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[総理大臣杯]新旧インカレ王者対決!ともに退場者出した110分間の死闘は専修大が劇的V弾で制す!!

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2012年度第36回総理大臣杯全日本大学トーナメント
[7.10 総理大臣杯2回戦 関西大1-2専修大 金鳥スタ]

 2012年度 第36回 総理大臣杯全日本大学サッカートーナメントは10日、2回戦8試合を行い、10年度全日本大学選手権(インカレ)優勝の関西大(関西1)と11年度同大会優勝の専修大(関東7)が激突。延長後半終了間際にMF河津良一(2年=作陽高)が決めた決勝ゴールによって専大が2-1で勝利し、中京大(東海2)と対戦する準々決勝へ進出した。

 前半に両チームDFが退場。V候補同士が10人対10人で演じた110分間の死闘は、交代出場のMFが決着をつけた。延長後半10分、専大は左CKを獲得すると、MF下田北斗(3年=大清水高)のキックにJ注目MF田中裕人(4年=G大阪ユース)のマークを振り切って飛び込んだ河津が頭で合わせる。これがゴールへと突き刺さり、劇的な決勝点となった。大学での公式戦初ゴールを決めて興奮の背番号6が、サブ組の輪の中へ飛び込む。赤いユニフォームの歓喜の雄たけびが“アウェー”大阪の夜の空に響き渡った。

「1-0という状況で守備を引き締めるという意味で入って、追いつかれて、自分自身の仕事ができたかというとできなかった。初めてチームに貢献できた」と河津。1-0の後半ロスタイムに失点し、延長戦で決定機をつくられていたチームを後半34分から投入されていた2年生MFが救った。
 
 文字通りの「死闘」だった。試合は立ち上がりからDFのギャップへ次々とパスを通す専大が、MF長澤和輝(3年=八千代高)と下田、FW仲川輝人(2年=川崎F U-18)、そしてDF北爪健吾(2年=前橋育英高)の全日本大学選抜カルテット中心に支配する。前半12分には長澤のスルーパスから右SB北爪が中央へ折り返し、仲川がクロスバー直撃の右足シュート。15分にはPAのこぼれ球に反応したFW牧内慶太(4年=柏U-18)の一撃がゴール左ポストを叩く。だが20分、縦パスでディフェンスラインの背後へ飛び出そうとした関大FW奥田勇太(3年=千葉U-18)と並走していたCB鈴木雄也主将(4年=武相高)が、俵元希主審に得点機会を阻止したと判断されて一発退場。守備の2枚看板のひとりであるCB栗山直樹(4年=清水東高)を1回戦で負った左ひざの負傷で欠いていた専大は、抜群のリーダーシップでチームをまとめる主将も失ってしまう。

 やや苦しい立ち上がりだった関大だが、数的優位を活かして流れを取り戻した。専大の源平貴久監督が「技術は凄い。あれでもう少し前にこられると止められるところはないと思う」と評した関大は、MF岡崎建哉(4年=G大阪ユース)と田中のJ注目MFコンビやMF和田篤紀(2年=神戸U-18)らが高精度のパスワークを披露。初戦ボランチで先発した本名正太朗(3年=川崎F U-18)と緊急出場となった冨田将司(1年=三菱養和SCユース)がCBでコンビを組む専大はボールの取りどころが定まらず、相手の攻撃をなかなか遮断することができない。

 それでも専大は32分、仲川のループパスからPAへ飛び込んだ北爪がDFに倒されてPKを獲得。これを仲川が右足でゴール右隅へ決めてリードを奪った。そして微妙な判定のPKで先制された関大にさらなる不運が襲い掛かる。38分、敵陣ペナルティアーク付近でセットプレーのこぼれ球に反応したCB小椋剛(3年=川崎F U-18)がDFと交錯して倒れると、反スポーツ的行為という判定で警告。この日2枚目となる警告によって退場を宣告されてしまった。

 ただ、これで新たな闘志が加わったか、関大は10人対10人でスタートを切った後半、引いてカウンター狙いを徹底する専大をゴール前に釘付けにする。専大はカウンターがなかなかはまらず、後半は開始直後に長澤の放った1本を除くとシュートゼロ。逆に10番FW安藤大介(4年=静岡学園高)と1年生ドリブラーの篠原宏仁(1年=柏U-18)を投入し、そして主将のMF稲森睦(4年=四日市中央工高)を中盤の底の位置へ送り出して田中も前方へ押し出した関大は、必死の反撃を展開する。23分には安藤のポストプレーから田中が右足シュート。30分には田中の展開から再三右サイドでフリーとなっていたSB内田恭兵(2年=磐田ユース)が中央へ折り返す。だが岡崎がゴール至近距離から放ったヘディングシュートがGK正面を突くと、その後も安藤や岡崎が決定機を迎えながらもGK福島春樹(1年=静岡学園高)中心に守る専大ゴールを破ることができない。

 それでも後半ロスタイム、敵陣でのインターセプトから篠原が田中へつなぐと、田中がGKの指先をわずか越える右足シュートをねじ込んで同点に追いついた。「いつもならパスを出していたかもしれない。でもあの場面ではシュートを撃つことだけを考えていた」というMFの渾身の一撃で歓喜を爆発させた関大。延長戦でも安藤が右サイドを独力で打開して左SB都並優太(3年=東京Vユース)が決定的な一撃を放つなど決定機をつくっていたが、キーマンの岡崎が足を攣らせたことも影響したか、勝ち越すことができない。そして最後の最後で失点。岡崎は「いける自信もありましたし、仕掛ける自信もあったんですけど、早い時間に足が攣りかけていて。自分自身苛立ちも感じていたんですけど、そういうところで甘さが出てしまった」と無念さをにじませ、田中は「こっから頑張ったら成長できると思う。もう1回日本一目指して頑張る」と誓っていた。

 勝利した試合後、退場した鈴木の下へ駆け寄って喜び合った専大。準々決勝では昨年度の全日本大学選手権準決勝で2-0で勝利している中京大と戦う。真夏の連戦で体力が消耗する中での戦いだが、源平監督は「ウチは相当キツイ練習をしているので、2日後は全く問題ないと思う。夏だから、連戦だからと言っても攻撃的に行くというところがある」。この日は10人で戦ったことで本来の攻撃的で美しいサッカーを披露したのは序盤のわずかな時間のみ。だが、準々決勝では10人で計90分間を走りきった死闘から完全に回復した姿で攻めて勝つ。

(取材・文 吉田太郎)
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