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「NIKE FC選抜チーム」が東京王者・修徳高と対外試合、大敗を今後の糧に

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 ユース世代のフットボールプレーヤーをサポートするナイキジャパンが育成年代に向けて行っている特別強化プログラム「NIKE FC」の選抜チームは26日、全国高校総体東京都予選優勝の修徳高と対外試合(30分×3本)を行い、0-7で大敗した。

 非常に残念な90分間だった。3月のユースサッカーフェスティバル「2012春季交流戦 波崎」では新人戦茨城県大会のウィザス(現・第一学院)から先制するなど1-2と健闘。所属チームのトレーニングに加えて、より上を目指す選手たちは、NIKE FCで海外での指導経験豊富なコーチ陣によるトレーニングなど、所属チームでは学ぶことのない貴重な経験を重ねながら個々を高めてきた。そして同大会でスキルの高さを発揮し、モチベーションも非常に高いゲームを披露。トレーニングの回数は月1回程度と少ないものの、成長を認められていた選手たちは今回の一戦でさらなる好ゲームを展開することが期待されていた。だが、現実は甘くなく、0-7敗戦。試合後、NIKE FCのリー・マンソンヘッドコーチは「毎日練習しているチームではないけれど、それは言い訳にはならない。個人的には物凄く嫌なゲーム。ナイキの名を背負って出ているゲームで0-7は申し訳ないし、恥ずかしい」と選手たち以上に無念さをにじませていた。

 所属チームの異なる選手たちがウォーミングアップでコンビネーションを確認し、いきなりゲームに臨むNIKE FCがチームとして相手以上に機能することは難しい。だが、コーチ陣が何より残念がったのは、向上心、戦う姿勢が伝わってこなかったことだ。試合会場となったレッズランドは1月にNIKE FC選抜チーム入りを懸けたセレクションが開催された地。落選し、帰りのバスの中で涙する選手もいたほどの厳しいセレクションだった。元U-18メキシコ代表のジョージ栗山GKコーチは「ここでトライアウトしたけれど、(みんな)もっとハングリーだったし、100パーセントでやっていた。何でNIKE FCに来ている? (きょう)最後まで走り切ったヤツいた?」。問いかけられた選手たちは俯き、首を振るしかなかった。

 NIKE FCで何かを掴もうと、所属チームの練習を休んで参加している選手もいる。ただこの日は暑さの影響もあってか動きが重く、チームの中での声も少ない。声は出ていても動かない選手や、走っていても続かない選手など、それぞれが責任感に欠けていた。チームの主軸であるMF木戸楓真(FTA)は「そこまで相手と差がある感じはしなかった。負ける気は全然しなかった。(だが)攻撃は蹴ることが多かったし、DFならディフェンスだけとかそれ以上のプレーができなかった」と振り返ったが、選手たちは最後まで自分たちの良い部分、個性を出すことができなかった。

 1本目の立ち上がりはディフェンスラインと中盤でボールを動かしながら、リズムをつくろうとした。だが土屋慶太コーチが「(NIKE FCとの対戦を)みんな楽しみにしていました。普段からやっていることができたと思います」という修徳は相手の楔のパスをシャットアウト。NIKE FCはポゼッションしようとしているものの、全体的に運動量が少なく、攻撃のテンポが上がらない。細かなミスなどで狭い局面に押しやられては簡単にボールを失った。

 逆に修徳は9分、左CKからファーサイドの右SB田中陽大が先制ヘッド。NIKE FCは11分にMF高田啓伍(神奈川大附高)のスルーパスにFW犬飼元氣(駒澤大高)が反応し、14分には犬飼が思い切った右足ミドルを放つ。だが1本目のシュートはこの一本だけ。少ないタッチのパスワークでDFを剥がす修徳に揺さぶられて再三決定機を作られると、23分にはFW稲澤健太に2点目のゴールを決められた。

 2本目の序盤はミスが減り、ダイレクトのパスがつながるなど、自分たちのリズムでサッカーを展開。8分には右サイドで粘ったSB戸成厳士(久喜北陽高)が絶妙なクロスへ持ち込み、MF菊池大輔(矢板東高)のスピードがチャンスにつながる場面もあった。また、逆サイドからのラストパスをカットしてチームを救った戸成の好守や、SB塚田潤也(第一学院高)の打点の高いヘッド、GK吉田稜(青森山田高)の好セーブなど守備面でも奮闘。20分に修徳FW島雄生にゴールを破られたものの、28分にはMF高橋郁海(羽村高)のアイディアのあるパスを起点に左サイドを崩し、最後はMF芝尾直樹(横浜市立東高)のラストパスから決定機を迎えた。

 それでもこの日最大の決定機を逃すと3本目は運動量が激減。9分、中盤で競り負けると、FW加藤禅のパワーに押し切られて4点目を奪われる。集中力の切れた終盤はMF小野寺湧紀の個人技などに穴を開けられると、MF佐藤知斗らにゴールを決められて連続失点。FW中村祐(藤沢清流高)が前線で身体を張り、高田の左足ミドルなどで反撃したものの、1点を奪うことができなかった。

 キャプテンマークを巻いた高田は「個人的には凄く勝ちたかった。個人個人は意識してやっていたと思うけれど、みんな気持ちがバラバラだった。このままのレベルでは来ている意味がなくなってしまう。もう少し変えて行かないといけない」。そして青森から参加している吉田は「みんな消極的な部分がある。自分は青森山田から来て『THE CHANCE』でもファイナルまで行っている。自分がキャプテンシーを持って引っ張っていかないと。これまでNIKE FCでいい経験ができたので、少しでも還元して行かないといけない」と誓っていた。

 ナイキジャパンのサポートの元、恵まれた環境の中で選手たちは成長するための術を与えられてきた。ただ、さらに上へ突き出していこうとする意欲が、今まで以上に必要なのかもしれない。「うまくなりたい」「ライバルに差をつけたい」と自らの意志で参加している選手たち。この敗戦を受け止め、今後への糧にすることができるか。意識を変えたNIKE FCが新たなスタートを切る。

(取材・文 吉田太郎)

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