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前半と後半で反転した流れ。札幌U-18は鹿島ユースに1-0で競り勝ち、悲願の日本一へ王手!

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“決勝アシスト”のMF佐藤陽成が渾身のガッツポーズ

[8.2 日本クラブユース選手権U-18大会準決勝 鹿島ユース 0-1 札幌U-18 正田醬油スタジアム群馬]

「自分たちは上手くもないし、強くもないと思っているんですけど、でも、凄く仲の良さがあって、チーム全体がまとまっているなという印象は本当にあるので、それがここまで勝ち上がれた要因かなと考えています」。そう言い切ったキャプテンのMF砂田匠(3年)の笑顔に、チームの纏っている雰囲気がよく表れていた。悲願の日本一までは、あと1勝。

 第45回日本クラブユース選手権(U-18)大会は2日、準決勝が開催。鹿島アントラーズユース(関東6)と北海道コンサドーレ札幌U-18(北海道)が対戦した一戦は、後半36分にオウンゴールで先制した札幌U-18がそのまま逃げ切り、20年ぶりに決勝へと進出。初の大会制覇に王手を懸けた。

 鹿島ユース最初の決定機は開始25秒。右SB村山剛琉(3年)のフィードから、こぼれを叩いたDF小林栞太(3年)のシュートはクロスバーにヒット。こぼれに詰めたFW菊池快(3年)のシュートは、札幌U-18のCB川原颯斗(3年)が身体でブロックしたものの、いきなりチャンスを作り出す。

「入りはチーム全体も、みんなも『重い』と言っていましたし、自分たちのサッカーができなかったですね」と砂田が話したように、序盤のリズムを掴んだのは鹿島ユース。後ろからビルドアップしながら、MF柏木陽良(2年)とMF下田栄祐(2年)のドイスボランチが前に配球。MF淵上涼太(3年)と小林の仕掛けもアクセントに、相手ゴールを窺う。

 札幌U-18も、23分には右SB菊池季汐(3年)がクロスを上げると、鹿島DFのクリアが右ポストを直撃するシーンが訪れたものの、なかなかチャンスを作れず。30分も鹿島ユース。「11番の選手への対応はうまくいかなくて、深いところまで行かれていましたね」と札幌U-18の森下仁之監督も認めたMF中山隼(3年)のクロスに、小林が合わせたヘディングは枠の左へ。33分にもトップ昇格内定の左SB溝口修平(3年)のパスから、淵上が枠へ収めたシュートは札幌U-18のGK逢坂文都(3年)が何とかキャッチ。直後にも相手のビルドアップを引っ掛け、菊池のシュートはここも川原が身体に当てたが、前半は鹿島ペースで40分間が推移した。

 後半もファーストシュートは鹿島ユース。4分にCB梅津龍之介(2年)の縦パスから、菊池の反転シュートは枠の右へ。先制点への意欲を示すも、ここから試合は意外な展開を迎える。溝口が7分、10分と立て続けにイエローカードを提示され、まさかの退場。30分近い時間を残して、鹿島ユースは10人での戦いを余儀なくされることになる。

「後半は相手が1人退場して、全員でうまくボールを運べるようになりました」とMF小沼昭人(1年)が口にした通り、一気に形勢逆転。今度は札幌U-18がボールを握りながら、相手陣内へじわじわと侵入。20分には菊池がFW瀧澤暖(3年)とのワンツーで中央に切れ込みながら左へ送り、MF千田悠貴(3年)のシュートは鹿島ユースのキャプテンを務めるGK高橋楓(3年)が懸命に防ぐも、SBの仕掛けで決定機を生み出す。

 苦しい時間の続く鹿島ユースも、23分には途中出場のMF小松朝陽(2年)の左クロスに、ニアで合わせた菊池のシュートは枠をわずかに外れるも、得点ランクトップのストライカーが一撃に忍ばせる脅威。ただ、26分も札幌U-18。MF漆舘拳大(2年)が狙ったミドルは、高橋がファインセーブ。27分も札幌U-18。後半は再三のドリブル突破を見せていたMF佐藤陽成(3年)の右クロスに、千田が合わせたヘディングは高橋がビッグセーブ。好守連発の守護神が、鹿島ユースを奮い立たせる。

 試合を決めたのは「前半も全然良いプレーを出せなくて、『ここでやらなきゃダメだな』と思っていて、後半は気持ちを入れ替えて、どんどん積極的に仕掛けました」という赤黒のナンバー10。36分。右サイドでボールを持った佐藤は、“裏街道”でマーカーを剥がしてそのまま高速クロス。これをDFがクリアし切れず、ボールはゴールへ転がり込む。

「3年生になる前に『絶対自分が10番を付ける』とみんなに言っていて、それで付けさせてもらっているので、『10番に恥じないプレーをしよう』といつも思っています」という佐藤の積極性が呼び込んだクロスが“決勝アシスト”。「個々を見ても、関東や関西の選手たち、プレミアにいるチームやプリンス関東で戦っているチームに比べたら、1人ずつは劣るところもあると思いますけど、3年生中心に選手たちの団結力があって、そういったところがうまく結果に出ているんじゃないかなと思います」と森下監督も言及した札幌U-18が、ウノゼロ勝利で2001年大会以来20年ぶりとなる決勝進出を手繰り寄せた。

 アビスパ福岡U-18、東京ヴェルディユース、ジュビロ磐田U-18、清水エスパルスユース、そして鹿島アントラーズユースと、すべてプレミアリーグ経験チームを撃破して、日本一まであと1勝に迫った札幌U-18。「みんなからも『楽しもう』という声もあったので、自分も楽しいですし、みんな楽しんでいると思います。最初はどこまでやれるんだろうという不安もあったんですけど、初戦でああいう勝ち方ができて、『自分たちのサッカーを出せれば勝てるな』という自信が付いたので、波に乗れた感じですね」とは砂田。初戦の福岡U-18に6-0と大勝したことで、チームのやり方に手応えを得たことには指揮官も同調していた。

 大きなヤマは準々決勝。プレミアリーグEASTで2位に付ける清水ユース相手に、森下監督は独特の“モチベート策”を用いたという。「エスパルスさんはプレミアリーグの結果を見ていても一番強いと思っていたので、正直みんなにも『もうここまで来れたんだからいいじゃないか。決勝戦をやっているようなものなんだから』と話していたので、勝った時に『決勝戦を使っちゃったから、次から何て言おう……」と思っていたぐらいで。それは冗談でですけど(笑)、僕らは北海道でなかなかこういう経験ができないので、1つでも多く試合ができることは財産だなと思います」。ここまでの試合で、選手たちの成長している姿を見られていることが、何よりも一番嬉しかったそうだ。

 いよいよ次はファイナル。ここまで来たら、当然勝ちたい。「決勝戦は今までやってきたことをすべて出して、このチームで日本一を獲りたいと思います」(佐藤)「いつも通り守備の球際だったり、運動量だったり、そういう基本のところでしっかり貢献したいと思います。絶対に勝ちたいです」(小沼)「口では日本一と言っていたんですけど、正直ここまで来るとは思っていなかったですね(笑)。でも、応援してくれている人たちのためにも、ここまで来たら全部出し切って、優勝して帰りたいです」(砂田)。

 舞台は整った。あとはやるか、やらないか。今の札幌U-18からは、後者の選択肢へ逃げる雰囲気など、微塵も感じられない。

(取材・文 土屋雅史)
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