”で、浦和ユース守備陣は奮闘。右からDF稲垣篤志(2年)、DF茂木柊哉(3年)、DF土橋公哉(2年)、大野で組んだ4バックを中心に、局面での激しさでG大阪に対抗。スコアレスのまま、前半の40分間を終える。

 後半も緊張感の続く展開を動かしたのは、1年生レフティの“右足”。16分。G大阪のビルドアップでバックパスが短くなると、「アンカーの人が後ろを見ずにパスを出すのは、前半からずっと狙いたいなと感じていました」という早川は全速力でかっさらい、そのまま利き足とは逆の右足を強振。ボールはGKを弾いて、ゴールネットへ転がり込む。

「プレミアではチームも勝てていなかったですし、自分自身も得点もアシストもない状況で焦りもあって、この大会のグループステージもノーゴールノーアシストで来ていましたけど、このガンバ戦では自分も常にゴールを狙っていたので、点を獲れたのが本当に嬉しいです」と笑顔を見せた早川の今シーズン公式戦初ゴール。浦和ユースが1点のアドバンテージを手にした。

 続いたのは悩めるストライカー。32分。ルーズボールにMF萩元雅樹(2年)とMF堀内陽太(2年)が必死に食らい付き、MF戸田大翔(3年)が裏へ蹴り出すと、ここに走ったのは伊澤。「中途半端なボールだったので、『もしかしたらこぼれるかな』と思って反応しました」というルーズボールを収め、すかさず左足を振り抜くと、軌道はゴールネットへ突き刺さる。

「アレは練習後にノブさん(池田監督)と自主練していた形だったので、練習の成果が出たと思います。メチャメチャ嬉しかったですね。中学の時も全国大会では点が獲れなかったので、その想いもあったかもしれないです。人生で全国初ゴールです!」。伊澤の今大会初ゴールが飛び出し、浦和ユースのリードは2点に変わる。

 負けられないG大阪ユースもアタッカーの交代カードを切りながら、必死に反撃を試みるも、34分に左サイドから切れ込んだFW坂本一彩(3年)のシュートは、大野が身体を投げ出し、川崎もファインセーブで応酬。40+3分にも中村の右CKから、DF平川拓斗(3年)が合わせたヘディングは枠を越えてしまい、万事休す。「苦しい時間が長かったと思うんですけど、チーム全員でハードワークして、そこを乗り切れたから勝てたのかなと思います」と伊澤も胸を張った浦和ユースが、2-0で勝利を手繰り寄せ、準々決勝へと勝ち上がった。

 浦和ユースにとって、この大会の“分岐点”はいきなりやってきた。プレミアリーグEASTでの8戦未勝利という状況を経て、迎えた初戦。カマタマーレ讃岐U-18を相手にしたゲームは、0-3でまさかの完敗。信じ難いような現実を突き付けられてしまう。

「実際プレミアでも勝てていないですけど、それ以上にショックが大きかった感じですね」(大野)「プレミアでも勝てなくて、自分たちは結構モヤモヤしていたところはあったんですけど、今大会も1試合目でひどい試合をしてしまって……」(伊澤)。チームは崩壊しかかっていた。

 池田監督が、動く。「ノブさんに熱いミーティングをやってもらって、そこでチームとしてもっとやろうという意識が高くなりました。アルゼンチン対コロンビアの試合を見せてもらって、結構昔の試合なんですけど、球際とか切り替えの激しい試合を見せられて、『こういう試合がサッカーの試合なんだ』と教えてもらいました」と伊澤が話せば、「足元をボールと一緒に持っていくぐらいの映像で(笑)。でも、やっぱり球際だったり、切り替えの速さだったりは意識で変えられると思うんですよね。そういう意識の差で全然違うということは感じました」と大野も言葉を引き取る。

 追い込まれた選手たちは、ここから真価を発揮する。アルビレックス新潟U-18に3-0で快勝を収めると、勝った方がグループステージ突破というベガルタ仙台ユースとの決戦にも、2-0できっちり勝利。そして、この日も2-0で見事に無失点勝利。3戦連続無失点という、これまでのチームを考えればでき過ぎとも思えるような結果で、準々決勝まで勝ち上がってきた。

「あの初戦で引き分けか勝っていたら、逆にこのラウンド16までは上がれなかったのかなと。『もう勝たなければいけないんだよ』というところで、選手たちが成長することができましたし、いろいろな選手を使えたことでチームの一体感も出てきています。選手たちがやらなくてはいけないことをしっかり共有して、同じ方向を向けているのが、手に取るように見ていて感じますね」。池田監督もこの短期間での成長を実感している。

 成長は、自信を促進する。「選手は『黙っとけ』って思っているんじゃないですか(笑)。でも、逆にそれが嬉しかったりしますね。言われたことをやるんじゃなくて、『いやいや、ノブさん黙っとけよ』というような気持ちが逆に今日は見られたので、面白かったなと思います」(池田監督)。

 流れは間違いなく来ていると言っていい。だが、「3連勝していて、しかも無失点ということで、結構雰囲気は良いと思うんですけど、そこで調子に乗らないように、謙虚にできたらなと思います」と大野は気を引き締める。自分たちもハッキリと意識するような“急成長”を遂げている浦和ユースの反発力が、この大会を席巻しつつある。

(取材・文 土屋雅史)
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