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[Fリーグ]浦安の謙虚過ぎる守護神・藤原「GK一人では守れない」

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 Fリーグ2012は17日に第2節を行い、第5試合ではバルドラール浦安府中アスレティックFCが対戦した。前半を2-1でリードした浦安は、後半だけで27本のシュートを打った府中の猛攻を凌ぎ切り、勝利を飾った。

 試合終了直後、マン・オブ・ザ・マッチ(以下MOM)に浦安のFP小宮山友祐が選出されると、場内からは「えーっ」という驚きの声が挙がった。小宮山は「MOMはGK藤原(潤)だと思っていたので、悪いな」と、その思いを代弁した。

 実際に、UAEで開催されたAFCフットサル選手権2012を優勝した日本代表の一員であるGK藤原潤のプレーは、圧巻だった。強烈なシュートが持ち味とする府中のFPダンタスは後半だけで9本、FP山田ラファエル・ユウゴも後半10本のシュートを放ったが、際どいコースへ飛んだ強烈なシュートも、しっかりと弾き出した。1試合をとおして42本ものシュートを浴びながらも、最少失点にできた最大の要因は藤原だった。

 だが、藤原自身は後半を無失点で終えられたのは、チームメイトたちのおかげだと言う。

「ある程度、みんながゴール前を守ってくれたので。相手も少しゴールから距離が離れたところからしかシュートを打てませんでした。あのレンジ(距離)からなら、GKが止めないといけない。みんなに信頼してもらえているので。もう少し深い位置に来たり、崩されたりしたら難しいのですが、今日は運よくポストにも当たってくれたので。止めていましたが、普通というか、いつも通りで止めることができたかなと思います」

 日本代表でアジア選手権を戦っていたため、チームへの合流が遅れた守護神は、前日の北海道戦を戦い、修正ができたことも大きかったと振り返る。「GK一人だと守れないので。昨日に関しては、前半にもったいない失点が多かった。無理に後ろでパスをつなぐのではなく、プレーを切るときは切ろう。そして守れるときは守ろうという守備ができたと思います。この試合は良かったけど、次は駄目だったというのでは、意味がありません。失点が少なくなれば、試合に勝てる確立も高くなる。そうすれば、順位も上にいけるかなと思う」と、一試合ごとに積み重ねていくことの重要性を語った。

 小宮山だけでなく、府中の伊藤雅範監督も「MOMは違うと思う。浦安のGKは良い仕事をしていました」と称賛した。他のチームメイトたちも、そう考えていたという。藤原は「(稲葉)洸太郎が、終わった瞬間に『(会場でのインタビューのために)何か考えておいた方がいいよ』と言ってきたので、『いやいやいや』と答えていました。でも、MOMは誰がなってもいいんです。大事なのはチームが勝つこと」と笑い、無意識だったことも無失点するうえで良かったと語る。

「試合の最後の方に『オレじゃない?』って意識していた選手もいたかもしれません。そういうのがあると、集中力も欠けたりすると思うので。あ、僕はそういう風に思ったりしていませんよ(笑)」

 そんな藤原が喜んだのは、試合終了後に府中サポーターからもコールを受けたことだった。

「あれは嬉しかったですね。自分のサポーター以外のサポーターからも、そうやって言ってもらえるのはありがたいことです。よく『フットサルはGKが50%を占める』と言われますが、その言葉の意味を、自分でもあらためて再確認できました。府中のサポーターだけでなく、今日試合を見に来てくれたお客さんたちにも『GKが活躍すれば、見ていて面白い試合になるんだな』と思ってもらえたら嬉しいです」

 大事なのは個人賞ではなく、チームが勝ち点3を得ること。そして「この試合だけでは意味がない」と、謙虚な守護神は繰り返し、笑顔で代々木体育館を後にした。

(取材・文 河合拓)

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