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栃木で初出場した田中「自分の持ち味をどんどん出したかった」

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[9.2 J2第32節 横浜FC 1-3 栃木 ニッパ球]

 前節、湘南に1-2で敗れたが「今シーズン、最高の出来だった」と試合をポジティブに総括していた栃木SC松田浩監督。この試合でも後半戦に入って好調の横浜FCに3-1で快勝し、チームの状態の良さを証明した。この試合では、指揮官の采配が光った。川崎Fから加入したDF田中雄大が加入後、初出場。また、20試合ぶりに先発出場したMF杉本真も先制点を挙げている。2人の起用理由について松田監督は「前節も内容は良かったが結果が出ていなかったので、閉塞感があった。同じメンバーで臨むよりも試合に出たくてウズウズしている選手を使って、それを変えたかった。雄大はフィットして来ていたし、彼と杉本(真)は紅白戦でも伸びのびとやっていたので」と語っている。

 川崎Fから加入して約1か月、先発での出場を知らされた田中は「やっとチャンスが来たな」と思ったという。「ずっと出ている選手と同じプレーをしたのでは、面白くないと思ったので、どんどん自分の持ち味を出したいと思っていました」と話す。その言葉通り、立ち上がりから積極的に縦に仕掛け、チャンスをつくり出した。

 前半24分に栃木は、田中のクロスからCKを得る。これを田中がゴール前に入れてFWサビアのゴールを演出した。横浜FCのDF堀之内聖は「栃木はセットプレーからのゴールが多いとスカウティングからも分かっていた」と悔やむが、田中自身は狙い通りのボールを蹴ることができたと振り返る。

「相手がゾーンで守っていたので、ニアにいる田原(豊)選手の上を越すボールを蹴れば、チャンスになると思いました。セカンドボールを拾う力はあるので、狙い通りでした」

 2011年に川崎Fに加入して以来、約1年半で得た出場機会は、リーグ戦でわずかに9試合だった。それでも川崎F時代からの蓄積が、この日のプレーにつながったと話す。

「フロンターレにいた頃から、相手を押し込むのが特徴だと言われていましたし、守備の部分では『気持ちが大事』と言われ続けていました。その意識は強く持って、この試合に臨んでいました。栃木をJ1に上げたい、自分自身も試合に出場して経験を積みたいと思って移籍したので、そういう思いはしっかり出さないといけないと思った」

 その言葉どおり、球際での強さは際立っていた。前半43分にはPA内でボールを持ったFW大久保哲哉に粘り強く対応し、シュートチャンスをつぶしている。「スタメンに田原選手と大久保選手の名前があったとき、高さを生かして僕の所を狙ってくるなと思っていました。あの場面も、最初はクリアーできると思ってボールに届かなかったので、反省は残りますね」と振り返るが、確かな手応えをつかんだようだ。

「やっとチームの一員として、認められたかなと思います」と一瞬、笑顔を見せたが「でも、まだ1試合ですからね。ここからもっともっとチームとしても、個人としてもやっていかないといけないと思います」と、J1昇格を目指すチームの中で、さらなる活躍を誓った。

(取材・文 河合拓)

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