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名門・鹿実のアタッカーコンビと熊本古豪のエースが「THE CHANCE」ジャパンファイナルへ!

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 世界的スポーツブランドのナイキは才能あるフットボールプレイヤーを世界中から探し出すスカウトプロジェクト「THE CHANCE」を展開中。8月に世界55か国から100名の選手を集めて開催されるグローバルファイナル(スペイン)への出場3枠を懸けた国内選考会は7日、セミファイナル「九州ラウンド」を福岡県福岡市の福岡フットボールセンターで行い、熊本の古豪・鎮西高のMF松村哲太と全国優勝歴を持つ鹿児島の名門、鹿児島実高のMF木村健太とFW内村一哉の計3選手が7月21日と22日に都内近郊で開催されるジャパンファイナルへ進出した。

 スカウトとして選考を担当した元日本代表SB名良橋晃氏の「1分、1秒も無駄にしないようにトライして、失敗を怖れずに頑張ってほしい」というメッセージも影響したか、34名によって行われた「九州ラウンド」は6月30日の「東北ラウンド」を上回るハイテンポのセレクションとなった。垂直跳びと20m走測定から始まったセミファイナルはその後10分間5本の5対5のミニゲーム。関係者から「九州らしいね」という声も挙がったほど球際での攻防戦は激しく、非常にダイナミックな攻守が繰り返された。その中でFW花田敬徳(福岡大)が個で他との違いを示し、MF本多琢人(長崎南山高)やMF鎌倉賢吾(西南FC)が技術、視野の広さでアピール。MF岩本将樹(鎮西高)が長い距離を走って攻撃のギアを変え、内村が切り替えの速い攻守で存在感を示した。

 合格した木村は「『THE CHANCE』の参加は監督に誘われて。(それまで世界への憧れは)あまり持っていなかったです。でも、やってやろうと思っていました」と振り返っていたが、気合十分の選手たちは疲れを見せずにどん欲にメニューをこなしていく。午後のポジション別テストでは中盤、SBは“我慢比べ”の連続3対3。そしてFWとDFはハーフコートでの3-2の攻守などによってテストされた。体力的に負荷の大きなメニューを終えた時点でメンバーは34名から22名へ。名良橋氏が「ここからがスタート。這い上がってきてほしい」と敗退者一人ひとりと握手した一方、1次選考を突破した22名は最後のメニューとなる11対11のゲームテスト(30分2本)で最終アピールを行った。

 ゲームテストではまず1本目3分、MF後藤彰治(鎮西高)の絶妙なフィードで左サイドを抜け出した木村が中央へ折り返す。これを花田が難なくゴールへと沈めると、5分には岩本が右足ミドルをゴール左隅へねじ込む。さらに13分にも左サイドの木村のラストパスからFW村川渉(長崎南山高)がゴールを破り、立ち上がりからボールを完全に支配していたビブス着用組が3連続得点。一方、ビブス無し側は内村のミドルシュートや鎌倉のループパスに走りこんだMF安西清志郎(福岡大)の決定的な右足ボレーで反撃する。

 少ないボールタッチで攻撃の起点となり、周囲を活かしていたMF張圭一(広島朝鮮高)が再三決定機を迎えながら突き放せなかったビブス着用組に対し、ビブス無し側は24分、左サイドを抜群のスピードで抜け出した松村が自らのシュートのこぼれ球を左足で決め、直後にもディフェンスラインの背後へ抜け出した内村がゴールを破った。だが、ビブス組は終了間際にもDF長坪遼(鎮西学院高)の縦パスで抜け出した村川が2点目のゴール。10分間の休憩を挟んで行われた2本目は両チーム間で前線、攻撃的MFの計5選手を入れ替えてスタートした。

 10分、右サイドを独力で切り裂いたFW八重島良輔(西南FC)の折り返しを松村(ビブス組)が決めると、チームを変えても得点力を示した村川がこの日3点目のゴール。その後も花田が右足アウトサイドでのパスを張へつけ、その落としを木村が左足でゴールを決めると、2本目に攻撃力を発揮したMF尾嵜鉄平(鹿児島実高)の右サイドからの折り返しを張がゴールへ流し込む。最後はほとんどの選手の足が止まっていた2本目に最も輝いていた松村が“裏街道”を交えた圧巻の突破から自らゴールを奪って試合終了となった。

 全体的にアタッカー陣が目立つ中、的確なコーチングでチームの危機を最小限に抑えていたDF園田紘也(鎮西高)や花田らもスカウト陣の高い評価を得ていたようだが、九州ラウンドを勝ち抜いたのは松村、木村、内村の3人。特に松村は「まさかでした。(合格者発表のとき)ビックリして、自分の数字を確認してしまいました。きょうは挑戦する、という気持ちだった。(ジャパンファイナルへ)武者震いがヤバイっす。マジでビックリです」と自身も驚きの選出となった。リー・マンソンスカウトは「みんなハングリー精神とか技術というものはベースにあったので、そこから何を見ていったかというと、ゲームの中でどう影響を与えていけたか。松村は3点のゴールに加えて2本のアシストをした。内村も5対5の(ミニゲームの)時点で本当に支配をしていましたし、ボールを失ったときもそれで立ち止まることなく取り返す姿勢も良かったと思う。2人ともいいゴールを決めたことも間違いありません。また木村は知識やファーストタッチで凄く秀でていました」と合格した3選手を評していた。

 名良橋氏を始め、スカウトたちが「非常に難しかった」と振り返ったほど、困難を極めた3名の選出。櫛山匠スカウトが「武器というものが大きかったと思います」と語ったように合否を左右したのはそれぞれが持っていた「武器」の存在、そしてマンソンスカウトが「プレミア、リーガといったエリートのレベルであれば、最後の20分間、体力が切れてきたところで身体のコーディネーションとか頭のメンタルというところで違いというものは出てくる」と語るゲームテスト終盤のパフォーマンスもスカウト陣の判断に大きな影響を与えたようだ。

 名良橋氏はジャパンファイナルへの進出を決めた3名へ向けて「ナイキさんの『THE CHANCE』という企画は非常にいい企画だと思います。選ばれた3人には九州を代表して出場するファイナルラウンドで、自分のポテンシャルをまた出してもらいたいと思います。そういうところで自分を出せないと、選ばれないと思う。ファイナルラウンドへ行って、そこで自分で何かつかめばプラスになることもあるし、学べることもあると思う。そこで失敗を怖れずに自分の良さを出せるか。『CHANCE』をつかむためにトライすることが大事だと思う」とエール。内村は「凄いプロへいくためのチャンスだと思うので、自分のいいところを出して、3人に残れるように頑張る」と誓っていた。

「THE CHANCE」の国内選考会はこの後、7月14日にセミファイナル「関西ラウンド」、同16日にセミファイナル「関東ラウンド」を開催。全国大会での優勝経験を持つ有力校からの参加も予定されている。これらセミファイナル勝者と、日本各地を訪問するナイキスカウトから参加権を得たプレーヤーを合わせた計50名がジャパンファイナルで激突。続々と決まってきている実力者から誰が世界へのチケットを勝ち取るのか、最後まで目を離すことができない。

(取材・文 吉田太郎)

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