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千両役者が千金ゴール、香川「自信を持つためにも結果が欲しかった」

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[10.12 国際親善試合 日本1-0フランス サンドニ]

 ポゼッションも崩しもほとんどできぬまま試合終了の笛を聞くことになろうかと思われた日本に、千載一遇のチャンスが訪れたのは、0-0で迎えた後半43分だった。

 フランスの左CKのクリアをマイボールに収めた日本は、一気呵成のカウンター攻撃。DF今野泰幸がドリブルで持ち上がると、右サイドを駆け上がったDF長友佑都にパスを出し、長友がゴール前へクロスを上げる。

 そこにいたのがFW香川真司(マンチェスター・U)だった。体を思い切り伸ばして右足でシュート。ボールがネットを揺らした瞬間に均衡が破れ、スタジアムが悲鳴と歓声に包まれた。

「今ちゃん(今野)が持った瞬間、日本は最後のチャンスとして思い切り上がっていった。右サイドのスペースに(長友)佑都が走って素晴らしいクロスを上げてくれた。練習どおりの形だった」

 千両役者は劇的ゴールシーンを自画自賛した。

 伏線はあった。日本はMF中村憲剛が交代でベンチに下がり、香川がトップ下に入ったあたりからチャンスをつくり始め、後半30分以降は2度のビッグチャンスがあった。

 ゴールには至らなかったが、点が欲しくてどんどん前がかりになっていくフランスにスペースが生じてきたのは間違いのないことだった。最後まで諦めず、貪欲に勝利を目指した結果が香川のゴールであり、1-0の勝利だった。

「前半は相手が予想以上に前から来ていて、守備ラインが下がってしまったことで、ボールの奪いどころが定まらなかった。後半はラインを上げていくことや、サイドで起点をつくること、ボールを持ったときに前へ前へ行こうと話していて、それができた」

 9月11日のW杯アジア最終予選・イラク戦(1-0)を腰痛で欠場するなど、このところ代表で結果を残していない香川は、所属のマンチェスター・Uでも苦しい日々を過ごしている。

「今季は国もチームもサッカーも変わった中、自信を持つためにも結果を求めたかったし、何かきっかけが欲しかった。それはゴール。そういう意味で点を取れたのは良かった」。今回は安堵の表情を浮かべた。

 このあとはブラジルとの試合が待っている。

「前半はシュートまで行かなかった。1試合できても、次の試合もあるし、またマンチェスターに帰って試合もある。1試合だけじゃなく、続けていきたい」

 早くも香川は、またさらに高い位置へと目線を移している。

(取材・文 矢内由美子)

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