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[MOM3972]C大阪U-18DF川合陽(3年)_「大人しくて引っ込み思案」からの脱却…たくましさ身につけた主将がV導く逆転2発!!

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大会MVPに輝いたセレッソ大阪U-18のDF川合陽(3年)

[高校サッカー・マン・オブ・ザ・マッチ]
[8.3 クラブユース選手権決勝 C大阪U-18 3-1(延長) 横浜FMユース 正田スタ]

 大会を通じてたくましさを身につけていったキャプテンが、セレッソ大阪U-18に13年ぶり3度目のクラブユースタイトルをもたらした。1点ビハインドから逆転に導く2ゴールを沈めながらも、「少し期待はあったけど、2点を取っただけでそこまで仕事はしていなかったので、まさか自分になるとは……」と戸惑い気味にMVPのトロフィーを受け取っていたDF川合陽(3年)。それでも指導陣はその存在の大きさを手放しで讃えていた。

 試合後、島岡健太監督は「大人しくて引っ込み思案な子だけど、殻を破ろうとしているのが頼もしい」と述べ、主将がこのチームにもたらしたものを熱を込めた語った。

「この大会を通じていろんな意味で成長しているし、大会中も僕の知らないところで自分たちで集まってミーティングし出したりとか、彼自身もいろいろトライしている。自分を変えようとか、何かいろいろできるようになろうとか、本当に素晴らしい。彼にとっていい経験をしているし、自分が何かをやろうとしないと、切り開こうとしないとダメなんだとあらためて思い知らされた」

「大人しいし、真面目」と周囲が口を揃える背番号5にとって、小中学生時代も経験していなかったキャプテンの重責。監督からの指名は「2年生から試合に長い時間出させてもらっていたので、チームを一番見渡せる位置にいたから」というピッチ内の存在感によるものだと捉えていた川合だが、ピッチ外でも「あまり声で引っ張っていけないタイプだと思っていたので、行動からかなと思ってそこは意識した」と自らを見つめ、ここまで走り抜いてきた。

 そうした振る舞いは、今大会のような短期決戦で大きな鍵になった。コロナ禍の最中ということもあってミーティングの機会も制限される中、監督やコーチに言われなくともコミュニケーションを先導。集まることが必要と感じれば、風通しの良いホテルの駐車場も活用し、チームをまとめ上げてきた。

 そんな主将の姿には今大会で実質指揮を執る相澤貴志GKコーチも「真面目だし、求めることをやろうとする選手だけど、自分が見てきたこの2年間ですごく伸びた。大人しいし、真面目だけど、キャプテンとして自分でまとめないとという意識がすごく強かった」と驚きを交えつつ賞賛。「短い大会は一体感が大事と言い切っちゃうのも良くはないと思うけど、やはり大事かなと思う」とその貢献ぶりを強調した。

 そんな頼れる主将はこの日、ピッチ内でも見事な結果を出した。まずは0-1で迎えた後半33分、MF{和田健士朗}}(3年)からの左CKをDF白濱聡二郎(2年)がニアでそらすと、ファーサイドから勢いよく飛び込んだ。

「クラブユースの出発前に練習していた形で、横浜FCの時に白濱が決めた本来の形ができた」(川合)。準決勝の横浜FCユース戦では「コースが見えた」という白濱が直接ゴールに決めたが、本来はこれが練習していた形。最初のボレーシュートこそ相手にブロックされたが、跳ね返りを見事なミートで押し込み、土壇場で同点に持ち込んだ。

 さらにそのまま1-1でもつれ込んだ延長戦の前半9分、今度はMF皿良立輝(2年)の右CKをファーサイドで合わせ、強烈かつ精度の高いヘディングで沈めた。「普通のシンプルな形でキッカーのキックに任せて、自分のところにいいボールが来た」。技巧派集団のイメージとは少々異なるセットプレー2発での逆転劇。それでも島岡監督が「それもサッカーの一つ。蹴る技術も合わせる技術も技術は技術」と前向きに受け止めるハイクオリティーな得点だった。

 その後は相手のクロス攻勢にピンチを招く場面もあったが、身体を張ってゴール前の制空権を死守。「コロナもあって難しい3年間だったので、タイトルは絶対に取りたいという位置付けでこの大会に臨んでいた」というモチベーションで耐え抜くと、最後はMF中山聡人のダメ押しゴールも決まり、「この大会で勝ち切る力は間違いなくついた」という成長の跡を優勝という結果で示した。

「ここに来られていないメンバーもいたし、その人たちからもメッセージをもらっていたので、試合前から『優勝するしかない』と全員で話し合っていた。優勝への全員の矢印が強かったことがこういう結果につながった」。技術に向き合い続けてきた集団が勝ち取った夏の王者の勲章。その中心にはたくましさを身につけた主将の存在があった。

(取材・文 竹内達也)
●【特設】第46回日本クラブユースサッカー選手権(U-18)大会

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