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計10ゴールが生まれた「THE CHANCE」ファイナルマッチ、「満場一致」で滝二FW木下、桐蔭DF冨澤、鹿実MF山之内が世界へ!

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 世界へ挑戦する3名はFW木下稜介(滝川二高)とDF冨澤右京(桐蔭学園高)、MF山之内優貴(鹿児島実高)に決定! 世界で戦える若きフットボールプレーヤーを探す世界規模のスカウトプロジェクト、ナイキ「THE CHANCE」のジャパンファイナルは22日、初日(21日)の1次選考を突破した26名による最終選考を行い、午前中に7対7、午後には埼玉スタジアム2002でファイナルマッチ(メンバー、試合記録はコチラ)を実施した。国内スカウトを統括する風間八宏川崎フロンターレ監督と内藤清志筑波大ヘッドコーチ、小林大輔筑波大コーチの各選考委員が見守る中、白熱した2日間のジャパンファイナル。評価を勝ち取った木下、冨澤、山之内の3選手が、8月19日から26日までスペイン・バルセロナで開催される「グローバル・ファイナル」進出を決めた。世界55か国の各選考会を突破した計100名が参加するグローバルファイナルで最終選考の16名に残れば、ビッグクラブをまわるスカウティングツアーでマンチェスター・U(イングランド)やユベントス(イタリア)など世界の名だたるアカデミーチームと対戦し、プロ契約を勝ち取る絶好のチャンスを得ることができる。

「この3名は満場一致の3名です」。風間氏が自信を持って送り出す“日本代表”3名だ。ジャパンファイナル最終日は午前中、GPSを使用したテスト(トップスピード、ダッシュの回数、走行距離、速さのアベレージの算出)を含む7対7を行い、午後には45分ハーフのファイナルマッチが埼玉スタジアム2002で開催された。
 
 Jリーグや日本代表戦も行われる憧れのピッチに立った26名。風間氏は「ほとんどの選手が“彼らの顔が見えた”。組織の中に埋まっている選手はひとりもいませんでした」と説明したように、世界へのチャンスが目の前まで来ていた選手たちが、最高の舞台でそれぞれの個性を発揮する。TeamA、TeamBに分かれて行われた最後のアピール合戦、ファイナルマッチが動いたのは前半7分。TeamBは中央のスペースを突いたMF高畑智也(滝川二高)がMF斎藤朝太郎(かえつ有明高)とのワンツーから左足ミドルをゴール右隅へ叩き込むファインゴール。その後もTeamBは高畑とMF佐藤涼磨(矢板中央高)が起点となり、左サイドではFW三橋秀平(前橋育英高)が自分の持ち味を出そうとドリブルにこだわって勝負する。そして冨澤の圧倒的なスピードを活かしたオーバーラップが関係者たちを唸らせていた。

 対してなかなか中盤をつくることができずに苦戦したTeamAだったが、22分に同点に追いつく。MF林祥太(久御山高)のループパスでディフェンスラインの背後を取った木下が右足で同点ゴールをねじ込む。ただ、試合を優位に進めていたのはTeamB。29分にはDFを置き去りにして左サイドを切り裂いた冨澤の折り返しをFW二反田祥平(鹿児島実高)が決定的な形で合わせ、30分には抜け出した高畑がGKと1対1となった。そして45分には三橋のギャップを突くスルーパスで左サイドを抜け出した斎藤のラストパスにFW田畑文也(久御山高)が飛び込んだ。

 だが勝ち越すこと、ゴールでアピールすることのできなかったTeamBに対して、後半はTeamAが怒涛のゴールラッシュを披露する。まずは8分、左サイドを抜け出したFW内村一哉(鹿児島実高)の折り返しを鹿児島実高(鹿児島)でチームメートの山之内がゴールに押し込んで2-1。さらに9分には山之内とのコンビでPAを攻略した木下がGKをかわして左足でこの日2点目のゴールを流し込む。

 さらにTeamAは16分にも後半再三オーバーラップを繰り返していたSB西山雄介(横河武蔵野FCユース)が、山之内のスルーパスでGKと1対1となるなど猛攻が止まらない。また木村の素早い攻から守への切り替え、DF楠本卓海(大成高)の対人の強さ、そしてGK亀岡秀平(桜宮高)が安定した守りを見せるなど得点を許さないTeamAは22分、左サイドでボールを離さなかった木下が強引に打開してラストパス。これを山之内がスライディングシュートでゴールへ押し込んで突き放すと、30分にも木下からのパスを受けた木村が中央から右足シュートをゴール左隅へねじ込んで5-1とした。

 意地を見せたいTeamBのイレブンは32分、右サイドから中央のスペースを突いた冨澤のスルーパスで抜け出したFW寺田和之(早稲田ユナイテッド)が、右足でゴールへ押し込んで追撃開始。37分には右サイドの高畑がGKとディフェンスラインとの間に絶妙なラストパスを入れると、飛び込んだ寺田が再びゴールを破った。だが最後まで攻撃の手を緩めないTeamAは、終了間際の45分にも山之内のラストパスで抜け出した木下がハットトリックを達成。TeamAはロスタイムにも、カウンターから林の出したスルーパスでGKと1対1となった木村が左足でゴールラッシュを締めくくり、7-3で大勝した。

 そして閉会式で風間氏から名前を読み上げられたのは、ハットトリックの決定力と強引なまでのドリブルで存在感を放った木下、DF面でやや課題を残しながらも圧巻のスピード、突破力でサイドを切り裂いた冨澤、そして試合最終盤に足を攣らせながらも4得点に絡んでTeamAに大勝をもたらした山之内の3人。ほとんど差のなかったと見られる高畑や林、守備陣ではDF池田リアンジョフィ(仙台大)と、楠本、亀岡も高評価を得ていたようだが、世界へのチケットを手に入れたのは技術と強さを兼ね備えた滝川二高(兵庫)のエースFW、昨年の全国高校総体優勝メンバーで今年桐蔭学園高(神奈川)の主将を務めるSB、U-16日本代表候補選出歴を持つ九州の大型プレーメーカーの3選手となった。

 海外でプロとなる夢へ一歩近づいた3選手。グローバルファイナルへ向けて木下は「海外の人は強いと思うんですけれど、ドリブルで抜いていきたいです」、冨澤は「ここまで来たからにはプロになりたいので、16名に残ってプロにいけるように頑張りたいと思います」、そして山之内は「今回入れなかった人もいるのでその人たちのためにも、あと自分のためにも、16人にまず選ばれるように頑張りたいです」とコメントした。「この3人は我々の目にぐっと入ってきた」と風間氏が賞賛していた3名は世界中から100名の才能が集うグローバルファイナルでも選考委員の「目にぐっと入る」ようなプレーで世界を驚かせることができるか。

 前回、11年1月にイギリス・ロンドン開催されたグローバル・ファイナルでは“日本代表”4選手のうち2選手が1次選考を突破。32名入りしたが、合格者8名に入ることはできなかった。今回、ゲームで自分自身の武器を発揮することができる能力に加えて身体能力、判断力も評価されて選出された“サムライ”たち。その目標は世界で勝者となり、海外でプロ契約を勝ち取ることだけだ。

(取材・文 吉田太郎)

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