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[MOM5155]柏U-18MF川本大善(3年)_「見ている人たちを全員引き込んでいくのが自分の役割や使命」 愛と献身のハードワーカーが叩き込んだ先制ゴールの価値

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先制ゴールを挙げた柏レイソルU-18が誇るファイター、MF川本大善(3年=柏レイソルU-15出身)

[高校サッカー・マン・オブ・ザ・マッチ]
[7.22 クラブユース選手権(U-18)GL第1節 柏U-18 2-0 秋田U-18 山口きらら博記念公園 サッカー・ラグビー場]

 このアカデミーで過ごしてきた6年間の集大成。絶対にみんなで真夏の夜空に日本一のカップを掲げたい。そのためだったら、何でもやる。走る。叫ぶ。戦う。いつだって100パーセントのエネルギーで、チームに最高のエネルギーをもたらしてやる。

「もうこの大会には凄く懸けていますし、自分は中学生になってジュニアユースからレイソルに入ってきたんですけど、こんなに良い仲間や良いスタッフはいないですし、こんなに良いチームはないと思っているので、最後に良い形で笑って終わりたいなと思っています」。

 柏レイソルU-18(関東6)が誇る、闘争心あふれる戦闘型のハードワーカー。MF川本大善(3年=柏レイソルU-15出身)が叩き込んだ先制ゴールが、大事なグループステージ初戦で勝利と歓喜の笑顔を、チームメイトにもたらした。


「常に日ごろも、自分たちは入りから相手に勝てないと思わせるぐらいの勢いを意識していますし、それは今日もいい感じに体現できて、良いゲームに繋がったと思います」。

 川本は試合の入りの良さに、一定の手応えを口にする。日本クラブユースサッカー選手権(U-18)大会のグループステージ1日目。ブラウブリッツ秋田U-18(東北3)と対峙した柏U-18は、まず確実に守備を安定させる形で、冷静にゲームを立ち上げる。

 山口のピッチにも、背番号2の大きな声が響き渡る。「チームが悪い雰囲気だったり、少し緩い雰囲気が流れている時は、自分が見せないとなと思いますし、会場で見ている人たちを全員引き込んでいくのが、自分の役割や使命だと思っています」。自分にも、周囲にも、一切の妥協を許さない。

 攻撃でも好プレーが目立つ。前半28分には中央をドリブルで運び、FW巻渕彪悟(2年)が掴んだ決定機を演出。さらに後半8分にも、MF長南開史(1年)の枠内シュートを導く丁寧なパスを送るなど、積極的に前線へと関わっていく。



 14分。起点もこの人だった。相手のロングスローを川本がヘディングで弾き返すと、そこから柏U-18のカウンターが炸裂。FW澤井烈士(3年)、FW加茂結斗(2年)とパスが繋がり、DF佐藤桜久(2年)が左から押し返したグラウンダーのクロスに、黄色いユニフォームを纏った2番がフルスプリントで突っ込んでくる。

「前半からクロスに対して、前線の選手がずっといいアクションをしてくれていたので、そこに自分が入る隙は絶対にあるなと思っていて、そうしたら佐藤選手が良いクロスを上げてくれたので、あとは冷静にゴールに流し込むだけでした」。

 右足で打ち込んだボールがゴールネットを揺らしたのを見届けると、ピッチサイドに飛び出してきたベンチメンバーの元へと一目散に走り出す。咲き誇った笑顔の大輪。川本の先制ゴールで、チームは貴重な1点のアドバンテージを引き寄せる。




 この日の会場は少し荒れたピッチではあったが、実は試合前からチームを率いる藤田優人監督は、「こういうピッチも川本にとってはベストピッチですよ」と言い切っていた。川本に水を向けると、本人もその自覚はあったようだ。

「僕はこういうグラウンドにも小学生のころから慣れているので、『懐かしいな』と思いながらプレーしていました。ゴールの時のシュートも、ちょっと地面がボコボコしていたので、よくボールを見て、芯を捉えることは意識していました」。いつでも、どこでも、その日の状況に順応して、ベストパフォーマンスを出し切れる力が、何とも頼もしい。

 26分にはキャプテンのDF上原伶央(3年)が追加点をマークし、チームは2-0で勝利。「今日はチームとしても、個人としても、前半のキックオフから最後に笛が鳴るまで集中していて、入りも良かったですし、ゲームも良い感じで締められたので、そこは良かったと思います」と話した川本はタイムアップの笛が鳴ると、直前の接触で倒れていた相手の選手へ駆け寄り、手を差し伸べて引き起こす一幕も。そんなシーンからも、持ち合わせている人間性が垣間見えた。



 今シーズンのプレミアリーグでも好パフォーマンスを披露してきた川本は、6月に自身初の年代別代表となるU-17日本代表に選出され、スペイン遠征を経験。海外の同世代の選手たちと肌を合わせたことで、改めて実感したことがあったという。

「やっぱり日本の選手と全然違って、足が伸びてくる感じがありましたし、ちょっと判断が遅れると潰されるなと感じました。でも、自分は『良い経験ができた』で終わりたくなくて、どんどんステップアップして、海外でのプレーを目指していけるように頑張りたいですし、そのためにもU-17のワールドカップのメンバーには絶対に選ばれて、活躍したいなと思っています」。

 とはいえ、代表に選出されたことで意識の変化があったか否かを問われ、返した言葉は何ともこの人らしい。

「特に意識が変わったところはないですね。自分は常に自分の出せる100パーセントの力を1日の中で出し切るということを考えているので、代表に選ばれたからそこが変わるということは、自分にはありません」。つまりは、そういう選手なのだ。

 クラブユース選手権はすぐに次の試合がやってくる。最大で10日間の晴れ舞台。もちろん最後まで戦い抜く覚悟なんて、とっくに定まっている。ここからの試合に向けた川本の決意は、岩のように固い。

「もう自分らしさ、自分の出せるものを全部出して、みんなに恩返ししたいなと思っています」。

 いつだって自分のやるべきことは、変わらない。すべてはチームのために。すべてはチームメイトのために。柏U-18にまっすぐな芯を通す、心優しき愛と献身のファイター。今日のピッチにも川本大善の大きな声は、必ずや力強く響き渡っているに違いない。



(取材・文 土屋雅史)

●第49回日本クラブユースサッカー選手権(U-18)特集
土屋雅史
Text by 土屋雅史

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