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主将として導いた4強、吉田「オーバーエイジを引き受けてよかった」

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[8.10 ロンドン五輪3位決定戦 日本0-2韓国 カーディフ]

 どこかに感情をぶつけたいだけだった。試合終了の瞬間、ピッチに崩れ落ち、倒れ込む選手たちの中でDF吉田麻也は一人、イルマトフ主審のもとへ向かい、激しい身振り手振りで抗議した。ゴールネットを揺らしながら得点が認められなかった後半42分のヘディングシュート。「大前提として、審判を含めてのサッカー。(判定が)覆らないことも分かっているけど、悔しくて……」。吉田はそう心境を吐露した。

 悔しさの理由はもう一つあった。前半38分の1失点目。韓国が自陣深くから大きくクリアしたボールに対し、ヘディングでクリアに行った吉田が目測を誤り、後方にそらしてしまった。FWパク・ジュヨンにボールが渡り、DF鈴木大輔、MF山口螢らが対応したが、個人技で振り切られ、失点。悔やまれる先制点だった。

「細かいところでのミスが失点がつながるんだなと、メキシコ戦、韓国戦であらためて感じた」。そう唇をかむ吉田は「僕がかぶった1点目も、後ろに(日本の選手は)3人いた。いつもならやられないような場面なのに、個の力でやられた。やっぱりアーセナルでやっているだけあるなと思った」。舞台が大きくなればなるほど、たった一つのミスも許さないことを痛感させられた。

「やっぱり韓国に負けるのは、メキシコに負けるより数倍悔しい」。あと一歩のところで逃したメダル。それでも、3戦全敗に終わった4年前の北京五輪と比較し、「こっちの方がポジティブな悔しさ」というのも正直な思いだ。「みんないいポテンシャルを持っているし、大会の中でレベルアップしていくのを僕も感じていた。下の突き上げが、A代表のレベルアップにもつながる」。若手の成長を肌で感じてきた。

 世界の舞台で経験した6試合。それは吉田自身にとっても貴重な財産になった。キャプテンとして、DFリーダーとして、ピッチ内外でチームを引っ張ってきた。「キャプテンとしてチームをまとめたことは僕自身のプラスになった。責任感や存在感を出したいと思ったし、そこを養えた」。A代表でキャプテンを務めるMF長谷部誠に対し「ハセさんのつらさも多少分かったので、今後はサポートしていきたい」と冗談交じりに笑ったが、「A代表でも同じように存在感を出していきたい」と、真剣な表情で決意も新たにしていた。

 6月8日のW杯アジア最終予選・ヨルダン戦で右膝内側側副靭帯を損傷しながら急ピッチで復帰し、全6試合にフル出場。疲労がないわけはないが、休む間もなく、次はA代表が待っている。明日11日に英国を出発し、12日に帰国。その後はベネズエラ戦(15日、札幌ド)を控えたA代表に合流する。

「A代表まではがんばりますよ。ベネズエラ戦までは」。オーバーエイジとして経験した2度目の五輪。44年ぶりのベスト4を成し遂げた自信。メダルまであと一歩で届かなかった悔しさ。すべてはA代表につながっていく。「オーバーエイジを引き受けてよかった。糧になるものはいっぱいあった。でも、ここからが大事。A代表に戻ったときに『成長したな』と思われるようなプレーを見せないと」。吉田は前を向き、力強く誓った。

(取材・文 西山紘平)

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