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[プリンスリーグ]選手権予選控えた注目校対決、「不恰好でも勝ち切る」山梨学院が市立船橋撃破!!

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[10.13 プリンスリーグ関東1部 市立船橋高0-1山梨学院高 グラスポ]

 高円宮杯U-18サッカーリーグ2012プリンスリーグ関東1部は13日、第16節1日目を行い、市立船橋高(千葉)対山梨学院高(山梨)戦は、後半42分にFW山口一真(2年)が決めた決勝ゴールによって山梨学院が1-0で勝った。

「不恰好でも勝ち切る」。高校選手権予選の本格スタートを目前に控えた注目カード。昨年度高校日本一の市立船橋と09年度に全国制覇している山梨学院との戦いは、山梨学院が勝ち点3を獲得し、選手権予選へ弾みをつけた。

 山梨学院は7日の前節、桐光学園に1-7で大敗。過去4試合で19失点を喫していた。決して内容の悪い試合が続いていた訳ではない。同等のシュート数を放つなど、できている部分もあるのに大事なところで踏ん張ることができていなかった。結果が伴わず、危機感を募らせていた選手たち。桐光学園戦翌朝のミーティングの際、清水エスパルスヘッドコーチを務めた経歴を持つ吉永一明監督から「今のままで選手権予選を勝てると思うか」の問いに選手たちの口からは「難しい」という言葉が漏れたという。「言葉には魂があるから、(難しいという言葉を口にしていては)ズルズル行っちゃうぞ」と言葉をかけた指揮官の下、選手たちが切り替えて、一週間徹底してきたことは「不恰好でもいいから勝ち切る、やり切ること」だった。

 高校選手権連覇を狙う市立船橋は攻守ともに全国トップクラス。小出悠太主将、種岡岐将(ともに3年)の両CB中心に十分に全国連覇を成し遂げる可能性のある好チームだ。序盤は拮抗した展開だったが、抜群のキープ力で攻撃をリードするU-17日本代表FW石田雅俊(2年)、負傷の早矢仕久志(3年)に代わる左SBで豪快なドリブル突破を見せた日本高校選抜DF磐瀬剛(2年)、10番を背負うMF渡辺健斗(3年)らが高い技術で試合の流れを傾けていく。11分にはMF中野真吾(3年)が決定的な右クロスを配球し、13分にはカウンターから思い切って最前線にまで飛び出した小出主将とのパス交換から石田が左足を振りぬいた。局面をショートパスで崩してシュートまで持ち込む上手さに加えて、タイミングのいいスペースへの飛び出しで相手を押し込んだ市立船橋は18分、MF宮川泰来(3年)からのラストパスを受けた石田が右足シュート。26分にも再びカウンターから渡辺のスルーパスで抜け出した石田が決定的な右足シュートへ持ち込んだ。

 耐える時間の続いた山梨学院。ただ、唯一昨年からのレギュラーであるFW名嘉真朝季(3年)が「自分たちはやるべきことをやらないと戦えないということを自覚して、この一週間で変わることができた」という山梨学院のこの日の球際の厳しさ、ボールとゴールへ対する執着心は凄まじかった。右SB加藤良真(2年)が再三スライディングタックルでボールをもぎ取ると、崩されても相手のラストパス、シュートにDFが何とか食らいついてコースを限定しようとする。また主導権をほぼ握られた状況ではあったものの、山口のドリブルやダイレクトパスを交えた攻撃でサイドを崩しかける場面もあった。そして36分にはビッグチャンス。相手のクリアボールを拾って左サイドへ展開すると、左SB石塚紀貴(2年)の左クロスに飛び込んだFW本庄将人(3年)がゴール至近距離から決定的なヘディングシュートを放った。
 
 また後半は山梨学院のインターセプトする回数が激増。中盤で存在感を放ったMF毛利駿也(2年)やDF陣の鋭いプレッシャーに市立船橋は苦しみ、ミスパスやわずかにドリブルが大きくなったところをカットされ、少ないボールタッチでPAへボールを運んでくる山梨学院に背走させられていた。山梨学院は後半開始からの配置変更によって1トップについた本庄が積極的な仕掛けからシュートへ持ち込み、正確な左足キックが武器の石塚や2列目の山口、名嘉真、MF{竹川幸佑}}(3年)が少ないチャンスをものにしようとする。

 それでも決定機の数で上回っていたのは市立船橋だった。17分には後半から出場したFW森川穣(3年)のラストパスに右SB藤田祐平(3年)が合わせ、26分にはクリアボールを拾った森川の右足シュートがゴールを捉える。31分にはカウンターから中野が出したスルーパスで石田が抜け出し、左足シュート。さらに39分には集中力を欠いた相手DFの間を強引に破った渡辺が右足シュートを放つが、山梨学院はGK山田純平主将(3年)が好反応で弾き返す。朝岡隆蔵監督が「守備では身体を張って守っているけれど、攻撃は身体を張って点にしていない」と指摘したように、ゴールには迫るものの、最後の局面で迫力のない市立船橋は選手権予選へ向けて課題を残す試合となった。

 そして42分、吉永監督が「崩されてもやられた時にどれだけ確率を落とせるか、シュートを打つタイミングを遅らせることができるか、アタッカーは一瞬早く振りぬくことができるか。ようやく体現することができた」と振り返った山梨学院に決勝ゴールが生まれる。中盤から毛利がPAをへ縦パスを入れるとそのクリアボールに対して「絶対にこぼれてくると思っていた。(引き分けではなく)勝ち点3しか考えていなかった」とパワーを持って飛び込んできた山口がDFを振り切り、右足シュート。これがゴール左隅へ吸い込まれて決勝点となった。

 山田は「途中、平田(葵一)が怪我をしてもっと自分たちの我慢しなければという意識が高まった。選手権前最後の公式戦。これで勝つのと負けるのとでは全然違ってくる。自信になる試合でした」。今や全国クラスのタレントと実力を備える山梨学院だが、今年は総体予選準決勝で敗れて09年度の選手権以来、総体と選手権で続けていた全国出場を逃した。名門として周囲からの大きな期待に応えるためにも選手権での全国出場は絶対条件。名嘉真は「あの舞台に戻らないといけない。予選の初戦からやること」。この日強豪を下したとは言え、より点を取ること、試合を支配するという課題は残った。この日勝つために貫いた必死さ、泥臭さを続け、課題を突き詰めて選手権予選を勝ち抜く。

[写真]後半42分、山梨学院FW山口が決勝ゴール

(取材・文 吉田太郎)

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