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強敵を受け止め、跳ね返し続ける王者の風格。名古屋U-18は延長で浦和ユースを振り切って決勝へ!

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激闘を制した名古屋グランパスU-18が決勝へ!

[8.2 日本クラブユース選手権U-18大会準決勝 浦和ユース 1-2(延長) 名古屋U-18 正田醬油スタジアム群馬]

 この大会も数々の強敵が、彼らを倒さんと全力で立ち向かってきた。それでも、その挑戦を真っ向から受け止め、跳ね返し、堂々とファイナルまで勝ち上がってきたのは、まぎれもない強者の証だ。「今大会もいろいろな逆境に立たされながら、それを乗り越えていこうというポジティブな空気というか、過去を振り返るのではなくて、今に集中していこうという空気が確実に良くなってきているので、そこは非常に逞しくなってきているように思います」(古賀聡監督)。

 2年ぶりの戴冠、迫る。第45回日本クラブユース選手権(U-18)大会は2日、準決勝が開催。浦和レッズユース(関東4)と名古屋グランパスU-18(東海2)が激突した一戦は、後半終了間際に浦和ユースが追い付く健闘を見せたものの、延長に入ってエースのFW真鍋隼虎(3年)がこの日2点目となる決勝点を叩き出し、名古屋U-18が決勝へと駒を進めた。

「前半は自分たち主体で相手をハメて、前から行くサッカーが出せていた」と右SB葉山新之輔(3年)も語ったように、前半から攻勢に出たのは名古屋U-18。13分には「自分の献身的な前線からの守備で勢いを付けるというところは、ずっと意識しています」という真鍋が、ハイプレスでボールをかっさらうとそのままシュート。ここは浦和ユースのGK川崎淳(3年)のファインセーブに遭うも、まずはチームの姿勢をフィニッシュシーンに滲ませる。

 浦和ユースも14分にはMF阿部水帆(1年)のサイドチェンジから、走ったMF早川隼平(1年)が枠内シュートを放ち、名古屋U-18のGK宮本流維(3年)にキャッチされたものの、1年生レフティコンビでチャンスを創出。だが、17分にも名古屋U-18は左SB佐橋杜真(3年)のクロスに、ニアで合わせたFW豊田晃大(3年)のボレーは枠の右へ外れたが、ゴールの匂いを漂わせる。

 すると、MF齊藤洋大(3年)と豊田が相次いでミドルを川崎にファインセーブで阻まれた直後の32分。名古屋U-18のホットラインが開通する。右サイドでMF甲田英將(3年)からパスを受けた葉山は、「隼虎しか中では見ていなかったので、良いところに飛んで良かったかなと思います」というクロス。「新之輔に入った時に、練習から自分のことを絶対に見てくれるので、来ると思った」という真鍋は難しい体勢のヘディングを、右スミのゴールネットへ見事に収めてみせる。まさにストライカーの一刺し。真鍋の今大会5点目で、名古屋U-18がリードを奪って最初の40分間は終了した。

 ハーフタイム。浦和ユースの池田伸康監督は、選手たちに語り掛ける。「前半はなんかメチャメチャ硬かったから、『何でここにいるんだ?』『どんなことをしてここに来たんだ?』と。『カッコつけたサッカーしやがって』って」。

 後半3分。右SB岡田翼(3年)の高速クロスに、FW伊澤壮平(3年)がダイレクトで合わせたボレーは、宮本がキャッチするも、2戦連発中のストライカーが惜しいシーンを。13分にも左サイドで、投入されたばかりのMF桐山龍人(2年)のパスから、伊澤が入れたクロスに早川が合わせると、宮本のビッグセーブに阻まれるも、ようやく浦和ユースの攻撃にもスイッチが入る。

 それでも、次の得点が入る可能性は、間違いなく名古屋の方が高かった。真鍋が、交代出場のFW貴田遼河(1年)が、甲田が、次々に浦和ユースゴールへ襲い掛かるも、川崎やCBコンビのDF茂木柊哉(3年)とDF土橋公哉(2年)を中心に粘り強く凌ぐと、後半39分に右から桐山が入れたクロスが、名古屋U-18DFの手に当たり、主審はPKのジャッジを下す。

 キッカーに名乗り出たのは、準々決勝のFC東京U-18戦でもPK戦の1人目に立候補するなど、PKには自信があると豪語する茂木。土壇場での重要な局面に、2日前とは逆の右スミに完璧なキックを沈めてみせる。この日はキャプテンマークを託された3番のCBが起死回生の同点弾。試合は前後半10分ずつの延長戦にもつれ込む。

 激闘に決着を付けたのは、「彼が一番走れる選手ですし、戦える選手でもあるので、期待に違わぬプレーを見せて、リーダーとしてチームを引っ張ってくれたと思います」と古賀監督も最大限の賛辞を送ったナンバー10。

 延長前半10+4分。MF鈴木陽人(1年)、貴田と回ったボールを、左サイドの大外で真鍋が待ち受ける。「中がごちゃごちゃってなっている時に、大きなスペースを見つけて、そこにいたら『ボールが来るかな』と思ったので、そこで遼河がよく見てくれて、パスを出してくれたので決めるだけでした」。左足を振り抜いた軌道は、右スミのゴールネットへ突き刺さる。

「フォワードである以上、得点を獲ることが一番アピールできますし、自分の価値を高められるので、ゴールが一番だと思っています」と胸を張った10番の決勝弾。名古屋U-18が粘る浦和ユースを延長戦の末に振り切って、2年ぶりのファイナルへと勝ち上がった。

 これで2019年大会に続く日本一へ、あと1勝まで辿り着いた名古屋U-18。当時もチームの指揮を執っていた古賀監督は、今年のチームの成長ぶりをこう語っている、「あの時のチームもそうだったんですけど、今のチームも徐々にピッチに立つ11人のそれぞれの色とか、持ち味とか、個性とか、強みとか、そういうものがはっきりとわかるような戦いになってきているので、そこが僕たちの目指すところなんです。チーム戦術として戦うというよりは、個人の色や持ち味がスイッチになる形を目指しているので、そういう意味では途中から入った選手も含めて、それぞれの持ち味がよく出せるようになってきていると思います」。

 たとえば延長に真鍋がマークした決勝ゴールに絡んだのは、ともに途中出場を果たした1年生の貴田と鈴木。さらに、ポジション争いの激しいボランチにMF宇水聖凌(2年)が台頭してきたことを受け、もともとは本職ではない吉田とチームキャプテンのMF加藤玄(3年)をCB起用することで、ビルドアップの精度も格段に高まっている。各々が自分の役割を理解し、着実にこなすことで、チームの総和がどんどん増していくサイクルに入っていると言えそうだ。

 それでも、決勝進出を決めた直後、古賀監督はこう言葉を紡いだ。「ここまで勝ち上がるのに実は2勝3分けだったんですね。2回しか勝っていないんです。今日でようやく3勝目で、3勝3分けなんですよ。なので、『そこまで勝てていないよね』という話はみんなに伝えていますし、もっと攻撃力を武器にしていくチームとしては、勝ち切っていかないとというのは彼ら自身も感じているとは思います」。

 この指揮官にして、この選手たちあり。名古屋U-18に、死角なし。

(取材・文 土屋雅史)
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