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仲間を巻き込める生粋のファイター。浦和ユースDF茂木柊哉の今大会に懸ける想い

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浦和レッズユースきってのファイター、DF茂木柊哉

[7.31 日本クラブユース選手権U-18大会準々決勝 浦和ユース 1-1(PK3-1) FC東京U-18 コーエィ前橋フットボールセンターC]

 聞く前から何となくわかっていたが、憧れている選手を尋ねると、想像通りの答えが返ってくる。「自分はセルヒオ・ラモス選手のプレーばかり見ているので、ああいうプレーヤーになれるように頑張りたいです。やっぱりあの闘争心、キャプテンシーは非常に参考になると思います」。浦和レッズユースきっての元気印にして、気持ちあふれるファイター。DF茂木柊哉(3年=坂戸ディプロマッツ出身)の存在感が、日に日に高まっている。

「自分はヘディングと、チームを盛り上げて全体としての士気を上げるのが特徴だと思うので、ビルドアップのところは苦手としているんですけど、チャレンジも今日の試合に関してはできたので良かったです」。準々決勝のFC東京U-18戦。とりわけ前半はお互いに攻撃の時間を作り合う中で、茂木も最終ラインから丁寧にボールを繋いでいく。

 だが、その真価がより発揮されたのは、ややペースを相手に握られた後半だ。25分に左サイドから上げられたクロスを、力強いヘディングできっちりクリア。2分後の27分にも、CKから食らいかけたカウンターの芽を、素早く寄せて1人で摘み取ってみせる。36分に蹴られた相手のCKも、高い打点で弾き返したのは茂木。CBとして戦う姿勢を前面に押し出す。

 最終盤に追い付かれ、嫌な雰囲気も漂い掛けていたPK戦を前に、蹴る順番を決める段階になると、真っ先にこの男が手を上げる。「PKの順番は決まっていなくて、『1番、誰だ?』って聞かれた時に、やっぱり自分が行くしかないと思いました(笑)」(茂木)。

 これには池田伸康監督も「アイツ、手を上げましたね(笑)」と苦笑交じり。ただ、重要な1人目のキッカーとして、冷静なインサイドキックをサイドネットにねじ込んでみせる。「PKに自信はありました。意外とゴールが近く感じたので、外す気はしなかったです。キーパーが話し掛けてきたんですけど、余裕を持って蹴れたので、大丈夫でした。心で決めましたね(笑)」。茂木を含む3人が全員キックを成功させ、守護神のGK川崎淳(3年)が驚異の3本連続セーブでチームを救う。準決勝進出に当たって、気合系センターバックの貢献度は非常に高かったと言って差し支えないだろう。

 今シーズンの序盤戦は、トップチームでの公式戦出場の機会はなかなか巡ってこなかったが、地道に自分と向き合っていたという。「絶対にチャンスは巡ってくると思っていましたし、『そこで腐ったら負けだ』と思っていたので、自主練の時間というのはできるだけ取るようにしていて、自分の足りない部分を補ってきた結果が、今に生きていると思います。特にアピッチ(輝)とは1年生の時からずっとバチバチやってきたので、それも良い刺激になっています」。

 同じセンターバックのポジションを争うDFアピッチ輝(3年)とは、お互いにユースから浦和に来た同志でもあり、最高のライバル関係。ラウンド16のガンバ大阪ユース戦では、終盤に投入されたアピッチと茂木が最終ラインでコンビを組み、相手の攻撃を跳ね返し続けた。この2人の力は、さらに勝ち上がっていく上でも、絶対に欠かせない。

 とにかく声が出る。チームメイトを鼓舞する時も、味方にコーチングをする時にも、とにかく声が良く出る印象がある。「自分は街クラブ出身なんですけど、そこで教わってきたチームで勝つために必要なこととして、声が一番大切だと思っているので、そこは絶対に切らさないようにしています」。苦しい状況でこそ、ピッチに響き渡るこの男の声が、チームをポジティブな空気に変えていく。

 3年生として、後輩たちへの想いも強い。「自分たちにできることは、後輩に何かを残すことだと思うので、自分が伝えられることを、これからも後輩に残していきたいと思います。そういう意味でも後輩には、まず進路の部分でこの大会での実績を残してあげたいですし、自分が戦う気持ちをチームに浸透させて、それが浦和のスタイルになるように、やってもらいたいですね」。

 最高のチームメイトのために。最高の後輩たちのために。誰かのために戦える男は、見えないパワーが自身に乗ることで、最後の一歩を踏み出していく。茂木がピッチでたぎらせる情熱は、赤き仲間を必ずや巻き込み、勝利へ導いていくに違いない。

(取材・文 土屋雅史)
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