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[MOM3532]浦和ユースFW伊澤壮平(3年)_勝利のために100パーセントでプレーする男が、とうとう今大会初ゴール!

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FW伊澤壮平(9番)の今大会初ゴールにみんなが笑顔!

[高校サッカー・マン・オブ・ザ・マッチ]
[7.29 日本クラブユースサッカー選手権U-18大会ラウンド16 G大阪ユース 0-2 浦和ユース アースケア敷島サッカー・ラグビー場]

 焦りはなかったという。0-3で負けても、なかなか自身のゴールが生まれなくても、やることは変わらない。勝利のために100パーセントでプレーする。いつだって、そうやって前に進んできた。「もちろん悔しい想いもあったんですけど、ここ2試合はチームとしてかなり良い試合ができていたので、ノーゴールはそんなに気にしてはいなかったですね。『勝っていけば、いつかは獲れるだろう』と思っていました」。ストライカー特有の楽観的な思考が、その時を引き寄せる。浦和レッズユース屈指のハードワーカー。FW伊澤壮平(3年=浦和レッズジュニアユース出身)に、とうとうゴールの女神が微笑んだ。

 初戦のカマタマーレ讃岐U-18戦は0-3の完敗。プレミアでも未勝利が続いていた流れに抗えないまま、沈みかかっていたチームに、指揮官が映像を用いて“サッカーの意味”を問い掛けた。その時を伊澤はこう振り返る。

「ノブさん(池田監督)に熱いミーティングをやってもらって、そこでチームとしてもっとやろうという意識が高くなりました。アルゼンチン対コロンビアの試合を見せてもらって、結構昔の試合なんですけど、球際とか切り替えの激しい試合を見せられて、『こういう試合がサッカーの試合なんだ』と教えてもらいました」。

 苦境を経て、チームは生まれ変わる。グループステージを2連勝で締め、ラウンド16へと進出。「あのミーティングから気持ちが変わりました。追い込まれた状況だったので、2試合目と3試合目は特に『やるしかない』という気持ちはあったと思います」と口にする伊澤も、スタメンの顔ぶれに変化が加えられる中、全3試合でスタメン出場を果たし、前線で身体を張り続ける。

 迎えたラウンド16のガンバ大阪ユース戦。「彼は本当に黙々と献身的にやれる子ですから」と池田監督も信頼を寄せる伊澤の名前も、もちろんスタメンリストに書き込まれる。試合が始まればいつも通り、前線からプレスに奔走し、ルーズボールを収め、球際での勝負に挑む。

「自分たちのスタイル的に、フォワードがハードワークしないとボールも取れないですし、守備で良いボールの奪い方をして、そこから攻撃の形というのが特徴のチームなので、そこはもう当たり前にやる所だと思います。疲れますけど(笑)」。そして、その瞬間がやってくる。

 後半32分。一番キツい時間帯に、伊澤は相手の隙を見逃さない。「中途半端なボールだったので、『もしかしたらこぼれるかな』と思って反応しました」。MF戸田大翔(3年)が高く蹴り上げた裏へのボールを相手DFが弾ませると、すかさず身体をねじ込み、自分のプレーエリアを確保しながら左足一閃。軌道はあっという間にゴールネットへ突き刺さる。

「今大会はまだ得点できていなかったので、思い切って振り抜いてみようと思ったら、入った感じでした。アレは練習後にノブさんと自主練していた形だったので、練習の成果が出たと思います。メチャメチャ嬉しかったですね。中学の時も全国大会では点が獲れなかったので、その想いもあったかもしれないです。人生で全国初ゴールです!」。

 池田監督が、ゴール後の一幕をそっと教えてくれた。「彼はどちらかと言えば無口な子なんですけど、たぶん彼自身もストライカーで点が獲れていないという中で、抱き合った時に『ノブさん、オレやっと獲れたよ』っていう一言を聞いて、苦しかったんだろうなって」。

 伊澤本人もその時の想いをこう語る。「やっぱりノブさんの自分たちに対する想いというのは結構強く感じているので、ノブさんに伝えたかったです。精神的な面でも、苦しい時にノブさんの言葉を思い出したりするので、あの人の影響は大きいです」。誰かのために戦える男は、強い。

「チームとしてはやっぱり今勢いがあるので、ここまで来たら優勝を目指して頑張りたいですし、個人としてはもっと貪欲にゴールを狙って、守備のところでもチームに貢献したいと思います」。

 準々決勝でも、準決勝でも、そして決勝でも、やることは変わらない。勝利のために100パーセントでプレーする。ゴールの女神が微笑まざるを得ないプレーを、伊澤は披露し続ける。

(取材・文 土屋雅史)
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