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ユース取材ライター陣が推薦する「クラセン注目の11傑」vol.3

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土屋氏が注目するFW熊田直紀(FC東京U-183年)

 ゲキサカでは7月24日に開幕する夏のクラブユースチーム日本一を懸けた戦い、第46回日本クラブユースサッカー選手権(U-18)大会の注目プレーヤーを大特集! 「クラセン注目の11傑」と題し、ユース年代を主に取材するライター各氏に紹介してもらいます。第3回は(株)ジェイ・スポーツで『Foot!』ディレクターやJリーグ中継プロデューサーを歴任し、現在はフリーランスとして東京都中心にユース年代のチーム、選手を取材、そしてゲキサカコラム『SEVENDAYS FOOTBALLDAY』も連載中の土屋雅史氏による11名です。

 土屋氏「真夏の群馬を舞台に繰り広げられるクラブユース選手権。この大会から世界の舞台へと旅立っていった選手も少なくなく、今大会も未来の日本代表選手たちの競演が期待される中、今回は最高学年に当たる3年生の中から、11人の注目すべき精鋭をチョイスしました。高校入学とほぼ同時にコロナ過に見舞われ、サッカーをすることすら奪われた時期も経験した彼らが、ユース最後の全国大会でとにかく仲間とプレーする楽しさをピッチで表現してくれれば、それ以上に嬉しいことはありません!」

GK北橋将治(名古屋グランパスU-183年)
プレミアリーグデビューは昨年の7月。それから1年あまりでリーグ屈指の守護神へと成長を遂げた。前所属はさいたま市立宮前中学校。進路も「『家の近くのそこそこ強い高校に入れたらいいな』ぐらいで考えていました」とのことだが、県選抜の試合を見たスカウトに見初められ、名古屋U-18でプレーすることに。日本サッカー界のレジェンド・楢﨑正剛GKコーチの指導を受け、着々とその実力を伸ばしている。既にトップチームの練習にも参加しており、「武田(洋平)さんやランゲラック選手とも一緒にやらせてもらって、良いキーパーというのはドタバタせずに、どっしりと構えていて、味方に安心感を与える存在だと思うようになりました」とのこと。中学時代から磨いてきたパントキックの精度が最大の武器ではあるが、ハイボールやシュートストップ時の安定感も非常に高い。

DF池谷銀姿郎(横浜FCユース 3年)
誰からも“銀ちゃん”と呼ばれ、親しまれる明るい性格は天性のもの。「自分の良さは“エネルギー”なので、そのあたりはユースでも代表でも、トップチームに行っても変わらず、大事にしています」と笑いながら語れるメンタルも頼もしい。ディフェンダーとしての能力も高く、スピード、空中戦、対人といずれも水準以上のレベル。昨年までは信じられないようなミスをすることもあったが、チームのキャプテンを任されている今シーズンは、その自覚からかいわゆる“ポカ”が影を潜め、常に安定したパフォーマンスを披露し続けている。「自分たちが勝って何を感じたのか、負けて何を感じたのかというのを、もっともっと全員1人1人が追求していけば、チームも良い方向に行くんじゃないかなと思います」という哲学的な言葉も印象深い。さまざまな魅力の詰まった18歳だ。

DF松長根悠仁(川崎フロンターレU-18 3年)
「1歳から親に連れられてフロンターレを見ていました」という生粋のサポーターが、そのクラブのアカデミーで順調に成長を遂げ、いよいよ来シーズンからはトップチームの選手になる。ボールを大切に扱うチームの中で、ビルドアップの起点としての役割をこなすのは朝飯前。最大の特徴はギャップに潜った前線のアタッカーへ、直接鋭く付けられる縦バスの精度。さらに最近は「キャンプに参加した時に、車屋さんから『こう持ち運んだ方がいいよ』ということを教えてもらいました」と、車屋紳太郎直伝の前へと持ち運ぶドリブルにもトライし、プレーの幅を広げている。トップ昇格が決まっても「大関(友翔)や高井(幸大)の方が注目されているので、自分はある意味楽にできていると思います」という発言も。飄々と面白いことを口にするキャラクターも興味深い。

DF大槻豪(柏レイソルU-18 3年)
ジュニア年代からこのクラブでプレーしてきているにも関わらず、「自分はレイソルのこのスタイルにあまりこだわっていないんです、自分のストロングを出すことと、試合に勝つことに意識が向いているので、そこにはあまりこだわらないでやっていますね」と言い切るあたりに、この男の真っすぐな性格がよく表れている。1対1で見せる対人の強さや、自分より背の高いフォワードにも果敢に食らい付く空中戦の迫力は大きなストロング。とはいえ、10年近く日立台で磨いてきた足元の技術もハイレベル。トータルでの能力も十分兼ね備えている。好プレーを披露した時に大声を上げる姿は、かつてU-18でキャプテンを務めていた杉井颯(AC長野パルセイロ)と重なる部分も。スタイリッシュなスタイルのレイソルの中で、この“暑苦しい”センターバックの存在は唯一無二の大事なスパイスだ。

MF坂井駿也(サガン鳥栖U-18 3年)
アルゼンチン流に言えば、“5番”のスペシャリスト。中盤のど真ん中でにらみを利かし、攻守に機能し続ける。今シーズンはルヴァンカップで念願のトップチームデビュー。「普通では味わえないようなプレースピードや強度をルヴァンカップに出て味わえたかなって。『緊張するのかな』と思ったんですけど、全く緊張しなくて、途中から出てゲームに入り込めましたし、落ち着いてできたので、良い経験になっています」と大物ぶりを発揮した。とにかくサッカーIQが高く、「自分はどこのポジションでもある程度できるので」と話すように、チームの緊急時にはボランチ以外のポジションも完璧にこなせる一面も。中学時代を過ごしたソレッソ熊本の先輩であり、U-18の先輩でもある松岡大起(清水エスパルス)も辿ってきたような、さらなるステップアップにも期待したい。

MF新鉄兵(東京ヴェルディユース 3年)
シーズン開幕前は10番を付けることが不安だったという。「歴代の選手を見てもみんな上手かったですし、去年一緒にやっていたコタくん(根本鼓太郎)を見ても、凄く上手だったので、10番を付けることに対して嬉しい気持ちと、やらなきゃいけない緊張感もあって、『自分で大丈夫かな……』という不安な気持ちも結構ありました」。そんな想いは杞憂に終わる。プリンスリーグ関東では既に4ゴールを挙げており、中でも昌平高戦では2発のミドルシュートを沈め、無敗で首位を快走していた難敵撃破の主役に。着実にチームの中で存在感を高めている。「ヴェルディらしく、もっとボールを持って、もっとボールを繋いで、もっと1人1人の質を上げて、結果も内容も圧倒できるチームになりたいです」という自らの言葉の実現には、この10番のさらなる成長が必要不可欠だ。

MF堀内陽太(浦和レッズユース 3年)
クラブ与野から浦和レッズユースに加わった俊英は、1年時から着実に出場機会を獲得すると、昨年は完全に主力へ定着。チームは無念の降格を味わったプレミアリーグでも、全試合出場を果たすなど、大きな自信を掴む1年を過ごすこととなった。「長所は守備だと言ってもらっているので、まずはセカンドボールを拾うことや、相手の縦パスを必ず消すようにすることは考えていますし、中盤を引き締めるところも大事だと思っているので、そこは意識しています」と本人も語るように、身体の強さと予測の速さを生かした守備面で特徴を発揮するタイプ。最高学年になった今シーズンは、負傷で離脱する時間も長かったものの、コンディションも上昇傾向に。10番とキャプテンを託されている堀内の躍動が、今大会で1年前の結果を超える“ベスト4以上”を目指す上で絶対に欠かせない。

FW伊藤猛志(ジュビロ磐田U-18 3年)
今シーズンのプレミアリーグでは10試合で9得点を記録。とりわけヤマハスタジアムで開催されたヴィッセル神戸U-18戦では、ゴールまで30メートル近い距離から『キャプテン翼』の大空翼クラスのドライブシュートを叩き込み、スタンドの観衆を唖然とさせながら、「自分は気まぐれで決めちゃう時もあるので(笑)」とカラッと笑った表情も印象的だった。「小学校の頃から9番が大好きで、やっぱり点取り屋というイメージもありますし、ゴンさん(中山雅史コーチ)にはキャンプでもいろいろ話を聞いたんですけど、フォワードとしての動き出し方は見習う部分もありますし、今はこうやってジュビロのエンブレムを背負って、点を獲ってチームを勝たせるという部分で、9番には意味があると思っています」。中山雅史を彷彿とさせるジュビロの9番。ゴール前の伊藤には要注目。

FW内野航太郎(横浜F・マリノスユース 3年)
2年生だった昨シーズンのプレミアリーグでは13得点をマーク。今シーズンはここまで11試合で12得点と、さらなるハイペースでゴールを量産する生粋のストライカーは「正直“分母”が多いですし、チャンスも去年からたくさん作ってもらっているので、チームメイトに感謝したいです。自分はそこを決められなくなったら価値がなくなると思っているので、本当に何点獲っても満足できないですし、何点でも多く獲れるようにやっていきたいです」と現状に満足する様子は微塵もない。憧れの選手はバルセロナへと移籍したレバンドフスキ。理由は「ちょっと理不尽な、チームが苦しい中でもボールが入ったら決めるみたいなプレーに、凄く惹き付けられました」とのことだが、何もないところから理不尽にゴールを奪うのはこの男もまったく同様。今大会の超有力な得点王候補である。

FW熊田直紀(FC東京U-18 3年)
『大器』というフレーズが最もしっくり来るような、スペシャルな才能を持つ選手であることに疑いの余地はない。今季のプレミアリーグでは11ゴールを積み重ねており、前橋育英高との一戦ではハットトリックも達成したものの、試合後に「ゴールを獲れるだけ獲って、その試合に勝てればいいので、その試合で何点という目標は作っていないです」とクールに言い放った言葉に、底知れなさを感じさせられた。U-18日本代表候補合宿では10番とキャプテンに指名されるなど、代表スタッフからの期待も非常に高いが、本人は「そういうのは気にしていないです」とどこ吹く風。ただ、寡黙なタイプではありながら、じっくりと考えて話す言葉には、以前より確かな意志が宿り始めている。いよいよ完全開花を迎えつつあるこのタレントが、どこまで突き抜ける選手になるかが非常に楽しみだ。

FW高橋輝(大宮アルディージャU18 3年)
もともと速かったが、凄味が増している。「1試合で何回か絶対にドリブルで何人も相手を剥がして、チャンスを作りたいということはずっと考えています」という言葉を証明するような、左右両足を自在に操るドリブルからのチャンスメイクに加え、最近では自らゴールを獲り切る決定力も完備。プレミアリーグでも川崎フロンターレU-18との一戦では、スピードと力強さの“合わせ技”のようなとんでもないドリブル突破でワンチャンスをモノにして、首位の連勝ストップの立役者となった。今大会に向けても「アカデミーの歴史を変えることは、高1の時からずっとずっと持っている想いなので、そこをまずは目標として、その中で自分の結果が付いてくればいいかなと思っているので、勝利に貢献したいです」ときっぱり。世代有数のスピードスターは、大宮U18の歴史を変えられるか。

■執筆者紹介:
土屋雅史
「(株)ジェイ・スポーツに勤務。Jリーグ中継担当プロディーサーを経て、『デイリーサッカーニュース Foot!』を担当。群馬県立高崎高3年時にはインターハイで全国ベスト8に入り、大会優秀選手に選出。ゲキサカでコラム、『SEVENDAYS FOOTBALLDAY』を連載中。著書に「メッシはマラドーナを超えられるか」(亘崇詞氏との共著・中公新書ラクレ)。」
●【特設】第46回日本クラブユースサッカー選手権(U-18)大会

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