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7試合を戦い切った真夏の冒険。札幌U-18はこの最高の経験をプレミア昇格へ必ず繋げる

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北海道コンサドーレ札幌U-18は堂々の全国準優勝

[8.4 日本クラブユース選手権U-18大会決勝 札幌U-18 0-2 名古屋U-18 正田醬油スタジアム群馬]

 最後の試合も勝ちたかったことは言うまでもない。初めての日本一は、もう手の届くほんの少し先に見えていた。だが、この真夏の7試合で得た全国準優勝という経験は、かけがえのない財産として、彼らの中へ確かに残ったはずだ。

「本当に選手たちは自信を持っていいんじゃないかなと。自分たちは北海道にいて、できるのか、できないのか、と自信のなかった部分が、今回でしっかりと自信を持った中で、自分たちを過小評価しないで、しっかりとやれるということを意識した上で、さらにまだ上を目指してほしいなと思います」。

 チームを率いる森下仁之監督は、そう言って柔和な笑顔を浮かべた。北海道コンサドーレ札幌U-18は、最後まで挑戦する気持ちを失わず、堂々とした態度で大会を終えた。

 間違いなく、前半の流れは彼らにあった。圧倒的な個のタレントと、総合力の高い組織を誇る名古屋グランパスU-18を相手に、指揮官が導き出した決勝の戦い方は、普段の4-4-2ではなく、トップチームと同じ3-4-2-1の布陣。不動の守護神・GK逢坂文都(3年)の前に、DF荒木健斗(1年)、DF川原颯斗(3年)、U-17日本代表候補DF西野奨太(2年)の3枚が並び、ドイスボランチにはいつも通りキャプテンのMF砂田匠(3年)とMF小沼昭人(1年)が。WBは右にDF菊池季汐(3年)、左にDF佐々木奏太(2年)と準決勝のSBがそのまま入り、最前線に配されたFW瀧澤暖(3年)の下には、MF佐藤陽成(3年)とMF漆舘拳大(2年)が2シャドー。あえてミスマッチを起こし、そのギャップで勝負する戦い方は理に適っていた。

 実際に佐藤と漆舘のマークに悩まされた名古屋U-18は、菊池と佐々木の両WBにまで意識が回らず、彼らのオーバーラップをモロに食らう格好に。名古屋U-18のチームキャプテンを務めるMF加藤玄(3年)は、「相手が自分たちのスカウティングとはちょっと違う立ち位置を取ってきたことで、サイドバックやボランチの腰が引けてしまって、僕たちも押し出せずに後ろ重心になってしまいましたし、前からボールを奪いに行くチームの強みがなかなか出せなかったですね」と素直に苦戦を認めている。

 チャンスもあった。6分には佐々木がゴール左へ逸れるミドルを放つと、19分に砂田が思い切りよくトライしたミドルは、クロスバーに跳ね返る。さらに、23分にも砂田が直接FKをわずかに枠の上に外すなど、ゴールの雰囲気も感じさせていただけに、前半終了間際の失点が痛かった。

「準決勝同様『楽しもう』と全員に声を掛けて、硬くならないで、みんな良い入りをしてくれましたけど、自分もチャンスがあった中で決め切れなくて、そういう決定力の差が相手との差というか、こういう全国のトップレベルとの差かなと感じました」と砂田。後半も交代カードを切りつつ、選手のポジションも入れ替えながら1点を追い掛けたが、終盤に追加点を奪われ、万事休す。0-2というスコアで、日本一の栄冠はその手からするりと逃げて行った。

 森下監督は、この大会で得た経験をこう語っている。「7試合で5勝2敗。初戦のアビスパ戦から勢いを持って、非常に良いチームだったエスパルスさんにも素晴らしいゲームができましたし、もうこの7試合をできた経験、しかも練習試合と違う本気のゲームができたことは、僕たちにとって相当大きいので、この感覚はトレーニングの中からチームで共有して、選手たちとお互いに冬へ向けてトレーニングできたらなと思います」。

 圧倒的なキャプテンシーでチームを牽引した砂田は、決勝を「自分たちもああやって主導権を持ってボールを動かせますし、全然余裕を持ってやれた部分もあったので、自信を持って通用すると言っていいのかなと思います。みんなとここまで、こういう舞台でこの数の試合ができて、本当に楽しかったです」と振り返る。多くの選手がグラウンドに崩れ落ちた試合後。毅然とした態度で前を向き、涙の止まらない逢坂の頭を二度三度と優しく叩く姿が印象的だった。

 ここからは指揮官も口にしたように、今回感じた基準をベースに置きながら、プレミアリーグ昇格という大きな目標を追い掛けることになる。

「面白いヤツが多いですし(笑)、でも、やる時はやるというスイッチの切り替えができて、本当にまとまりのあるいいチームだと思います。やっぱり僕らはプレミア昇格が最大の目標なので、そこは冬に向けて、ここで感じた悔しさとか、全国のトップレベルとの差を練習で埋めていけるように、日々の練習を頑張っていきたいです」。そう話した砂田が、続けて最後に語ってくれた言葉はきっと本心だ。

「やり切りました。悔いがないと言ったら嘘になるかもしれないですけど、自分たちの力は出し切れたかなと。胸を張って北海道に帰りたいと思います」。北海道コンサドーレ札幌U-18が戦い切った7試合に及ぶ真夏の冒険に、最大限の拍手を。

(取材・文 土屋雅史)
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