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全得点に絡みながらも悔しがる香川「僕はチャンスメーカーではない」

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[6.3 W杯アジア最終予選 日本3-0オマーン 埼玉]

 試合を終えた10番に、笑顔はなかった。相手をシュート1本に抑え込み、3-0と完勝して最終予選のスタートを切った日本代表にあって、MF香川真司(ドルトムント)には不完全燃焼の想いが色濃く残った。「今日は前線の3人がしっかり結果を残しましたし、僕自身はすごく悔しさが残る結果となった」。そして、「もっと自分はできる」と唇を噛む。

 何もできなかったわけではない。実際に香川は、全ゴールに絡んでいる。ダイレクトでパスがつながった先制点の場面では、FW前田遼一とパスを交わし、自身のプレーする左サイドからDF長友佑都のクロスが上がってMF本田圭佑のボレーシュートにつながった。後半の立ち上がり6分にも、香川のパスから前田の追加点が決まっている。さらに3点目の場面でも、前田にパスを通してシュートチャンスをつくった。この前田のシュートがこぼれたところを、FW岡崎慎司が決めてオマーンを突き放している。

 求められたプレーができたことは、香川自身も分かっていた。「(自分が)カットインして中に行ったときに、岡ちゃん(岡崎)だったり、(前田)遼一さんが入り込むというのは練習からやっていた」と振り返るように、チームとして取り組んでいたプレーを出すことはできた。それでも、不満が残っている理由は明白だ。

「今日はどちらかというとチャンスメークっていうか、サイドに(パスを)散らしてやっていたイメージがある。もう一個前でボールを呼び込んで、(パスを)受けられるかっていう意味では、そこがすごく足りなかった。僕はチャンスメークする選手ではないですから。もう一つ前でやりたかった」

 チームメイトと連係を高める必要性を、痛感している。オフサイドの判定を受けた前半14分の場面を振り返った言葉が象徴的だ。「あれもオフサイドですね。タイミング的に、オレはもう一つ早くほしかったけど、仕方がないですね」。

 最終予選の初戦を終えて、自分がやるべきことを強く感じ取った。「いかに自分の良さを出せるか。味方に見てもらえるか。もっともっと、チームメイトと連係してやっていく必要がある」。

 裏を返せば、3-0と大勝した試合後も、我々はまだ彼の本当の姿を見ていないのだ。「次は、もっと僕らしいプレーができるようにやっていきたい」。

 チームの快勝にも満足することなく語る香川が、試合後に満面の笑みを浮かべられるようになったとき、3次予選の6試合中4試合を完封したオマーンから3点を挙げた日本の攻撃は、さらに破壊力を増しているはずだ。

(取材・文 河合 拓)

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