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カズ、森岡というライバル出現を喜ぶFP星「刺激を受けて、発見もあった」

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 自分のポジションを脅かす人間が現れたとき、危機感を覚えることは普通だろう。フットサル日本代表のFP星翔太(バルドラール浦安)は、そんな立場に置かれた。星のポジションは、サッカーで言えばFWに値するピヴォである。今回、新たに名古屋オーシャンズのFP森岡薫横浜FCのFW三浦知良が、フットサル日本代表に初招集された。星はライバルの招集を「ありがたい」と、喜んだ。

「今回の合宿の薫くんを見て、刺激を受けて、発見もあった。そういう部分で、来てもらってありがたいなと思います」

 具体的な『発見』について、星は「まぁ、それは」と言葉を濁したが、そのイメージは口にしている。「もともと自分も持っていた良い所だったけど、世界仕様にする上で削ぎ落としていたというか、無駄な部分っていう感じにしていた。忘れていたことを昨日の夜に気付いて、今日の練習でやって効果があった」。

 もともと、星は最前線でボールを待って受けるタイプのピヴォだった。しかし、スペインへ渡りプレーすることで、対戦する相手は屈強な身体能力を持ち合わせたフィクソ(サッカーでいうDF)ばかりとなった。星が前線でボールを待ち続け、送られてきたパスを受けても、相手につぶされてしまってボールを保持できない。そのため、星は流動的にサイドに流れながら、マークを外してボールを受ける動きを強調するようになった。

 しかし、Fリーグで2度のMVPに輝いている森岡は、前線で張り続けるタイプのピヴォだ。森岡が日本代表でプレーする姿を見たことで、星は初めて客観的にかつての自分を見ることができた。「薫くんが入ったら、そのセットは常にシンプルにプレーしていた。それは、みんながFリーグで対戦していて、薫くんはここが強いから、こういうところを使おうと分かっている。でも、僕の強みは分かられていない。それは僕が、いろんなところに顔を出し過ぎてしまうきらいがあるから。それが良い部分でもあるけど、悪い部分でもあると思う。自分を確立した方が周りと合わせやすいですけど、そのバランスを見てやらないといけない」。

 実際に合宿2日目の午前練習では、FP三浦知良ミゲル・ロドリゴ監督から「前線で張り過ぎるな」と、指示を受けている。スペースの少ないフットサルでは、最前線のピヴォが判断良く動かなければ、攻撃が膠着しやすい。特に欧州や南米の屈強な選手と対峙するとき、日本のピヴォにとって、正確な状況判断は攻撃の生命線となる。

 合宿2日目の紅白戦で、星はゴール中央でボールを受け、鮮やかな反転シュートを叩き込んだ。これぞピヴォという、このプレーを振り返り「もっと反転してシュートを打ちたいし、シュートに対しての意識を高めたい。体を利用するようにと(ミゲル監督に)言われたので、そういうプレーをしたい」と口にしている。

 W杯予選を兼ねたAFCフットサル選手権では、大会序盤に負傷したため、不完全燃焼に終わった。それだけにW杯本大会に懸ける思いは強い。「初めての大会だし、そこでブラジル、ポルトガル、リビアという強い国と戦えるのは光栄。とにかく楽しみだし、結果にこだわって、より高いところに行けるように、一歩一歩頑張っていきたい」。ライバルの出現を自身の成長につなげようとしている星は、力強く言い切った。

(取材・文 河合拓)

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